表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第十四章 エルフ族編
420/1180

第四百二十話  謎解き

「私がレイラを殺したなどと……。何を証拠にそんなことを言われるのか。返答次第では容赦しませんぞ!」


オルトーが目を吊り上げながら、怒りをあらわにしている。だがシディーは、全く表情を変えずに彼を眺め続けている。


そのとき、エルフ王がスッと立ち上がり、手で何かを制するポーズを取った。ミークも目をキョロキョロさせている。どうやら、周囲のエルフたちがざわついているようだ。


「では、お尋ねします」


室内の混乱を鎮めるかのような、凛とした声が響き渡る。いつの間にかシディーが再び立ち上がり、部屋の中をゆっくりと見廻している。


「あなたは、確かに、レイラさんを殺してはいない。そう言われるのですね?」


「もちろんです! 我らエルフが同胞の命を奪うなど、あってはならないことです。レイラは私の部下に当たります。家族のごとく接してきた彼女の命を奪うなど、あり得ないことです。なぜ、そのようなお話をなさるのか、理解に苦しみます」


「では、なぜ私たちの命を奪うのですか?」


「これはまた、おかしな話をなさいます。何を証拠に、皆さまの命を狙っていると?」


「この料理には毒が入っております」


「ほう、何をもって毒が入っていると言われます?」


「ちょっとお待ちください」


シディーはそう言うと、懐の中に手を忍ばせた。だが、しばらくして、彼女の動きがピタリと止まる。


「……ない。……チッ、私としたことが。そうだ、ここに入るとき、全部没収されたんだわ」


明らかに彼女の表情が曇る。そして唇を噛みながら天を睨んでいる。……要は、この料理に毒が入っていることを証明すればいいのか? 


「エルフ王様」


俺の声を受けて彼はゆっくりと視線を向けてきた。シディーも驚いた表情を見せている。


「一つ、お尋ねします。この国で、エルフ以外の生き物はおりますでしょうか?」


「……何?」


「犬でも猫でも鳥でも……。何でもいいのです」


「……パスタム」


「パスタム?」


エルフ王は頷くと、スッと手を挙げる。すると、エルフの一人が戸惑いながら部屋を後にしていった。しばらくすると、籠のようなものを手に部屋に戻ってきた。


「……」


オロオロとしながら、エルフは俺たちの座るテーブルに、その籠を置き、そのまま去ってしまった。籠を開けると、中にはちょっと大き目な、ネズミのような生き物が入っていた。


「キューン」


パスタムと呼ばれた生き物は、かわいらしい鳴き声を上げたかと思うと、勢いよく籠から飛び出した。チョロチョロとテーブルの上を動き回っていたが、やがて、ピョンとシディーの皿に飛び乗ったかと思うと、モゴモゴと体を動かしながら、料理を食べ始めた。


パスタムは一心不乱に食べている。だが、突然体を震わせたかと思うと、いきなり仰向けになって倒れ、体を激しく痙攣させ始めた。その様子をじっと見つめていたシディーは俺に視線を向け、大きく頷いた。


「やはり、毒が入っていましたね?」


オルトーは拳を握り締めながら、わなわなと震えている。何か言ってくるかと思ったが、彼は突然姿勢を正したかと思うと、直立不動の姿勢でエルフ王に向き直った。どうやら申し開きをしているようだ。


「……決して、私が毒を入れたわけではないと弁明しておる。じゃが、父上は、今宵、そなたたちをもてなすように命じていたにもかかわらず、この失態はどういうことじゃと言っておいでじゃ」


ミークが小声で通訳してくれる。王とオルトーは睨み合ったまま微動だにしない。だが、オルトーの額には、汗が滲み出ている。かなり追い込まれているようだ。


そのとき、音もなく部屋の扉が開いて、数人のエルフが入ってきた。その中の一人は、まるでウエディングドレスのような純白のドレスを着ていて、一人だけ目立っている。彼女らは王をじっと見つめる。


「……母上」


ミークが一言呟いたかと思うと、彼女の目にはうっすらと涙が光っている。どうやら二人は、かなり辛辣な話をしているようだ。


「一つ聞きたい」


突然エルフ王が俺たちに話しかけてきた。予想外のことなので、かなり驚いてしまう。


「な……何なりと」


「その方たちは、ミークをこの里に送り届けること以外にも、何か、疾しい望みを抱いていたのか?」


「そ、そのような……」


「我らの同胞たちが、そなたたちからそうした邪念を感じ取ったと言っておる」


邪念? 俺たちを鑑定したのか? まあ、鑑定スキルを持った者ならエルフにはごまんと居るだろう。だが、そこそこのレベルであれば、対象者の過去を覗くことができるのだが……。であれば、俺たちに疾しいことなどないのはわかるはずだ。いや待てよ? 俺の張っている結界が、彼らの鑑定スキルを邪魔しているのか。だから、雰囲気しか掴むことができなかったのか。だが、そうは言っても、邪念というのが腑に落ちない。一体何のことを言っているのだろうか?


「それにつきましては、ご説明申し上げます」


シディーのよく通る声が聞こえる。部屋にいる全員の視線が彼女に集中していく。


「おそらく、それは私に原因があると思われます」


「何?」


「私は、この里に来るのを楽しみにしておりました。それは、エルフ王家が所蔵しているエクスカリバーを見たいと思っていたからです」


王の眉毛がピクリと動いた。だが、シディーは全く意に介さずに、さらに言葉を続ける。


「私はドワーフ王の娘でございます。父から鍛冶師としての手ほどきを受けております。我らドワーフに取りまして、伝説の名剣と言われるエクスカリバー、それを超える剣を生み出すことは悲願でございました。ですが、その剣は誰も見た者がなく、切れ味など、調べたくても調べられない状況でございました。しかしこの度、ミーク姫を伴ってエルフの里へ行くことが許されたのです。鍛冶師として、エクスカリバーが見たいという思いは抑えることができませんでした。ご無礼の段、平にご容赦ください」


そう言って彼女は腰を折る。だが、王妃はシディーとエルフ王を交互に見ながら、何かを伝えている。


「邪念がある、という曖昧な感覚でございましょう? 明確な殺意があるわけでなし、何かを企んだという証拠があるわけでなし、単なる雰囲気と感覚だけで、我々の命を奪うのですか? 鑑定されるのであれば、なぜもっと詳しく鑑定されないのでしょうか?」


突然のシディーの指摘に、王妃は虚を衝かれたような表情を浮かべ、やがてゆっくりと俺たちから目を逸らせた。


「王妃様、なぜそこまで私たち、ましてや娘でもあります、ミーク姫を毛嫌いなさいます? いえ、言わなくともわかります。全て、オルトー様のお話を信じていらっしゃるのですね?」


シディーの言葉に、王妃がガバッと顔を上げ、驚いたような表情を浮かべている。シディーは真剣な眼差しを王妃に向けていたが、やがてゆっくりと頷くと、再びオルトーに向き直った。


「これでようやく全ての疑問が解けました。オルトー様、ミーク姫を、我々をこの城に招き入れたことから、レイラさんの死、そして、私たちの殺害まで、その全ての計画を考え、実行していたのは、あなたですね? この一連の事件の犯人は、あなたです!」


シディーがピッと右手でオルトーを指さす。彼の表情は真剣そのものに変わっており、これまでのような柔和な雰囲気は微塵もなかった。


「おそらく、あなたは、エルフ王様に何の相談もなく、独断でこの計画を進めていましたね? 実に周到に練り上げられた計画でした。ですが、惜しいことに、あなたの計画は完璧すぎました。実に惜しかったですね」


「……言わせておけば、何と無礼な。では、証拠はあるのですか?」


「いいでしょう。それでは、これまでのこと、お話し致しましょうか」


そう言って彼女は、傍に置かれたグラスをヒョイと持ち、ゴクリと喉を鳴らして水を飲みほした。その目は爛爛と輝き、小さな体から発する雰囲気が、神々しいものに変わっていた……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ