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脱いだらすごいんです


 あたしが、目を焼く閃光と耳をつんざく破裂音に飛び出すと、すぐそこに天使様がいた。

 寝ながら見た天使様はとても大きく見えたけど、服のサイズからも分かるようにあたしのほうがずいぶん背が高い。


 こちらを見る天使様に今の音は何事か聞いてみるが、今ひとつ反応が鈍い。

 あぁ、音で耳をやられていたのですね。少しすると回復したようで、普通に会話ができた。

 天使様でもそういう事あるんだ。


 ……というか、この子は本当に天使様なんだろうか。

 この世のものとは思えない美しい容姿に、空から降りてきた姿。そして家屋の屋根ごとオークリーダーを蒸発させた攻撃――だと思う、多分――に、天使様だと思っていたけど。こうして落ち着いてみれば……やっぱり天使に見えるけど。常識的に考えれば人間だと思う。


 あたしが知る限り、天使って教典の中だけの存在で実在を確認された事はないはずだ。

 確認されていないから実在しないとは思わないけれど、天に限りなく近い存在の初代聖王アリア様をして、天使に会ったことがないと書物に残しているので、かなり実在は怪しいと思われる。実在したとしても相当に貴重で希少な存在なのだろう。


 その天使様があたしを助けるために降臨された?

 黒くて不吉な小汚い田舎娘を? ないでしょ。

 変な話だけど、そう断言できるだけ自分の価値のなさに自身がある。

 あたしが特別なんて自惚れる要素が、これまでの人生で欠片もあっただろうか。いや無い。


 それを踏まえて考えれば、目の前の人知を超えた白く美しい少女は人間ということになる。

 うん。理論的に考えればそうだろう。自分の推測と価値の無さに自信を持とう。


 天使様の話を聞いていたら、天使様がもう一人追加された。


 推測と自分の価値の無さに、いきなり自信がなくなった。

 あれ? 私ってもしかして特別なの? 天使様が二人も降臨するほど?


 いや、いやいやいや落ち着けあたし。この人も人間、きっと人間。

 絶世の美男子で、超高威力の魔法を使い、天使様のように可愛らしく美しい少女の旦那様らしいけど、たぶん人間。

 ……人間、かなぁ?


 求められたので、あたしの身の上話をすることになった。

 ひどく詰まらない話なのに、小さい方の天使様ことミルノワールさんは親身になって聞いてくれ、あたしの為にその美しい顔を歪ませ泣いてくれた。


 その涙に、あたしの心がどれほど救われたことか。

 純粋な涙があれほど美しく、心を軽くしてくれると、あたしはその時初めて知った。

 うん。この子は天使様だ。

 体は人間でも、その心の有り様は天使様に違いない。


 あたしの身の上を心配してクリスタールさんと言い争いをしてくれるのはありがたいけど、これ以上迷惑はかけられない。

 知人の亡骸の回収と、アダムヘルへ連れて行ってもらえれば、あとは自分で何とかします。

 

 心と身体を助けてもらった恩は必ず返します。一生かかってでも。




 オークの村の入口に着くと、馬が元気に嘶いていた。

 腰を抜かしたと聞いたけど、問題なさそう。結構物事を引きずる方のあたしとしては、その立ち直りの早さは羨ましい。


 馬に乗るにあたり問題が発覚。騎手が足らない?

 馬を引いて歩くならあたしが! 命の恩人にそんな事させられません!

 というか騎手を出来るのがクリスさんだけなのに何故馬が二頭?

 まさか他にもパーティメンバーが居たけど亡くなったとか?


 あたしが不安になっていると、後ろから声をかけられた。

 振り返るとそこにあたしと同い年くらいの男の子がいた。……うん、美少年。だけどなんだろう。この世のものとは思えない美貌を連続で見たからか、普通の人に見える。いや、すごい美少年だけど、まだ常識範囲内のすごい美少年。なんか安心する。


 え? パーティメンバー?

 どういう事? もう一人パーティメンバーいるなんて聞いてないよ。


 二人を見ると、すごい勢いで目をそらされた。

 ……あぁ、うん、何か察した。この男の子には優しくしてあげよう。


 結局、あたしとアルト君、ミルさんとクリスさんで馬に乗る事になった。

 あたしがクリスさんと乗るのを遠慮した。と言うか、恐れ多くて無理。人間って分かってても無理。

 そしてミルさんがクリスさんを希望し、この形で落ち着いた。


 このペアが決まったときの、アルト君の残念そうな顔ったらもう。

 ミルさんを見つめる視線で全部分かる。素直なのは良い事だと思うけど、顔に出過ぎじゃないかな。


 そして、人妻に手を出すとか正気? しかも相手はクリスさんだよ? あの二人のまるで十数年を連れ添ったかのような仲の深さ分からないの? まだ出会って一時間くらいだけど、まるで同性を相手にするようなお互いの遠慮の無さに、相手への絶対の信頼があるのを感じないの?


 あたしもああいう関係いいなぁって思うけど、割って入ろうなんて絶対に思わない。

 

 この子には優しくしてあげようと思ったけど、前言撤回。アダムヘルに着くまでにしっかりと真意を聞いて、どうするか決めよう。

 命の恩人が迷惑するようなことは、このあたしが許さないんだから!




■◇■◇■◇■




「むぅ。何で僕は騎乗(ライド)スキルのある職を取らなかったんだろう」


 帰りの馬上、たっつんの前で僕はぼやいた。


「うん? そりゃ単体火力を追い求めた結果だろ。大体、地上を走る乗り物系より自分の足のが早いんだから必要ないって豪語してたのはどこのどいつだ?」


 僕のぼやきを拾ったたっつんの声が上から聞こえる。この状況だとほとんど真上から声が聞こえるな。


「そりゃそうだけどさぁ。こんな状況想定してないじゃん。騎乗スキルあったらフランちゃんときゃっきゃうふふの楽しい帰路になったのに」

「しらんがな。効率厨の自分を呪え」

「ぶー。あぁ、あのキラキライケメンオーラにやられて、馬を降りる頃には足腰立たないくらいメロメロになってたらどうしよう」

「行きのお前じゃね。乗り物酔いとケツの痛みで生まれたての小鹿みたいになってたの」

「プラスイケメン酔いね。往路二時間イケメントークスペシャルはちょっともう無理」


 思い出しただけでもげんなりする。


「お前の中のイケメンって最下級の罵倒かなんかなん? つかイケメンっつったら俺も相当だと思うが、俺はいいのか?」


 その言葉に真上を見ると、丁度こちらを見ていたたっつんと視線がぶつかった。

 ……うん、超イケメン。見れば見るほどイケメン。リアルたっつんの顔もイケメンだったけど、それとは別次元の現実離れしたイケメン。普通、これほどのイケメンだと僕のハートが拒絶反応を起こすんだけど。


「何かたっつんの顔は大丈夫。だってたっつんだし」

「……さよか」


 急にそっぽを向きぶっきらぼうに言うたっつん。あ、照れてやんの。ちょっと顔を赤くするほど照れるって珍しい。ははは、何か優越感。


 そういえば、出発の時にサービスしようと思ってたっけ。


「ふふふ、そぉい」


 横座りのまま、後ろのたっつんをぎゅっと抱きしめてみる。ふふふ、美少女のハグやぞ。嬉しかろ。もっと照れて僕を楽しませろ。


「……何の真似だ?」


 上からものすごく冷静な声が降ってきた。あれぇ? さっきのチョイ照れがツンドラになってるんだけど? 温度差激しくない? 急にそんな冷静になられると逆に僕の方が恥ずかしいんだけど!?


「ふ、ふふふ。美少女の抱きつき、う、嬉しいでしょ」


 あかん! 僕が照れてどうする!? 頑張れ僕! ここで照れたら負けだ!


「顔赤いぞ。あと当たってるぞ」

「あ、当ててんのよっ」


 ぐぬー。こっちが望むセリフをくれる所は流石だけど、違うんだ。そうじゃないんだ。僕がからかう側なの!


 ていうか抱き着いて分かったけど、ゆったりとした神官服の下すごいマッチョ。超細マッチョ。シックスパック。やばいナニコレ同じ男として嫉妬する。


「うお!? 腹さわさわすんな、くすぐったいわ!」

「うわぁやばい、すごい、なにこれカタイ、すごいやばい」

「語彙の低下ひでぇなおい!? ってだからさわさわすんな! 落とすぞ!!」




■◇■◇■◇■




「……あれを見て、まだ頑張る気ですか?」


 前を歩く馬の上でこれでもかとイチャイチャする二人を指さし、そう問うあたし。見ているこっちが恥ずかしくなるほどのイチャイチャっぷりだけど、そこんとこどう思ってるの?


「頑張るって、何の事だい?」


 ぽつぽつと当たり障りのない世間話をしていた最中の唐突なあたしの問いに、アルトは目を白黒させて驚いた。


「とぼけないで。ミルさんの事が好きなのでしょう?」

「っ!? ……まいったな。僕ってそんなに分かりやすいかな?」

「初対面5分で気付くくらい。具体的に言うと、ミルさんの事ずっと目で追っているし、すごく話しかけたそうにうずうずしてるし、話しかけたら顔が赤くなるし、すごく嬉しそうだし―――」

「わっ、分かった、うん、分かりやすいのはすごく理解したよ。だから恥ずかしいから列挙しないで……」

「そう? じゃぁさっきの質問に答えてほしいのだけれど、アレを見てまだ心が折れないの?」


 未だにイチャイチャを続ける前の二人。バカップルは目の毒だけど、見た目が良いから天使の戯れに見える。ミルさんすごく幸せそうだし、クリスさんは困ってるけど受け入れてる感がすごい。大人って感じ。憧れるなぁ。あたしは間に割って入ろうなんて思わないけど。


「……いやぁ、嫉妬しないと言えば嘘になるかな。いつかあの位置に僕が居たいとは思うよ」


 苦笑して頬を掻きながら羨ましそうにクリスさんの背中を見るアルト。

 ふむふむ。会ってまだ一時間と経っていないけど、少しの会話で大分この子の人柄が見えてきた。


 この子と言っているけど、あたしより一つ年上らしい。つまり今年で成人した立派な大人と言う事だ。

 その割に世間ずれしていないというか、素直過ぎて危なっかしいというか……前の二人もそうだけど何かこのパーティ浮世離れしてない? あたし村からほとんど出ずに生きてきて、外の事なんて今は亡き師匠と行商人のおじさんの伝聞と本でくらいしか知らないけど、もうちょっと強かに生きるもんじゃないの?


 あなたたち、あたしの村じゃ三日で食い物にされて一週間で奴隷になるよ。間違いない。

 ……それってあたしの生まれた村の民度が最底辺だったって事なんじゃ。……うん、考えない事にしよう。

 都会に行けばきっとあたしが安心する性根の腐った悪人もいっぱいいるはずだ。世界の全ての人々がこの人達みたいにいい人なら、世界は平和なのかなぁ。


「あれを見てもそう言えるのは大したものだけど……あの二人がすでに結婚しているのは知っているのでしょう?」

「うええええぇぇぇ!?」


 驚愕に目を見開くアルト。あれ? 知らなかったの? あんなにラブラブで結婚指輪までしてるのに。


「結婚指輪見えなかったの?」

「えぇぇ? だってミルさんはまだどう見ても成人前でしょう? 成人しないと結婚は出来ないし、成人前の男女で婚約指輪を贈り合うのは貴族の間では結構あるから、あの指輪もそういったものなのかと……」


 あぁ貴族ってそうなの? これはあたしの見識不足だった。田舎の村じゃそんな風習無いからなぁ。

 でもそれを知ってるってことは、アルトも貴族出身なのかな? 冒険者やってるなら長男ってことはないから貧乏貴族の三男くらい? 貧乏ってとこに親近感が湧く、まぁいくら貧乏でも物乞い一歩手前のあたしと一緒にされるのは不本意だろうけど。そんな事をつらつらと考えていたら、アルトの次の言葉にあたしは驚愕した。


「そっか……そうだよね。冒険者をしているんだから当然成人してるか。僕としたことが完全に舞い上がってたみたいだ」

「え、ちょっと待って。もしかして冒険者って成人しないと成れないの?」

「うん。そうだよ」

「どうしよう。あたしアダムヘルで冒険者をしてお金を貯めようと思ってたんだけど……あたし成人して無いから冒険者できない」

「あー……ええ!? 君って僕より年下だったの!? てっきり同い年か少し上くらいだと」


 これは老けて見えると貶されているのか、それとも大人っぽく見える褒められているのか。

 主食がモンスター肉だったからか、あたしの背は同年代と比べても少し高めだ。だが、アルトも同年代に比べて背が高い方だし、あたしよりも大きいのに、なぜあたしの方が年上だと思ったのか。やっぱりあたし、老け顔なのだろうか。ちょっとショックだ。


「老けててごめんなさいね。生憎と今年数えで14ですよ」

「いや、受け答えがしっかりしてるからてっきり年上かと……って数えって事は実質13歳じゃないか! 僕より二つも下なのか」


 とても驚いているところ悪いけど、アルトとの年齢差なんて今は興味ない。そんな事よりも。


「アダムヘルに着いてからどうやって生活しよう……」

「普通にウエイトレスとかの接客業をしたら?」

「村でほぼ居ないモノとして扱われてたあたしに接客能力を求められても困る。表情筋を動かさない生活が続いてて愛想笑いとか超苦手」

「ええっと、何というか返事に困る内容で言葉がでないんだけど……」

「別に今は逃げれたし生き残れたから気にしてない。過去よりも未来が大事」

「そのポジティブさ素晴らしいと思うよ」


 あたしの断言に感心したように頷くアルト。実際はそこまで割り切れていないけど、言葉にするのは大事だ。言葉にしていれば、それが現実になる時も来ると思う。

 あたしの内心に気付かず、アルトは言葉を続けた。


「まぁ別に冒険者が絶対に出来ないって事は無いと思うよ。実際に年齢のはっきりしない孤児が冒険者をする場合は年齢なんて自己申告でしか出来ないし、それで冒険者をしている人も多いからね。君の見た目と雰囲気なら、問題なく冒険者に成れると思う」

「本当に? それなら助かるな」

「僕としては、普通の仕事もいいと思うけどね」


 アルトはそういうが、聖王国立ソレイユ学校で特待生をする予定のあたしとしては、入学までにできるだけレベルを上げておきたいのだ。

 金策とレベルアップを同時にできる冒険者はあたしにとってとても理にかなった職業なのである。成れるなら成らないという選択肢は無い。


 アルトが危険のない町中の仕事を薦めそうにしているのは何となく雰囲気で察したが、あたしにもあたしの事情があるのだ。問答しても相容れる話題ではない為、あたしは話を元に戻すことにした。


「えっと、何の話をしてたっけ? ……ああそうそう、ミルさんが成人に見えないという話だ。それはあたしも同意するけれど、成人が十五歳というのはアルレッシオ聖王国とサンクロイア王国だけでしょう。ディファルド連邦はもっと下だし、魔国ブリンガルは上。彼女たちはここではない別の国の出身じゃない?」


 あたしの話題転換にアルトはミルさんの話題になったからか特に疑問にも思わず、思案気に顎に手を添える。やっぱりアルトにとって、露骨にミルさんは特別なんだね。


「あぁ、確かに遠い国から来たと言っていたな」

「連邦出身なのでしょうか。獣人の国ですが人間の里が無い分けでもないでしょうし。しかし実力主義のあの国が、あれほどの戦闘力と美貌を持っている二人を手放すでしょうか? まぁ高ランクなら自由気ままに国を渡り歩く物なのかもしれませんが」


 一騎当千の冒険者はどの国にとっても宝だ。そう簡単に出国出来るものではないと言う。

 特に力にどん欲な気質の連邦が、実力者の出国を許すと言うのは違和感を覚えるが。


「いや、たぶんそれは無いよ。聖王国、王国、連邦、魔国の四ヵ国の冒険者ギルドのギルドランクは統一基準化されているから、四ヵ国内であればギルドランクは出国して他国の冒険者ギルドに登録しても引き継がれる。その割に彼女達のランクと実力に開きがありすぎるから、その四ヵ国以外から来たという線が濃厚だと思う」

「ちなみにあの二人のギルドランクはいくつなの?」

「今はDランク、明日にはCランクになるんじゃないかな。ちなみに昨日はFランクだったらしいよ」


 は? 意味が分からない。


「師匠に聞いていた話とずいぶん違いますね。普通どんなに優秀な冒険者でもFランクからCランクになるのに三年はかかると聞きましたが」

「その認識で間違いないよ。ちなみに三年でなれるのはけっこう優秀な人だね。普通で五年くらい。で、あの二人がそんな一般的な枠にはまる人達に見える?」

「見えない」


 即答した。あの人たちは壁を乗り越えるんじゃなく、人型の穴を開けながら全力で走り抜けるタイプだ。むしろ壁があったことにすら気付かないまである。


「でしょう? すごいよね。アリア様みたいだ」

「不敬です、と言えないものがあるなぁ。あたし、ミルさんがアリア様の再臨だと言われても素直に信じれるかも」


 初代聖王アリア様も、今ほど規格化されていない冒険者ギルドで、その類まれな戦闘力とカリスマ性で数年でSランクに上り詰めたというけど、それを彷彿とさせる、いやそれすら凌駕しそうな夫婦の存在感をひしひしと感じた。

 あたしって神頼みして事態が好転した事が皆無だから宗教って全然信じてないけれど、それでも神がかってる人たちだと思う。私はもしかして、すごい人物に助けられたのかもしれない。


「案外、再臨と言うのも的外れではないかもしれないよ」

「というと?」


 あ、目を逸らした。この子何か知ってるっぽい? いや気付いた感じかな? でもそれはあまり人に言えない事と。

 その情報がアルト本人の知識と推測によるものなのか。誰かから伝え聞いたものなのか。

 いち田舎娘の私が知らない情報なんて山ほどあるだろうけど、ことアリア様に関して一番情報量が多いのは聖王国王侯貴族とアリア教上層部なのは周知の事実。未だに再臨を信じて【全ての始まりの祭壇】を守護しているというのは田舎娘でも知っている有名な話だ。


 そういう一般公開されていない情報を持っていると言う事は、アリア教の上層部員……には見えないから、あれ、もしかしてアルトって結構上の方の貴族様? しかもそういった情報を与えられているのなら長男の可能性が高いんじゃ? 貴方こんなとこで何してるの?


「一体何者なんだろう」

「ホントにねぇ」


 真剣な顔で頷くアルトに、いや君もだよ。と思った。




■◇■◇■◇■




「なぁミル。そういやフランシスカを診た時なんだがな」

「診た時? あぁ初対面で【鑑定】してた時か。ナチュラルにプライバシーを侵害するあたりたっつんてばレベル高いイケメンだよね」

「ナチュラルにディスってくるじゃねぇか。お前、平穏な明日の朝を迎えれると思うなよ」

「あ、エロいことは起きてる時にお願いします」

「しねぇよ! クソ、こいつのそういうメンタル強すぎてこっちばっかりダメージ受けやがる。話を戻すぞ」


 そろそろアダムヘルに着こうかと言うときに、たっつんが思い出したように話しかけてきた。

 ちなみに今の僕の態勢は、たっつんの首に手を回してぶら下がるセルフお姫様抱っこ状態である。

 たっつんの腹筋と胸板を堪能しすぎて治療ヒールをして貰えなくなったためだ。解せぬ。お尻痛い。


「えっと何の話だっけ? たっつんが美少女にここまで抱き着かれてもピクリとも反応しないゴッリゴリのホモって話だっけ?」

「自分の身の危険を顧みない見事なディスりっぷりだな。むしろ反応したらドン引きするだろうに。そして俺もお前に反応したらドン引きするわ。

 そうじゃなくてだな……つか暑苦しいから離れろよ」

「やだやだ治療ヒールしてくれるまで絶対に離れないんだからぁ!」


 断固拒否する! 僕のお尻は徹底抗戦の構えである! 全身全霊を持ってマイプリっケツを堅守するものである!


「自分で治療ヒールしろよ……」

「その手があったか!」


 しまった普段しないから忘れていた。特に近くに回復役(あるくポーション)が居るとついうっかりってあるよね。てへぺろ治療(ヒール)


「いつもとルビが違う気がするんだが」

「ルビまで読まんといてっ!」


 以心伝心が捗り過ぎてツライ。


「ホントに話を戻すとな、フランシスカを見た時に見慣れない表示があったんだ」

「へぇ、どんなの? ……まさか病気とか?」

「いや病気や怪我ならその場で治す。何か【神の恩恵(ギフト)】って項目でな。昨日千人近く人を鑑定したが、初めて見る項目だった」

「ふむふむ。レアスキルかなんかかな? 少なくとも千分の一ならかなりレアだよね。項目ってことは詳細っていうかスキル名とか表示されてたの?」

「あぁ、三個もあった。上から『魔導の申子(もうしご)』『賢者の卵』『天賦の才』」


 何それすごいっぽい。


「……わぉフランちゃんってばチートキャラ? 覚醒する地味っ子ってなんかテンション上がるね!」

「ちなみに後で確認したがアルトも持ってたぞ。『剣の申子』『勇者の卵』『導きの主』」

「うっわ中二病? イケメンでチート持ちとかテンション下がるわぁ。将来ベッドの上で転げまわればいいのに」

「お前、手のひら返し過ぎてそろそろ手首取れるんじゃねぇの」


 僕は素直な美少女なのだ。自分に嘘は付けない。

 僕のブレなさに呆れ顔のたっつんだけど、僕とイケメンが相容れることなど太陽が西から登ってもないのだ。そんな僕の様子に処置無しとでも言う様に溜息を吐いたたっつんは、チラリと後ろの二人を振り返り、真剣な顔で僕に問うた。


「んで、あの二人何者だと思う?」

「さぁ? 主人公かなんかじゃない?」


 

 あっ勿論主人公はフランちゃんの方でお願いします!






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