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おはよう世界、さよなら異世界  作者: キャピキャピ次郎☆珍矛
序章
11/125

第11話 夜空


 「・・・コースケ、本当に行っちゃうの?」

 セトラが泣きながら言う。

 「・・・・・・ああ、俺は務めを果たした。帰らなきゃいけない。そういう契約だ。」

 「・・・・・・やだ!!行かないで!!!」

 「・・・楽しかったよ、セトラ。いつか、また・・・・・・。」

 そうして、俺は女神のいる空間へ、光の中へ吸い込まれていった。


 セトラは、異世界から帰還する際に、最後に会った仲間だった。

 彼女だけが、俺の最後の別れに立ち会っていた。


 ――――――――ってな感じて、最高の別れ方したつもりだったんだけどなぁ・・・。


 今、幸助は龍と化したセトラの背中に乗っていた。遥か上空を飛行している。

 雲の上から見る真っ黒な夜空に浮かぶ満月はとても奇麗だった。

 また会えて嬉しい。純粋にそんな感情が湧いた。まさか本当に逢えるとは思っていなかったからだ。


 「―――――セトラ、よくここに来られたな。どうやって来たんだ?」


 純粋な疑問を投げかけた。女神の力でも無いと、異世界に転移するなんて技、不可能だろう。


 「えっなんて?聞こえなかった。」

 「聞こえねぇのかよ。まぁそりゃそうか、飛んでるし。じゃあ、大声で言うわ。どうやってここに来た?」

 「うるさっ。聞こえてるって。」

 「俺をどうしたいんだよお前。」

 「・・・ふふっ。変わってなくて安心した。」

 「安心も何も、俺はずっと混乱してるんだが・・・。」


 正直、これを喜んでいいのか、分からなかった。

 異世界から人間がやってくるという事が可能ならば、魔王軍の残党もこちらに来る事が出来るかもしれない。それはあまりに危険すぎる。憂慮すべき事態だ。


 「・・・・・・あれから、私たちの世界は大変だったよ。」

 「・・・どういう事だ?魔王が死んで万々歳じゃないのか?」

 「まぁ、ある程度平和にはなったよ。周辺国との和平も無事締結出来て、残りの魔王軍は行方をくらましたし。ただ、それよりも、お姫様がねぇ・・・・・・。」

 「・・・あー、なるほどー・・・。相変わらずだな・・・。」


 一瞬で全てを理解した。ガレス王国のお姫様は、超我儘で有名なのだ。

 俺が魔王を討伐する前日まで、俺が戦場に赴く事を許さなかった。小さい頃から何年と一緒に過ごしてきたので、別れたくなかったらしい。

 それでも俺は、自分の使命を優先させた。そうしないと、いつまでたっても異世界は地獄のままだった。今でも俺がしなくちゃいけなかったのか?と思う事がある。あの女勇者に全てを任せて、この世界の事なんて忘れて平和に異世界で暮らす。それも悪くなかったかもしれない。

 でも、そうしなきゃお母さんに謝れなかったから。

 結局は、俺は自分を優先したのだ。


 「3年掛かったよ。この世界と異世界を行き来する魔法を構築するのにね。」

 「・・・・・・3年?俺まだ、この世界に戻ってきて4日しか経過してないんだけど。」

 「それは、この時間軸に設定されているからだよ。コースケのいる座標目指して飛んできたって訳。」

 「すげぇな・・・。どうやってそんな・・・。」

 「姫様の執念だよ。女神の使う権能を解読したんだと。で、まずは実験として私が送り込まれた訳。」

 「よくそれに了承したな。失敗するかもしれないのに。」

 「失敗してもあの姫様なら何とかしれくれるよ。」

 「そうかなぁ・・・。」

 「ま、コースケに再会出来たからひとまず成功よ。それより、姫様大きくなったよ。色んな意味で。」

 「そっか、3年が経過してんだよな。・・・・・・セトラ。言わなきゃいけない事があるんだ。宵闇龍ゼノンが、この世界にやってきているかもしれない。」

 「・・・何ですって?」

 セトラの声色が変わる。セトラとゼノンは因縁の関係だ。


 「何故かは分からない。今日、多分だけど、あいつが使役するワイバーンに遭遇した。俺の同級生を殺そうとしてきたんだ。我々魔王軍は不滅だ、って死に際に言いやがった。」

 「・・・・・・あり得ない。あいつらの何処にそんな技術力が・・・。」

 「さぁな。よほど、俺に恨みを買っているんだろう。幾ら魔王軍の残党と言えど、魔法の無いこの世界じゃとんでもない脅威だ。こうなってから思うよ、やはり俺はこの世界に帰るべきじゃなかったのかな、って。もしあいつらが俺を追ってきていたとしたら、この事態を招いたのは、全部俺のせいだしな。」

 「それは無いでしょ。考えすぎだって。どうせまたあの女神が悪いのよ。」

 「そうだといいんだけどね。ま、あんまり考えないようにするよ。今のままだと、対策の打ちようが無い。・・・・・・で、どうするんだ?セトラ、行くとこないだろ?家に来るか?」

 「そうしましょうかね。貴方の母親、会ってみたいわ。」

 「じゃあ、一旦元の姿に戻ってくれ。翼と尻尾は隠した状態で、《変身》出来るか?」

 「オッケー、人間モードって奴ね。この世界には確か、コースケみたいな純粋な人間しかいないのよね。了解、目立つ訳にいかないしね。でも、今解除したらうまく飛べなくなるんだけど。」

 「俺の背中に乗ってくれ。家までは俺が案内するよ。」


 そして、人間の姿になったセトラに、即席で創ったジャージを渡して来てもらった後、背中に乗ってもらい、全力で空を駆ける。足場の空気を蹴りつつ、家に直帰した。

 小隕石が降ってくるような速度で、幸助は駆ける。セトラは小春とは違い、この速度に慣れているのか、かなり余裕だった。


 「・・・なんか、背中からうっすらゲロの臭いがするんだけど・・・。」

 嗅覚のいいセトラが、先程の嫌な記憶を掘り返してきた。

 「今日、背中でゲロ吐かれたからな。」

 「え!?どんな女によ!?」

 「よく女ってわかったな。」

 「いやまぁ匂いでなんとなく分かるわよ。で、どんな女よ。」

 「そのワイバーンに襲われた子だよ。今家に匿っている状況なんだ。」

 「・・・・・・ふーん・・・。あんまり浮気に走ると、姫様泣くよ?」

 「だからそんなんじゃないんだって!!何でそうなるんだよ・・・・・・うまくやってくれよ、仲良くしてくれ!」

 「それはその子次第よねー。」


 セトラがそう言い、強く後ろから抱きしめてくる。胸が当たっている感覚が何とも恥ずかしい。そう、恥ずかしがる幸助の感情を読み取ってか、セトラは意地悪に笑った。

 どうやら、平穏な日常を送る事は出来ないらしい。


ありがとうございます!!

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