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結界師への転生  作者: 片岡直太郎
第三十四章 失敗からの創造編
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第千百二十九話 回りくどい話をされたゾ!

思わず、何て、もう一回。と聞きなおした。兵士は正門前に、クリミアーナ教国教皇、ヴィエイユさまがお見えですと繰り返した。


きっと本人だろうなと直感した。兵士に、こちらに通してくれと命令する。しばらくすると、兵士に先導されてヴィエイユ本人が入ってきた。俺は思わず大きなため息をつき、引率してきた兵士を下がるように命令した。


「……何しに来た?」


俺の質問に彼女は、申し訳なさそうな表情を浮かべたまま何も答えない。いつもの彼女なら、ご挨拶ですねぇ、などと言って、ペラペラと愚にもつかない話をするところだが、どうやら今回はいつもと様子が違う。


「だから、何をしに来たんだよう、お前は」


「お詫びに……」


「お詫びぃ? また一体、何をやらかしたというんだ」


「申し訳ございません」


彼女はそう言って深々と頭を下げた。まったく意味のわからない俺は、あきれた表情で口を開く。


「一体、どういうことか、説明しろ」


「はい、実は……」


話を聞いて驚きを通り越して呆れてしまった。何と、勅使を間違えた、と言うのだ。いま、勅使としてアガルタに逗留しているのはフラレシという男だが、本来は、フラレスという男が勅使に立つ予定だったのだそうだ。一体、どこでどう間違えたのか、と彼女は首をかしげているが、俺から言わせると、知らんがな、の一言に尽きる。そういうことは、そっちでやりなさいよと言う外はない。


「話はわかった。じゃあ、取り敢えず、フラレシさんを連れて、帰っていただけますか」


俺の言葉に、ヴィエイユは驚いた表情浮かべる。


「ご挨拶ですわね」


「出たよ」


「何が、でしょうか」


「お前のことだ。それ、わざとやったんだろう?」


「何の話でございましょうか」


「フラレシという、ちょっとおしゃべりが苦手な男を敢えて使者として立て、そのあとでお前が、エライすみませんでしたと言って謝りに来るという作戦だろう? フラレシは見たところ、不器用ではあるが、悪い奴ではない。ヤツが俺の前でしゃべったのは、あれはある意味でクリミアーナ教国の、ヴィエイユ、お前の本音だろう。ああいう奴にズケズケと物を言わせておきながら、さりげなく自分たちの本音を伝えておいて、あとで、失礼なことを申しましたと言って詫びに来る。そこから、イヤ実はですね、と言って本題の交渉を始める。そういう段取りなんだろう?」


「ホホホ、ご慧眼でございますわね」


「うるせぇよ。しかも、来ようと思えば直接俺の許に来ることができるにもかかわらず、わざわざアガルタの都の正門から来るとは、ずいぶん念の入ったことだ。後学のために聞いておきたい。そのこころは、なんだ?」


「そうした方が、私の話をお聞きになる、と思ったからです」


ヴィエイユは満面の笑みでそう答えた。イヤな女だと心の中で呟く。


「正門で所定の手続きを済ませて、兵士に案内をさせて俺の許に来ることで、俺が話を聞く、というのは、よくわからないな。そもそもよくそれで俺の許にたどり着けると思ったな」


「実際に、たどり着いております」


「どうやって、兵士たちの眼をかすめたのだ」


「何もしておりません。ただ、教国が発給した身分証明書と、私が自らしたためた書状をお見せしただけです」


「何じゃ、そら」


「確かに、門を警備されていた皆さまは一様に驚いていらっしゃいましたが、私の持ち物、提出しました書状は嘘偽りのない本物でございます。その点のご理解が早くて大いに助かりました。また、こちらまで案内をいただいた方も、実に丁寧で、また、よく訓練されておいでで、見事でございました」


「お褒めに預かり、恐縮……と言いたいところだが、なんでそんなに回りくどいことをする。直接来ればいいじゃないか」


「ではアガルタ王様は、私が突然現れましても、平静でお話をお聞きいただけるのでしょうか」


「そのつもりだが」


「で、あれば、これは私の不徳の致すところでございました。重ねてお詫び申し上げます。私が想像しましたのは、直接お訪ねしますと、まずは驚かれて、一体何をしに来た! と仰り、今は仕事中だ。終わるまで待て、と仰って兵士を呼び、有無を言わずに私を迎賓館に案内されるのではないかと思ったのです」


「それでいいじゃないか。迎賓館でゆっくり寛いでくれればいいんだ。まあ、いきなりそういう話を持って行くと、館長のミンシが怒るが、相手がお前だったら、大目に見てくれるだろう」


「私も、そうしたいのはやまやまですが、そうも言っていられない事情がございまして」


「何だよ。それならなおのこと直接来て話をすればいいだろう。なんでこんなに回りくどいことをするんだ?」


「そうした方が、最短で物事を決することができると考えたからです」


「で、決めたいこととは、何だ? 水処理施設のことか? その件であればお断りだ。我が国は、今のところ、クリミアーナの協力は必要としていない」


「その件ではございません」


「ああん?」


「私が参りましたのは、この先に起こる戦闘のことでございます」


「戦闘ぉ? 一体、何の話だ」


俺の問いかけに、ヴィエイユは真剣な表情を浮かべた。本当に、コロコロと表情を変える奴だ。


「我が教国の内部の恥部を詳らかにするようで恐縮ではございますが、我が教国に従う国々の間で、アガルタに臣従している国に対して、侵攻する計画がございます」


「ほう、どういうことだ」


「しかもそれは一つや二つではございません。いくつかの地域で同じような計画が持ち上がっております。言わば、アガルタはこの先、多方面の敵と対峙する場面が訪れます」


「……」


「我が国の若い枢機卿らが独断で行動しているようでございます。これは、私の統率力の至らないところでございます。まずは、お詫びを申し上げます」


「そんなの、お前の命令一つで、何とでもなるんじゃないのか。何といっても、クリミアーナ教国の教皇だろう」


「むろん、停戦命令は発しております。ただ、それらの国は私の命令を無視して動いております」


「だったら、討伐すればいいじゃないか。得意だろう、お前さんの国は、そういうことが」


「そういたしたいところではございますが、なにより場所が遠方にございますのと、予想以上の数に上りますために、わが軍も兵を分散させねばなりません。さらには、わが軍が赴いたとしても、敵が侵攻する速度の方が早いと存じます。そこで、相談なのでございます。わが軍は、侵攻する国ではなく、アガルタへの援軍として派遣したく存じます。その点をお許しいただきたいのでございます」


「許すも許さないも、お前さんの属国がお前さんの命令を無視して派兵してきた。それをお前さんの兵が討伐する。言ってみれば当たり前のことだ。俺が許す云々の話ではないだろう」


「いいえ。わが軍が敵とみなされて攻撃されぬように、お願いをしたいのです」


「なるほど。要は、反逆者たちの侵攻に対して、クリミアーナ本軍が討伐するということかな?」


「左様でございます」


「ヴィエイユ」


「はい」


「お前さん、少し、年を取ったかな? 以前のお前ならば、そんなことはしなかったはずだ」


「どういうことでしょうか」


「そんな見え透いたことをせずに、もっと秘密裏にコトを進めたはずだ、ということだ」


「……お言葉の意味が、わかりかねます」


「どうして、反逆した国を直接攻撃しない?」


「ですから、先ほど申し上げた通り……」


「その国々はアガルタの属国に向けて軍を発しているんだろう? いわば、もぬけの殻じゃないか。そこに軍をすすめた方が効率的に討伐できるんじゃないのか?」


……ヴィエイユの顔に、少し赤みがさしていた。

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― 新着の感想 ―
今、主人公やヴィエイユ達は何才なんでしょうか?作中の時間経過が分かりにくい(><)
更新ありがとうございます。 >お前さん、少し、年を取ったかな? ヴィエイユもそういう歳になったか…
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