第10話 セトラ
「――――あらあら、うちの息子が女の子を連れてくるなんて!あんたどうしたの?」
「・・・別に、やましい意味は無いから!!」
「あんた弱いのに、また何かトラブルでも起こしたの?もう飛び降りるのだけはやめてね。」
「重いわ。もうあんな事はしねーから。それとは別で、えーと、何て説明すればいいんだろうか・・・。」
今、幸助は夕飯を食べていた。隣にはジャージに着替えた小春もいる。
幸い、父は仕事で帰ってきておらず、3人で卓を囲っている状況だった。
どうしようか。ワイバーンの事を言っても信じてもらえないだろうし・・・。
「・・・幸助君は、昔からこうなんですか?」
小春が幸助母に質問する。
「うん、生粋のトラブルメーカー。父さんに似て、余計なお世話ばっかりなのよ。」
「へぇ、そうなんですか。」小春が相槌を打った。
「違うわい。そうせざるを得ない状況に遭遇しやすいだけなんだって。」幸助は反論する。
「小春ちゃん、この子と仲良くしてあげてね。まーた何かあったら飛び降りるかもしれないし。」
「俺を何だと思ってんだよ・・・。」
酷い言われ様である。まぁ、あんな事してしまったら仕方ないか・・・。
ただ、幸助には時間間隔のズレが明確にあった。飛び降りたのは4日前だとしても、実際には何年もの月日が経過している状態である。とても数日前に起きた出来事としての実感が存在しないので、変な気分だった。確かに悪いとは思っているけど、そんなに昔の事を掘らなくても・・・という気分になっちゃうのである。
「しかも最近は妄言ばっかり呟くのよ。異世界がどうのーとかね。寝言で言っちゃってんだから困りものよ。急激な体系の変化もそうだし、やっぱり頭打っておかしくなったのかしらって、最近は思うばかりよ。」
「へぇー、そうなんですか・・・。」
小春が察するように応える。まぁ、無理は無いだろう。さっき明らかに非現実的なモノと遭遇しているのだから。お母さんは知らないのだ。ああいった化物の恐ろしさを。
――――その時、防壁陣から、何者かを感知した反応があった。
幸助はジャージのまま立ち上がる。
「お母さん、ごめん。ご馳走様。散歩にいってくる。」
「え、まだ残っているじゃない。」
「小春は絶対に外に出ないでくれ。じゃ、行ってくる。」
「・・・ちょっ、どうしたの急に!?」小春の言葉に背を向けて、外に飛び出す。
魔力を帯びた生体反応。《防御魔法・防壁陣》には、周囲をバリアで護る他に、半径10キロの魔力反応を検知し、術者に知らせるセンサーの役割があった。明確な居場所まで特定は出来ないが、予測は可能。
今は既に闇深い夜。何が起きてもおかしくない。
目に魔力を込め、暗視状態にする。暗闇が晴れると、遠くの空に龍が見えた。
ワイバーンとはまるで違う、神格に到達した龍だ。
・・・どうする?・・・・・・やるしかないか。
幸助は覚悟を決めた。異世界からの侵略者だとしたら、容赦はいらない。
問答無用だ。神に等しい宵闇龍だろうが、ここで終わらせてやる。被害者が出る前に、手を打たなければいけない。
脚に魔力を溜め、空気を蹴って跳躍していく。空中なら、あの龍と戦っても被害は最小限に抑えられる。あっという間に加速し、距離を詰めていった。
そして、空中に足元の空気を固めて足場を作り、龍の目の前に立つと、幸助は喋り始めた。
「―――――おい。お前、この世界に何の用だ?魔力が駄々洩れだぞ。」
「・・・・・・あっやっと会えた!!」
「・・・え?」
なんか、すっごい聞き覚えのある声がした。
・・・・・・いやーな予感がした。
よく見ると、その龍の姿にすごく、見覚えがあった。暗かったから分からなかったけど、近くで見ると、赤い鱗で覆われた凛々しいそいつは、俺のよく知る人物だった。
「・・・コースケ!!コースケだよね!?探したよ~!!」
身体を掴み、ぶんぶん振り回してきた。愛情表現がハード過ぎる・・・。
「・・・えっちょっと待って。吐きそう。何でこんな聞き覚えのある声が・・・。」
「私、セトラだよ!!セトラ!!」
「・・・は?え?・・・・・・マジで?」
龍が光を発し始める。そして、その光が人型の形になると、本来の姿が現れた。
赤き髪、紅き瞳に、翼の生えた麗人。背に翼を、臀部に尻尾を生やし、その暴力的な胸をさらしで巻いた勝気な少女が抱き着いてくる。
―――――そいつは、かつての俺の仲間、龍人セトラだった。
ありがとうございます!!
高評価、ブックマーク宜しくお願いします!!




