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おはよう世界、さよなら異世界  作者: キャピキャピ次郎☆珍矛
序章
9/125

第9話 Gero


 「ワレワレマオウグンハ、フメツ・・・・・・。」


 こんな言葉を、まさかここでも聞く事になるとは思わなかった。

 それと同時に、魔王を倒した事で終わっていなかったのか、と絶望した。

 俺が魔王を倒した事で、異世界は戦争が終結し平和が訪れた。絶対君主の魔王がいなくなった事で、魔王軍の統制は利かなくなりバラバラになっていった。その魔王軍の残党が各地に散らばったという情報は知っていたが、まさかこの世界にやってくるなんて、幾ら何でも予想出来ない事だ。


 それとも、俺がこの世界にいるからアイツラはやってきたのだろうか?

 魔王の弔い合戦として、この世界を滅茶苦茶にしてやるつもりなのだろうか?


 先程の竜はワイバーンだった。ワイバーンを従え尖兵として遣わせる魔王軍の幹部に心当たりがあった。

 宵闇龍ゼノン。魔王軍幹部でありながら異世界では一部に信仰の対象とされていた龍の一柱。紛れも無い龍神である。

 あいつも、この世界に来ている可能性が極めて高い。

 どうする?対策の打ちようが無い。

 ここには俺一人しかいない。普通の人間がワイバーンに太刀打ち出来る訳が無い。それこそ重火器の類が無いと対抗出来ない。

 だがもし、重火器が必要な程世界が混乱すれば、それこそ魔王軍の思う壺だ。

 混乱に乗じて暴徒を集い、混沌を支配しようとするだろう。


 また、異世界のような地獄が再現されてしまう。

 それだけは、避けなければ―――――――――――――――。


 「・・・・・・幸助君!!幸助君!!!」


 ハッと意識が戻る。小春が俺の身体を揺らしていた。


 「ごめん本当に怪我は無かったか?」

 「それはこっちの台詞。説明して。どういう事なの?・・・それに、何があったの?」

 「・・・・・・今日は危険だからウチに泊って欲しい。そしたら説明する。」

「えー!行く行くぅ!!!」

 「ノリ軽ッ。まぁいいならいいや。何が起こるか分からないし、急いで帰るからさっきみたいに背中に乗ってくれる?」

 「え、うん分かった。はい。」

 「じゃあ、しっかり捕まってね。全速力で帰ります。」

 「うん!ちょ、わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」


 ―――――そして、家の前に辿り着く。小春には悪い事をしたが、仕方が無い。

 まだワイバーンがいる可能性も大いにあるのだ。それに宵闇龍ゼノンが来襲しようものなら、この町が崩壊する危険性がある。だから遭遇する訳にはいかないのだ。

 それに、あいつとは本気で戦う訳にはいかない。異世界のように何も無い荒野の広がる土地で全力を出し切るような事が出来ないからだ。戦えば無辜の人々が巻き込まれてしまうし、影響も大きくなる。それにあんまり目立ちたくない。出来れば静かに生きていきたい。

 まぁ、魔王軍が本気で攻めてくる事になろうものなら、そんな事も言っていられなくなるが。幾ら強くなったところで、人生はハードモードみたいだ。思うようには生きられない。


 「うげぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 小春が背中でえずいている。確かに色んな所を跳躍しながら、音速に迫る勢いで走ったのは悪い事したなぁ・・・でも事態は急だったし、まぁこれくらいは耐えてもらわないと・・・。

 「うえぇぇぇぇぇぇぇっ・・・。」


 突如、背中が温かくなった。その温かい流動体が薄着の制服に染みながら下がっていくのを感じる。肌がピリピリする。その流動体は酸性のようだ。


 うわ、くっせぇ。なんか酸っぱいのが臭ってきたんだけど・・・。


 「・・・あ、ごめん吐いちゃった。」悪びれも無く小春が言った。

 「――――――しゃあなし。受け入れよう・・・。」

 なかなか女子の嘔吐物を背中から喰らうシチュエーションは経験しないだろう。せっかく新調した制服が台無しになったというのもあるが、仕方ない。嬉々として受け入れよう。


 「ごめんごめん!あ、ついでに漏れそう。」

 「よし漏らしていいよ。制服創り直すし。。」

 「ちょっ・・・漏らすかバカ!!」


 思いっきり後頭部を殴られた。え何で?今、漏らす流れじゃないの??

 背中から下りると、小春は早口で怒号を放つ。


 「何言ってんのよ変態!バカ!異次元筋肉!!」

 「異次元筋肉は罵倒に入るのか・・・?」

 「あんなに早く動くとは思わないじゃない!!てっきり車ぐらいの速度かと思ったのにジェットコースターの1億倍怖かったわよ!!ゲロはその仕返しよ!!」

 「むしろご褒美・・・。」

 「はぁ!?何言ってんのよ!!汚れたし早くお風呂に入れて頂戴!!・・・あ、着替えどうしよう。後先考えず吐いちゃったわ・・・。」

 「・・・まぁ、下着とか、服程度なら《複製つくれる》から大丈夫。上着は俺のジャージを《複製》した新しいやつあげるから気にしなくていいよ。」


 《複製》。これは俺が異世界に行き、最初に習得した魔法系のスキルだ。一度見て触れたモノを魔力で再現し、その名の通り複製する。女性用のパンツやブラジャーは一度と言わず諸々の事情により、異世界で触れた事があるので、その経験を遡って《複製》すればいいだけだった。そっくりそのままでしか作れないので、サイズがあうかどうか不安ではあるが、まぁ大丈夫だろう。それに、寝るだけならジャージを《複製》すれば問題無いだろうし。

 ――――と、その通りの事を小春に説明すると、小春は少し狼狽えた。


 「・・・え?よく分からないけど、女性用の下着に触れた事があるの?」

 「うん。脱がすのが大変だったから・・・。」

 「脱がした!?誰のを!?」

 「・・・本当に、すっごい我儘な女の子がいてね・・・全部、身の回りの世話をやっていた時期があったんだよ・・・。」

 「・・・・・・え、今私、犯罪者の戯言聞いてるんじゃないわよね?」

 「どーしたらそうなるんだよ俺だって思い出したくもねぇんだよ!!もういいだろお前のパンティー&ブラジャーは俺が作るから黙って風呂入れや!!はい今作ったァー!!これ持ってけ!!」

 速攻でパンツとブラジャー、そしてジャージを創り、渡した。家の鍵を開け、玄関まで無理やり送り込む。


 「いやお風呂何処にあるのよ。案内してよ。」

 「・・・あーもうこっちこっち!!じゃあやる事あるから、お風呂上がったら言ってくれ!!俺もゲロ早く落としたいから!!」

 「やる事って何!?」

 「家を覆う結界みたいなもんを張る。急いで張りたいんだよ、このままじゃ危険だしな。」

 「・・・ああ、そういう理由があるのね。てっきり覗いて来るんじゃないかと思ったわ。分かった。」

 「覗かねーよ。じゃあ、そういう事で。」


 ――――――そうして、幸助は、《防壁陣》を展開し始めた。


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