第11話 夜空
「・・・コースケ、本当に行っちゃうの?」
セトラが泣きながら言う。
「・・・・・・ああ、俺は務めを果たした。帰らなきゃいけない。そういう契約だ。」
「・・・・・・やだ!!行かないで!!!」
「・・・楽しかったよ、セトラ。いつか、また・・・・・・。」
そうして、俺は女神のいる空間へ、光の中へ吸い込まれていった。
セトラは、異世界から帰還する際に、最後に会った仲間だった。
彼女だけが、俺の最後の別れに立ち会っていた。
――――――――ってな感じて、最高の別れ方したつもりだったんだけどなぁ・・・。
今、幸助は龍と化したセトラの背中に乗っていた。遥か上空を飛行している。
雲の上から見る真っ黒な夜空に浮かぶ満月はとても奇麗だった。
また会えて嬉しい。純粋にそんな感情が湧いた。まさか本当に逢えるとは思っていなかったからだ。
「―――――セトラ、よくここに来られたな。どうやって来たんだ?」
純粋な疑問を投げかけた。女神の力でも無いと、異世界に転移するなんて技、不可能だろう。
「えっなんて?聞こえなかった。」
「聞こえねぇのかよ。まぁそりゃそうか、飛んでるし。じゃあ、大声で言うわ。どうやってここに来た?」
「うるさっ。聞こえてるって。」
「俺をどうしたいんだよお前。」
「・・・ふふっ。変わってなくて安心した。」
「安心も何も、俺はずっと混乱してるんだが・・・。」
正直、これを喜んでいいのか、分からなかった。
異世界から人間がやってくるという事が可能ならば、魔王軍の残党もこちらに来る事が出来るかもしれない。それはあまりに危険すぎる。憂慮すべき事態だ。
「・・・・・・あれから、私たちの世界は大変だったよ。」
「・・・どういう事だ?魔王が死んで万々歳じゃないのか?」
「まぁ、ある程度平和にはなったよ。周辺国との和平も無事締結出来て、残りの魔王軍は行方をくらましたし。ただ、それよりも、お姫様がねぇ・・・・・・。」
「・・・あー、なるほどー・・・。相変わらずだな・・・。」
一瞬で全てを理解した。ガレス王国のお姫様は、超我儘で有名なのだ。
俺が魔王を討伐する前日まで、俺が戦場に赴く事を許さなかった。小さい頃から何年と一緒に過ごしてきたので、別れたくなかったらしい。
それでも俺は、自分の使命を優先させた。そうしないと、いつまでたっても異世界は地獄のままだった。今でも俺がしなくちゃいけなかったのか?と思う事がある。あの女勇者に全てを任せて、この世界の事なんて忘れて平和に異世界で暮らす。それも悪くなかったかもしれない。
でも、そうしなきゃお母さんに謝れなかったから。
結局は、俺は自分を優先したのだ。
「3年掛かったよ。この世界と異世界を行き来する魔法を構築するのにね。」
「・・・・・・3年?俺まだ、この世界に戻ってきて4日しか経過してないんだけど。」
「それは、この時間軸に設定されているからだよ。コースケのいる座標目指して飛んできたって訳。」
「すげぇな・・・。どうやってそんな・・・。」
「姫様の執念だよ。女神の使う権能を解読したんだと。で、まずは実験として私が送り込まれた訳。」
「よくそれに了承したな。失敗するかもしれないのに。」
「失敗してもあの姫様なら何とかしれくれるよ。」
「そうかなぁ・・・。」
「ま、コースケに再会出来たからひとまず成功よ。それより、姫様大きくなったよ。色んな意味で。」
「そっか、3年が経過してんだよな。・・・・・・セトラ。言わなきゃいけない事があるんだ。宵闇龍ゼノンが、この世界にやってきているかもしれない。」
「・・・何ですって?」
セトラの声色が変わる。セトラとゼノンは因縁の関係だ。
「何故かは分からない。今日、多分だけど、あいつが使役するワイバーンに遭遇した。俺の同級生を殺そうとしてきたんだ。我々魔王軍は不滅だ、って死に際に言いやがった。」
「・・・・・・あり得ない。あいつらの何処にそんな技術力が・・・。」
「さぁな。よほど、俺に恨みを買っているんだろう。幾ら魔王軍の残党と言えど、魔法の無いこの世界じゃとんでもない脅威だ。こうなってから思うよ、やはり俺はこの世界に帰るべきじゃなかったのかな、って。もしあいつらが俺を追ってきていたとしたら、この事態を招いたのは、全部俺のせいだしな。」
「それは無いでしょ。考えすぎだって。どうせまたあの女神が悪いのよ。」
「そうだといいんだけどね。ま、あんまり考えないようにするよ。今のままだと、対策の打ちようが無い。・・・・・・で、どうするんだ?セトラ、行くとこないだろ?家に来るか?」
「そうしましょうかね。貴方の母親、会ってみたいわ。」
「じゃあ、一旦元の姿に戻ってくれ。翼と尻尾は隠した状態で、《変身》出来るか?」
「オッケー、人間モードって奴ね。この世界には確か、コースケみたいな純粋な人間しかいないのよね。了解、目立つ訳にいかないしね。でも、今解除したらうまく飛べなくなるんだけど。」
「俺の背中に乗ってくれ。家までは俺が案内するよ。」
そして、人間の姿になったセトラに、即席で創ったジャージを渡して来てもらった後、背中に乗ってもらい、全力で空を駆ける。足場の空気を蹴りつつ、家に直帰した。
小隕石が降ってくるような速度で、幸助は駆ける。セトラは小春とは違い、この速度に慣れているのか、かなり余裕だった。
「・・・なんか、背中からうっすらゲロの臭いがするんだけど・・・。」
嗅覚のいいセトラが、先程の嫌な記憶を掘り返してきた。
「今日、背中でゲロ吐かれたからな。」
「え!?どんな女によ!?」
「よく女ってわかったな。」
「いやまぁ匂いでなんとなく分かるわよ。で、どんな女よ。」
「そのワイバーンに襲われた子だよ。今家に匿っている状況なんだ。」
「・・・・・・ふーん・・・。あんまり浮気に走ると、姫様泣くよ?」
「だからそんなんじゃないんだって!!何でそうなるんだよ・・・・・・うまくやってくれよ、仲良くしてくれ!」
「それはその子次第よねー。」
セトラがそう言い、強く後ろから抱きしめてくる。胸が当たっている感覚が何とも恥ずかしい。そう、恥ずかしがる幸助の感情を読み取ってか、セトラは意地悪に笑った。
どうやら、平穏な日常を送る事は出来ないらしい。
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