第29話 作戦会議
「―――――えー、今から作戦会議を始めます。あの私の同族、そしてアカシクの民の恥、マクガフィンの言っていた事を踏まえて、今後どうするかを考えようと思いまーす。」
作戦を親に聞かれるとまずいとの事で、アイナの部屋で作戦会議が始まった。アイナ、セトラ、小春、幸助、レーヴの5人が部屋に集まった。
アイナが自分の部屋に何故が置いてあったホワイトボードで文字を書いていく。「あの女殺す」という物騒なワードを書いた後、アイナは自分の考えを述べた。
「まず、私たちが現状手に入れている情報は、ワイバーンの急襲、札幌市の異変、あとはあの女が言っていた事くらい。今まで魔王軍残党の仕業かと思われていた事態だけど、また別の可能性が浮かび上がって来たって所ね。」
そう言いながら、アイナはホワイトボードに「クソ女の戯言を信じても意味は無い。」とか、「宵闇龍ゼノンは果たして生きているのか!?」「ていうか、アカシクの民の生き残りは私だけで良くない?」なんて事を書きだした。普通は出された意見を書いていく筈なのに、書かれていくワードは全てアイナから湧き出た負の感情ばかりだった。
「姫様よ、そのワードは書いていく必要はあんのかな?」セトラがようやく突っ込んだ。
「いやだってあの女なんかムカつかない?全てを見透かしている感じ、非常に腹が立つわ。何様なのよあの女。同族だと思いたくもないわ。」
「・・・なぁ、気になったんだが、何でその同族があの魔眼王とやらに付いているんだ?ていうか魔眼王も、マクガフィンも誰だよ。様子を見るに、宙に浮いてたし魔法を使っていたから、一応、異世界出身って事でいいんだよな?」
幸助は思った事を言った。まだ分からない情報が多過ぎてどれも推測の域を出ない結論しか導かれない議題を上げてみたのだが、一応ここはハッキリさせておく必要があると判断して、幸助は言ってみた。
「・・・・・・《ベータ》出身である可能性は極めて高いわ。あのアカシクの民がその証左だと思う。」アイナは溜息をつきながら答える。
「・・・じゃあ、何で異世界であいつらは一度も出てこなかったんだろうか。」
「それは知らないわよ。魔王軍と国との戦争が激化していく中で、陰に潜んでいたのかもしれないし、可能性は無限に考えられるわ。」
「じゃあ、追加で。俺がこの世界に帰って来た時と今、俺がいない空白の3年間は異世界は平和だったんだろう?もし陰に潜んでいたとしたら、普通なら魔王軍との戦争が終わって疲弊している時に現れないか?」
「それが意味分からないのよ。何でこのタイミングなのよって私も思っているわ。やっぱりコースケは私と考えが同じだわ、これは運命よね。」
「はいはいそうだな。でも、これじゃあ結局何も分からないな。俺達が行動を起こす必要がある。」
「・・・・・・小春を狙ったワイバーン、本当に宵闇龍ゼノンが差し向けた刺客なのか、確かめてみようと思う。」
セトラが立ち上がった。
「・・・確かに。そこから可能性を潰していくしか無いわね。今のままじゃ、マクガフィンが精神異常者の可能性も否定できないもの。」アイナも頷く。
「精神異常者って・・・。確かに尋常では無かったが・・・。にしても、いつにもましてアイナ姫様は荒くなっているな。」幸助がアイナの怒りっぷりを指摘した。
「姫様呼びやめてコースケ。大体おかしいと思ったのよ。宵闇龍ゼノンがどうやってこの世界にやって来る訳?魔王軍が異世界転移の力を使えるならとっくに使っていたわよ。ワイバーンを従えられる龍が他にもいる線を考えないと。ていうか絶対にそうだわ、魔眼王の部下に、龍がいる筈よ。」
「・・・セトラとゼノン以外の龍・・・・・・。いるのか、そんな奴?」
「いるにはいるわよ、もう死んで居ないとされているけど。でもワイバーンを創造し従えて、《龍世界》を構築出来る龍は、歴史で見ても、セトラとゼノンと、300年前に没したと言われる龍王アークぐらいかしらね。・・・・・・まさか、アークが生きて・・・いや・・・。」
「・・・可能性としては高いな。そのアークって奴が、ワイバーンをよこした奴か。っていや、無い無い。生きてる訳無いだろ。だってよ、アイナは知らないかもしれないがーーー」
「・・・アークが生きているとは思えないけどね。」
セトラが溜息をつきながら言う。
セトラはこう見えても、昔はアークと同じように龍王とも呼ばれる存在で、ゼノンと同じく信仰の対象でもあった。神にも等しき力を持っている訳で、本来ならこうして人間として生きている事自体が非常にレアである。
永きに渡って生きていた彼女は、かつてその龍王アークの死を看取っていた。これは有名な話である。
「私は彼の死を目の前で見たのよ?」
「・・・これはセトラの為にも言いたくなかった事だけど、怒らないでね。死体を操る魔法、もしくは魔術で動かしている可能性は考えられないかしら?」アイナが声のトーンを落として言う。
「・・・そんな悪趣味な事あるかよ。」セトラはそれを想像したのか、怒りに震えていた。
「凄い可能性は低いけど、ありえない話ではないって事だけは言わせて。そうであって欲しくは無いけど、現状敵は何者か一切分からないのよ。もしかしたら、魔王軍よりも厄介な敵なのかもしれない。」
「・・・・・・そうだな。」セトラは、深呼吸をして、落ち着いた。
暫しの間、静寂が訪れた。個々に考える事があった。
可能性は幾らでも考える事は出来た。もし、死体を完全に操るような相手が敵なら、かつての仲間達や敵が無理矢理操られている状況を考えれば考える程、地獄のように思えた。
幸助も異世界では、大切な人を多く失ってきた。アイナ姫も、セトラだって例外では無い。
かつてのパーティメンバー、魔法使いのクロエや、魔剣使いのブラッドは、戦争中に命を落としている。彼らがもし敵になったら、と考えるだけで嫌だった。
だが、そう考えれば考える程、矛盾に突き当たるのだ。
何故、このタイミングなのだ?何故、小春を狙った?
それに、あのマクガフィンという少女は何者なのだ?
あの子はちゃんと生きていた。何がどうなっている?
こんなに敵の全容を、予想出来ない事なんてあるのか・・・?
「・・・あのー・・・。せっかくの夏休みだし、札幌市に行ってみるというのはどうでしょうか・・・?」
沈黙していた所、ゆっくりと手を挙げて、小春がそう提案した。
「・・・・・・それしか無いな。でも小春は絶対に連れていけない。」幸助がそう言うと、他の2人も頷く。
「そう、コースケの言う通り。小春ちゃんは命を狙われている。もし札幌に行くとしても同行は無理ね。」
「・・・・・・でも、私はまだ足手まといだし・・・。」
「提案がある。《ベータ》に私と小春が行って、宵闇龍ゼノンがいるかどうか確かめてくるってのはどうだ?」
セトラが提案を始めた。すると、それまでずっと黙っていたレーヴが頷いた。
「私はいいと思う。3年間山籠もりしていた時に、ある程度害意の強い魔族は始末してきたから、もしかしたら異世界の方が、今は平和なのかもしれない。」
「確かに、そう聞けばあんたの空白の3年間も無駄じゃなかったわね。」そう言って、セトラが笑った。
「それに、異世界の人々の殆どは、私が今、この世界にいる事を知らない。皮肉にも、勇者という存在がかなりの抑止力になっている。セトラが一緒にいるなら、《ベータ》でも大丈夫だと思う。」
「あら、勇者様は私を結構、評価しているのね。」
「そりゃあ、一度は世界を混沌に陥れた龍王本人ですし。」
「・・・よし、決まりだな。俺とレーヴ、アイナは札幌に行く。セトラと小春は《ベータ》で確かめる。特にセトラはくれぐれも気をつけてくれ。危険だと思ったらすぐに逃げるように。」そう言って、幸助が場を締め始めた。
「当たり前よ。勝てない戦はしない。」
「それじゃ、解散だな。明日、さっそく作戦を決行しよう。各自、特に小春は、難しいだろうけど身の安全の為だ、家族に連絡しておいてくれ。さーて、寝るか。明日は大変だ。」
「・・・え、本当に、異世界に行くの、私・・・?」
小春は戸惑う。
「いざとなったら王国の近衛騎士団に守らせるから大丈夫。心配しないで小春、よっぽどこっちの世界の方が、今は危ないんだから。」
セトラがそう言うと、小春は頷くしかなかった。
ありがとうございます!!
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あと、書き溜めが尽き、諸事情によりそろそろ不定期投稿になりそうです。
一応物語の終わりまでは少し長いですがプロットとして決まっています。
完結させるよう頑張りますので、気の長く見ていただければ嬉しいです。




