芽生えた友情と別れ
「おーいミル、この丘を越えたらそろそろ見えて来るらしいぞ」
「ほんと? そっち行きますね」
「あ、アタシも見たいです」
御者をしているクリスの声に、ミルとフランシスカが答え馬車の幌から顔を出した。
この丘を越えれば、アルレッシオ聖王国の首都【リネージュ】が見えるというところまで、クリス達はたどり着いたのだ。
「ようやくですか、長かったですね」
「だなぁ。軽く五、六百キロは移動した気がする。日本で言うと東京-大阪間くらいか? ヘルモア平原広すぎだろ」
『父上、ニホンとはなんぞや?』
「俺たちの故郷だ」
『ほほう。妾の知識に無い地名じゃのう。興味深い』
下手すれば日本の面積くらいありそうな平原の広さに、この世界のスケールの大きさを思うクリス。
ゲーム時でも地道にフィールドを移動すれば、大陸の西の端から東の端まで移動するのに徒歩三日は掛かる広大さだったのだが、こちらはヘルモア平原の西の端にあるアダムヘルから中央の首都リネージュへ移動するだけで馬車を飛ばして五日だ。正に異世界のスケールである。
“日本”というワードに、今日もクリスの首に巻き付いている炎弧のタマモが反応するが、クリスのあっさりとした答えに納得した。異世界の地名と分かるわけないと思って堂々としたものである。
「アタシも、まさか村を出てすぐに上京することになるとは思いませんでした」
幌から顔だけ出し、感慨深げなことを冷静に言うフランシスカ。
京は無いのに上京とはこれ如何に、と思うクリスだが、おそらくこちらの言葉にそれっぽい単語があるのだろう、と納得する。
「だよね。あ、フランは先に座ってて、アルトは見なくていいの?」
「僕は首都出身ですのでお気になさらず。首都を出てまだひと月経っていないですからね。特等席は皆さんにお譲りします。それに御者席は狭いですから」
アルトの言葉にフランシスカが座った御者席を見るミル。確かに三人でもちょっと狭い。四人座るのは無理だろう。
「三人なら詰めれば座れますね。クリスちょっと端に詰めて下さい」
「あ、それならアタシが退きます」
「いいのいいの、フランシスカはそのままで。ほらクリス、詰めて詰めて」
「おいおい押すな危ねぇな。手綱は俺が持ってるんだから俺が中央でお前がフランの逆側の端に座れよ」
「両脇に美少女とか何様のつもりですか。私はフランの隣がいいです」
黒髪美少女に引っ付く機会を逃すまいと、クリスをグイグイ押しやるミル。清々しいまでに己の欲望に忠実である。普段からフランシスカには結構引っ付いていて、男だったら痴漢現行犯で捕まるくらい触っているはずだが、シチュエーションが違えば別腹の様だ。
それを、手綱を操りながら迷惑そうに見つめるクリス。どう考えてもクリスの方が正論である。
「自分で自分を美少女とか言ってんじゃねぇよ」
「美少女でしょう?」
「……美少女だけども」
「ふふん。そうでしょうそうでしょう。さぁ場所を空けなさい」
「美少女関係ねえ! おい、だから押すなって落ちる落ちる!」
「もうちょっと―――きゃ」
ミルの口から可愛い悲鳴が漏れた。
クリスがミルの押す手を掴んで引き寄せると、脇の下に手を差し込みひょいと持ち上げ、己の膝の上に乗せたからだ。
「もうお前そこでじっとしてろ」
「ちょ、これは流石に恥ずかし―――」
「馬ではタンデムしただろうが。何が違うんだよ」
「馬で相乗りと膝の上は全然違うでしょう! 子供みたいで恥ずかしいじゃない!」
「あーもう暴れるな。ほら前見ろ前、見えてきたぞ」
「え!? ―――わぁ!」
恥ずかし気に離れようとクリスの胸を押すミルが、クリスの言葉に前を向く。そして目に飛び込んで来た光景に、思わず感嘆の声が漏れた。
丘の峠を超え視界が開けた瞬間、まず目に入ったのは中央の丘の上に立つ白亜の城。
彼方にその輪郭をぼやけさせながらも、なお分かる威容が、晴天の空を突くかの様にそびえ立っていた。
そしてその城を中心に周りを取り巻く、高く堅牢な三重の壁。その外側に一段低い壁が更に二重となり、計五枚の壁に囲まれている。一番外側の壁などいったい全長何キロあるのか、その両端は地平線の彼方に消えていた。
色とりどりに陽光を反射させるのは家屋の屋根だろう。ゴマ粒のようなそれが無数に外壁の間を埋め、所々に緑も見えた。
外壁の外にも広く家々が連なり、その更に外には農園や果樹園、牧場なども見て取れる。首都の東側には大河【ネイシス川】が、北には大霊峰【イヴェルヴァリア】と【世界樹】も一望できた。
「すごい! 大きな街ですね!」
『妾の知識でもここまでの都は知らぬ、驚いたのじゃ』
「だなぁ。想像以上にデカい。人口何人くらいいるんだろ」
そこで、ミルの悲鳴に幌から顔を出したアルトが、クリスの疑問に答える。
「首都外壁の内部だけで100万を数えます。外部を含めれば戸籍の有る者だけでも300万以上になりますね」
「まじか、そいつはすげぇな」
1700年代の江戸の人口が約110万。それが当時世界最大規模だったことを考えれば、驚くべき人口である。
クリスの腕の中で目をキラキラさせて街を見るミルに、アルトは目を細めながら、どこか誇らしげに言った。
「ようこそ、我がアルレッシオ聖王国の首都【リネージュ】へ!」
■◇■◇■◇■
「お前ら、長旅ご苦労だった。これで今回の護衛任務は終了だ! 皆既に聞いていると思うが、通常は受領書に依頼人のサインが必要ところを、今回はギルドマスターと受付嬢が同行しているのでそれも必要ないとのことだ。だからこの場で解散になる! お疲れさん!」
第二外壁手前の草原で、旅隊の冒険者代表であるゴンザレスが労いの言葉と共に解散を告げた。
ミル達に、ここ数日で仲良くなったCランク冒険者が別れを告げ去って行く。
エリーナ達三人も、何やら用事があるようで別れを告げると、非常に名残惜し気に後ろ髪を引かれまくりながら入り口に並ぶ列に加わっていった。
それを見送り、ミルがクリスに尋ねる。
「私たちは、このままアリア教会本部に行くんですよね?」
「あぁ、気は進まないがな」
「そうなの?」
眉をしかめてそう言うクリスに、ミルは不思議そうに尋ねた。
朝食時に決まった、グレアと共にアリア教本部へ向かう話は、道中ですでにミルにも伝えている。
「あぁ、アリア教会に行くこと自体は予定通りなんだが、あの二人が一緒っていうのがな……何というかアリストにしてもグレアにしても、どうも作為的な胡散臭さが拭えん」
「何か企んでるって事?」
「うむ。悪意は感じないんだが……」
「悪意が無いんならいいんじゃない? 私としてはあの列をパス出来るなら、それだけでお爺ちゃんに付いて行っていいかなって思うけど」
ミルにだけ聞こえる様に小声で言うクリスに、外壁前の検問に並ぶ長蛇の列を見ながらあっけらかんと答えるミル。
普通に入るならば並ばなければならないが、グレア達と一緒ならば王侯貴族やアリア教会幹部用の専用入り口を使えるため、並ぶ必要が無くなるのだ。
ちなみに聞いた所によると、一番外側の低い外壁が第二外壁、次が第一外壁。この外壁の部分に低所得~中級層の国民が住み、税を払えない貧困層は外壁の外で暮らしているらしい。一方、一段高い第三内壁の中が高所得者や下位貴族。第二内壁内が中位貴族以上。第一内壁の中に王族が住む王宮と公爵家の住む屋敷があるようだ。
ちなみにこれから向かうアリア教会本部は第二内壁内である。
「お前はお気楽でいいなぁ」
「何かあったら逃げればいいじゃないですか」
「これだから脳筋は……罠に嵌って逃げれなかったりしたらどうすんだよ」
「私とクリスが居て逃げ切れない罠ってどんなのですか?」
「そりゃ…………思いつかねぇな。そうか、そうだな。悩むだけ無駄か」
「そうそう、クリスは難しく考えすぎなんですよ」
「お前が考えない分、俺が考えないといけねぇんだよ」
「それじゃまるで、私が考えなしのアホの子みたいじゃないですか」
「……」
「何で目を逸らすんですか!?」
「そう言えば第二内壁って、そこから先は完全に貴族の領域だから検問がすげぇ厳しいんだってよ。教会の幹部や上位貴族と一緒だとあっさり入れるらしいけど」
「あ、そうなの? やったね、グレアお爺ちゃん様々ですねラッキー! ―――ん? 何で頭を撫でるんですか?」
あっさり話を逸らされたミルの頭を無言で撫でるクリス。アホの子ほど可愛く見える、という奴だろうか。
「おう、お前達ここに居たのか」
そんな二人に、野太い声が掛かった。
先ほどまで終わりの挨拶をしていた、Aランク冒険者のゴンザレスだ。
それを見てさっとクリスの陰に隠れるミル。
未だに、このシイタケ傷のスキンヘッドな大男が苦手らしい。
「おっと、すまねぇ驚かせちまったか」
そんなミルの様子にゴンザレスは苦笑を浮かべる。
そこに最初の敵愾心や、途中の未知への恐怖は見られない。いや、普段より立ち止まるのが二歩早かったので、まだ恐怖心は多少残っているようだが。
「その、何だ、ミルの嬢ちゃん……すまなかった」
「え? えっと……え?」
だがそれを押し殺し頭を下げたゴンザレスに、驚きに目を丸くするミル。
プライドの高そうなこの男が、頭を下げるとは思わなかったのだ。
「初日にお前達に失礼な事を言った。あれは見た目だけで判断した俺の浅慮だった。……お前さんは強かった、それこそ俺が及びもつかないほどに」
淡々とそう告げるゴンザレスは、少し悔しそうな顔をした後、何かを吹っ切ったように穏やかな表情になった。
「ギースに感謝しないとな、ゴンザレス」
「だなぁ。今度アダムヘルに寄ることがあったら、美味い酒を奢ってやることにするよ」
茶化すように言うクリスに、ゴンザレスは苦笑を浮かべる。あの時止めて貰えなかったら、初日から心を折られる事になっていたであろう事が、今なら分かる。
「しかし、わざわざ謝罪しに来るなんてどういう心境の変化なんだ? 昨日までは、あえてこっちに関わらないようにしてただろう」
「バレてたか……いやな、現実を受け入れるのに大分掛かったが、今朝のお前たちの模擬戦を見てやっと認めることが出来たんだ」
クリスの疑問に、ゴンザレスは照れたように笑った後、真剣な顔に戻り続けた。
「若い奴らがあんなに頑張って強くなろうとしてるんだ。俺達先輩が簡単に追い越されてちゃ、示しがつかねぇ。そうだろう?」
それは、Aランクとしての矜持。
今までの己を誇示するための物でなく、己を高めるための正しい矜持の在り方。
それを察し、クリスの顔に自然と笑みが浮かんだ。
「そうだな。先輩の背中はデカいほど安心できるし、追いかけ甲斐もあるってもんだ」
「うむ。俺もAランクになって、一端の冒険者になったつもりで慢心していた。そしてどこかで、満足し、己の限界を自分で作っちまってたんだろう」
神妙な顔で言うゴンザレスに、クリスは答える。それはクリスとミルだけが知るこの世界の真実。
「自分に限界などないさ。努力した分だけ報われる、それがこの世界の法則だ」
この世界は平等だ、必ず努力が報われる。レベルは決して自分を裏切らない。だからこそ、クリスは胸を張ってそう言った。
「……へっ。そうだな、走り続けねぇと見えねぇ景色もあるだろう。俺達は走り続ける、また相見えることがあれば、よろしくな」
「ああ、こちらこそ」
男臭い笑顔で差し出されたゴンザレスの手を、クリスも笑ってがっちりと握った。
年齢も、経歴も、生まれた世界すら違う男同士だが、そこに確かな友情が芽生えた瞬間だった。
それをクリスの後ろから見ていたミルは思った。
あれ、僕に謝ってた筈なのに何二人で通じ合ってるの? やっぱ体育会系って意味分かんない。と。
■◇■◇■◇■
ゴンザレスが去ると、続いてフランシスカが神妙な顔で近づいて来た。
「ミルさん、クリスさん、これまで本当にありがとうございました。この御恩は一生忘れません。アタシもこれから冒険者登録をするので、もし連絡を取りたければ冒険者ギルドに伝言をして貰えれば伝わると思います。何かアタシに手伝えることがあれば、遠慮無く呼んでください、いつでもどんな時でも駆け付けます。あと、お借りしていたこれをお返ししますね」
そう言い、ジュウサンキロとローブと杖を取り出したフランシスカの手を、ミルはそっと抑えた。
「何を言ってるんですかフラン、私たちはもうパーティなのです。何も遠慮することは無いのですよ」
ミルは慈しむ様に目を閉じ、両手でフランシスカの手を優しく包み込んだ。
「この装備は差し上げます。これからの事を考えれば、身を護る武器は強いほうがいいでしょう」
「ミルさん……でも―――」
「いいのです。何も言わないで、私からの気持ちですから」
「……はい、はいっ。ありがとうございます。ありがとう、ございます!」
ミルの優しい言葉に、フランシスカの目に涙が浮かぶ。
思えば今まで碌な事のない人生だった。
辺境の寒村に生まれ、両親に先立たれ食うも食わずの幼児時代、魔法を使えるようになってからは、搾取と労働の日々。酷い生活の中で師匠に出合い、希望を知ってからすぐの師の死、そしてより深い絶望。
それでも何とか年を重ね、体が大きくなり師匠のおかげで身ぎれいになっていたら、親戚のおじさん―――養父とは呼びたくない―――の自分を見る目が厭らしく舐めるようなモノに変化しているのに気づき、本物の奴隷か村の性奴隷かの二択から逃げる為、学園というひと欠片の希望に縋りついて村を飛び出した結果、オークに捕まった。
あの時、この自分より小さな目の前の少女に助けられなければ、自分はオークの苗床として人の尊厳を失ったモンスターを増やすだけの道具となっていた事だろう。いや、助けられた時の状況を鑑みれば、未熟なこの身はそのまま死んでいた可能性すらある。
死の直前で助け出され、それだけでなく戦う術を教えてくれたミルとクリスの二人。
あの時拾った命を、アタシはこの二人の為に使おう。
ただの田舎の小娘に出来る事なんてたかが知れているし、仰ぎ見る事すら出来ないほど高みにいるこの二人の役に立つことなど、出来ないかもしれないけれど。
せめて精一杯生きて、精一杯学び、精一杯強くなろう。彼女達が万が一私の力を必要とした時に、必ず力になれる様に。
そう、フランシスカは固く誓った。
「ありがとうございました。それでは、また」
フランシスカは名残惜しそうに、一度ミルの手を両手で強く握り決意も新たに、離した。
――― ギュ
離した。
――― ギュギュ
離した。
――― ギューッ
離し……離れないっ!
「どこに行こうというのかね」
決意と覚悟を決めて、真剣に別れを告げたフランシスカの手を、両手で握りしめたまま変わらぬ微笑でミルが言った。
「え、あの……え?」
完全に別れる気でいたフランシスカは大いに戸惑った。
あれれ? アタシ何か忘れてたっけ!?
「首都に詳しいアルト君に質問です」
「は、はい?」
ゴンザレスが来ている間にすでにフランとの別れを済ませていたアルトは、二人の別れを邪魔すまいと黙っていたのだが、急に声を掛けられてこちらも戸惑う。
「行く当てのない世間知らずの田舎っぺ美少女が一人、大都会に出てきました。どうなりますか? ちなみにその美少女は不幸体質です」
「えっと……騙されて人買いに売られる、とか悪い男に引っかかって泣かされる、とか訳も分からず変なものを買わされる、とかでしょうか?」
「……アルト、首都ってそんなに治安悪いの? あと私、別に美少女じゃないし」
「はい無自覚! チョロイン確定! 飴ちゃんで犯罪者に付いていっちゃうやつ!」
アルトの言葉に不安になるフランシスカに畳みかけるミル。
お前の方がよっぽど騙されそうだけどなぁ、とクリスは思ったが空気を読んで黙っていた。
ちなみに首都リネージュは、他の国の首都に比べ圧倒的に治安はいいのだが、婦女子が夜中に出歩けるほどでは無い。
現代日本でもそうであるように、その手の弱者を狙った犯罪は一定数存在する。
「フラン、ちょっと屈んで」
ミルにそう言われ、戸惑いながら屈んだフランシスカのビン底眼鏡をさっと取ると、前髪を分けてピン止めするミル。
「客観的に見てどう思いますかアルト」
「可愛いですよ」
「え、え? ええ??」
臆面もなくそう言うアルトに、そんな事を今までの人生で言われた事のないフランシスカの頬に朱が差した。
確かに、出会った時のボロボロの小汚い黒い小娘は、ミルの栄養価の高い美味しい料理と、小ぎれいになった身なりで見違えるように綺麗になっていた。特に過酷な環境から脱し、心に余裕が出来た事により穏やかになった目元の変化が著しい。
ミルの献身的なブラッシングにより光沢を宿した濡羽色の髪と、黒曜石の様な瞳に険の取れた切れ長の目元は、幼さを残しながらも綺麗系の涼やかな美人といった趣。なのだが、そこは空気の読めるイケメンのアルト、相手がより喜ぶ言葉を自然と選んでくる。
チッ
微かな舌打ちの音に思わずミルの方を向き直ったフランシスカだが、ミルは心配げな表情で自分を見つめるのみであった。
「ほら、ちょっと褒められただけで赤くなる。そうやって悪い男は近づいて来るんですよ。アルトみたいに!」
「ええ!? 僕は率直な感想を言っただけですよ!」
気のせいかな? と思っていると、ミルとアルトの会話が耳に飛び込み、またも赤くなるフランシスカ。褒められ耐性が低すぎる。
「ほらほらほら、そういう所です! 危なっかしくて一人で歩かせられません。アルトもそう思うでしょう?」
「えっと、僕は正直フランシスカなら一人でも大丈夫だろう、とさっきまでは思ってたんだけど……今のを見てると確かにちょっと心配かも」
「そ、それは二人が心にもない事で褒めるからですよ! アタシが可愛いなんてあるわけないじゃないですかっ!」
今まで、散々“不吉”だの“人殺しの目”だの“臭い汚い寄るな”だのと誹謗中傷に晒されてきたフランシスカは、当然そんな二人の言葉をすぐに信じることが出来なかった。
「重傷ですね。これは絶対一人にさせられません」
「……うん、首都に慣れるまで、もう暫く僕達と一緒に居よう。ね?」
「あ、アルトは家に帰っていいですよ。ここ出身なんでしょ?」
「ええ!? この流れでそれは酷くないですか!? 僕も一緒に行かせてください!」
ミルの突然の裏切りに、慌てて同行を頼み込むアルト。
そんな二人にくすりと笑い、本当にこの人達に助けられて良かった、と奇跡を噛みしめるフランシスカだった。
そんな三人の様子を、クリスは微笑まし気に見つめていた。
その口から小さな呟きが漏れる。
「フランに渡した装備、全部俺の所持品なんだけど……まぁ、別にいいけどよ」
『苦労しとるのう、父上』
空気の読める男、クリスの愚痴を聞いたのは、首元に巻き付いているタマモだけだった。
これで二章完結とし、次話から三章になります。
それに伴い、少し書き溜めと入れたかった閑話の執筆に入りますので、これまで一日一話で投稿してきましたが暫く時間を空けたいと思います。ご了承ください。
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