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神と魔王の弟子は魔法使い 〜神喰いの継承者〜  作者: ルド
第5章 弟子の魔法使いは世界を彼らと共に守り抜く(掟破りの主人公大集結編!!)。
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第70話 異種魔法バトル(弟子はやはり苦労します)。

 外に出た俺の目には狼煙のように天へと昇っている煙が見える。

 そして視認は出来ないが、空の方で空間の歪みと得体の知れない魔力を感じる。……来たんだ。


「街のど真ん中か」

「私たちは此処で結界に集中する! 行くんだジン君!」


 清々しいほどの人任せだが、そんな事を言っている場合ではない。結界が街全体となると俺でも無理だ。

 そう言って両手に球体状の魔法陣を作り出すシュウさんと護衛と言っていたクレハさんも残るようだ。九条さんと呼ばれる女性も黙って待機している。……別世界の住人というが、関係は何なんだ?


「ああ、ヴィットお前はどうする?」

「もちろん付いて行くって! じゃなきゃ来た意味ないだろ!」

「一応言っておくが、下手を打つなよ?『四神使い』」

「分かって「行くぞ」──っておおおおお!?」


 時間が惜しい。付いてくるならさっさと来いよ。

 いつものように『火炎弾』の炎熱噴射(ブースター)で空を飛ぶ。片手で男の手首を掴んで一緒に空からその場所まで飛んで行った。


「アレか……何かいる」


 落下地点は交通量の多い道路。煙でよく見えないが、アスファルトの地面は大きく陥没しており、煙の中で大きな影が見える。車が何台も横転したり端に打つかっているが、いち早く避難したようでその場に人の気配は残されていなかった。


「っ、スッゴイ飛ぶなオイ! ……って何人か倒れてるぞ!」

「ッ! 出遅れたか」


 いや、同業者はいたのか。クレーターの側で何人か魔法使いと思われる者たちが倒れている。辺りも壊れている所為で戦闘後だった事に言われて気付いた。


「降りるぞ」

「ああ分かっ──急降下ぁあああああ!?」

 

 騒がしいヴィットと一緒にその地点へ降下。降り立つとまだ煙が昇っており視界が酷い。


「コ、コロの能力で空飛ぶこともあるが、こんな高速移動じゃ……」

「煙が邪魔だな」

「え、こっちも無視?」


 両手に発生させた『微風刃』の風を『風力操作(エア)』と組み合わせる。


「吹き飛べ」


 一気に煙が酷い前方へ放つ。暴風の手となって溢れ出ていた煙を根本から持ち上げる。そのまま空高くへと煙の塊を逃した。


「うへー……器用だなー」

「確認だが、戦力としてカウントしても大丈夫か?」


 視界が晴れる。同時に姿を現した二つの人外。

 一体は相撲のような体格。だけど倍以上はある体積と頑丈そうな褐色の肌。鉄製の大剣や斧に大槌、それに鎧も纏ったまるで戦車のようだ。……大砲はないよな?

 もう一人は長身の赤い顔は老人ぽい魔法使いで黒の神官のような格好だ。全身から魔力が溢れ出ているから間違いなく魔法使いだと思われるが、なんだか空間が歪んでいる風に見える。辺りの地面や車、電信棒まで曲がったり渦状に捻れているのが多い。……こっちはこっちで嫌な予感がする。


『次から次へと……この世界の住人はシツコイですねぇ』

『ゴバァァァ』


 とりあえず片方だけの言葉は分かる。『ゴバァァァ』は流石に無理だけど。


「はぁ、アンタ達が異世界を股に掛ける盗賊団の一員か?」

『不敬な人間ですね。それを知っているという事は貴方も異世界関係者でしょうか?』

「いや、俺はここの住人さ。でこっちの方が…………どうした?」


 一応会話は成立したよ。否定しながら隣のヴィットにパスしようとしたら、なんか困惑した顔で目を瞑っている。なんか静かな気がするなと思っていたが。


「いや、ちょっとマズい事に……」

「マズい? 何が?」


 手を開いたり閉じたり、徐々に青ざめると恐る恐るといった様子でこちらに向いた。


「オレの中の精霊……女神たちとの繋がりが……なんか弱くて力が使えない」

「は?」

『済みませんが、こちらも急いでいます。邪魔をするなら貴方がたも潰させてもらいます』

『ゴバァアァァアアアアアア!』


 もう向こうさんはやる気モード。なのにこちらは一人戦力外になってる。

 もしやと常々思っていたが、師匠の不運が移ったのではないか。……突進して来る巨体ゴリラを見ながら思わずこの場にいない師匠を呪う事にした。





「あ、そういえばあの男『神縛りの魔術』の影響でしばらく女神共の力が弱体化するが……あの『四神使い』気付いてた?」

「さぁ? 気付いてないじゃないの? 縛られてる最中もずっと私の胸をチラ見してたわよ」

「本当に凄い人って何かしら問題があるよね。私のところの幼馴染も普段は天才なのに妹の事になると残念になるから……あ、私も少しだけど見られた。クレハさんの方が大きいからそんなに見られなかったけど」

「本能に忠実な守護者ってことね。まったく」


 なんか見られている気がしたが、シュウはコメントしづらく結界に集中する。


「ちなみにそこのシュウさんの場合は?」

「魔道具、それに宝具に目がないわね。アレは一種の病気よ。私生活どころか恋愛も疎かにしてる」

「余計なお世話だわ!」


 反応せずにいられるかと呆れているクレハを睨むシュウ。そこへまた結界が何かを感知する。どうやら外の事態は激しく進んでいるようだった。




『ゴバァアアアア!』

「『魔力・融合化』──『身体強化(ブースト)』“羅刹(ラセツ)”」


 大槌と斧と構えて突進して来た褐色ゴリラに向かって、俺は融合スキルからの身体強化魔法を発動。さらに火力重視の“羅刹”を選択。俺の前で振り下ろされた大槌を剛力となった片手で受け止める。


『ゴバァっ!?』

「ふん!」


 その大槌を蹴りで弾き飛ばす。攻撃の為に動こうとした斧の方も連続蹴りで止める。


「『巨人の炎拳メガ・フレア・インパクト』」


 空いている壁のような胴体へ巨大な炎拳を叩き込む。手応え的にダメージは少ないようだが、大きなゴリラの巨体は後ろへ吹き飛ぶ。……その褐色ゴリラを背後に移った赤い老人が魔法か何かを使用して、飛ばされている巨体を空間の壁で止めてみせた。


『油断しましたね。まさかスモアのパワーを押し返す程とは』

「『通電撃(ヴォルト)』──装填」


 師匠から受け取ったリボルバー銃『魔導王の銀銃(マギア・カスタム)』の弾丸に雷魔法を込める。……あのシュウさんが作ったと言っていたが、今はその疑問は置いておく。


「『瞬速・全弾発射ソニック・フルバースト』」

『むっ!』


 早業の銃撃スキルで全弾を放つが、察知した老人が即座に展開した謎の歪んだ空間。彼らの前に展開されると放たれた貫通力の高い弾全てが上下左右に曲がって逸らされた。


「“仙沈(センジン)”、『照準の極限ピンポイント・クリティカル』」

 

 感覚力の高い“仙沈”の瞳であの渦の急所を見極める。

 手早く弾丸を装填し直して、僅かに見えるそこへ……一発。


『無駄です!』


 逸れる。だが、もう一発。


『っ』


 また逸れる。が、今度は早業も重ねて二発撃つ。

 目標は先に逸された二発の弾丸。二発とも当てると弾丸がさらに軌道を変えた。


『なに!?』


 後に撃った弾二発も同様に逸れる。まったく読めなくなった四発の弾丸に動揺する老人。慌てて手を動かして渦の壁を盾にように扱うが、側にいるスモアという巨体がいる所為で思うように動かせないでいた。


『スモア!』

『ゴバァァァアアアアアアアアア!』


 だから対処をスモアに任せたようだ。変則的に襲って来る弾丸四発に向かって咆哮を上げる。

 全身の魔力が衝撃波となって解放される。全ての弾丸がさらに外へ弾かされた。


「空間系のスキルか魔法。あっちのゴリラは見た目通りパワータイプか」


 全ての攻撃が防がれる中、俺は冷静にあの二体の分析を行う。まだ不明確な点は多いが、まだなんとかなりそうな範囲の敵である事は理解した。


「で、お前の方は全然なのか?」

「うっ、あ、いやなんとか戦えない事もないんだが……」


 そう言ってさっきからパニクっている様子のヴィットに寄って声をかけるが、反応はやはりというか悪い。


「精霊なしだとやっぱり厳しいか」

「た、戦えない訳じゃないんだ! ……ただ、アイツら相手だとちょっと……」


 可能なら万全な状態の方がいい。それは同感だが、正直こっちもあの二体を同時に対処するのは骨が折れそうだ。本気を出せば話は別であるが、今の段階で制限付きのパワーアップは……。


「増援が来るまで時間を稼ぐしかないか。何を狙っているか分からない以上、ここから動かさないようにしないと」


 その選択が正解かどうか分からないが、まだ本命である魔王が出て来ないのだ。本当の全力はまだ見せる訳にはいかない。

 幸い『魔力融合』の状態もこれまでの戦い。特に魔神との戦いが影響してか大分伸ばせれるようになった(後半の記憶が曖昧だけど)。


「仕方ない。増援はこっちから呼ぶか」


 ヴィットが使い物にならない以上、多少の手札消費は覚悟だ。

 封印の一つである『召喚』を選択。召喚魔法を唱えて二つの魔法陣が傍に出現した。


「“来い”!『メタル君』『クーちゃん』!」

『プルルッ!(お呼びですかボス!)』

『何じゃ? お主か』


 現れたのはお馴染みメタルスライムことメタル君。現れると俺は言うまでも無くなく形態を銀のローブに変化。俺の肩に装着される。

 もう一体は巨大であるが、見た目は完全クマなクーちゃん(フワフワな毛並みがサイコー!)。師匠の仲間の守護獣(暴君)で一途きは妖精のシャリアさんと契約を交わしていたが、俺がダンジョンの修業中に知り合ってなんか意気投合した。


 ちなみにダンジョンにいた理由はピクニックという師匠とシャリアさんの無茶振りだったらしく、振り回されるこのクマさんは結構な苦労者であった。……喚んでる俺も悪いけど。


「ちょっと怪力が不足してて、ちょっと手を貸してくれ」

『あのゴブリンか、あい分かった』

「え? アレってゴブリンなの?」


 ゴブリンって緑イメージが濃いんだけど。変異種ってやつか。


『もう一方は知らんが、かなりの魔法師のようだぞ? 魔法知識はワシもさっぱりだから他の奴も喚んだらどうだ? プリムやエバとか』

「プリムはともかくエバは論外でしょう。術師の方は俺がやるよ。大丈夫、こっちも頼りになる助っ人がいる」


 肩に掛かっているローブをポンポンと叩く。嬉しそうに銀ローブがバサバサ舞い上がった。


「ちなみクーちゃん。今上げた名前の中にアステルやルゥが無い理由は?」

『破壊龍と暴走夢魔。街中で呼びたいのであれば止めんぞ?』


 そうでした。最初から論外でした。

 ダンジョン中なら有能な問題児二名を思い浮かべて、俺は何度目かの溜息を吐いた。

 久々のクーちゃん! 詳しくは『オリマス』の方を参照してください。

 

 ここでちょっとした補足説明(必要かどうか怪しいですが)。

 刃が契約している召喚対象は全部で七体(うち一体はメタル君です)

 色んな種族がいますが、大きく二つに分けるとこうなります。


 問題児『アステル(龍族と??のハーフ)』『ルゥ(夢魔と悪魔族のハーフ)』『エバ(??)』


 苦労者『メタル君(変異メタルスライム)』『クーちゃん(守護獣なクマ)』『プリム(??)』


 さて、あと一体はどちらでしょうか? 登場はまだ未定です。

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