↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タコの捕食譚 ~喰らった獲物の力を八本の足に宿して~  作者: SN
第一海域・岩礁海

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/16

1本目【タコ×細身小魚】


暗く、狭い。


けれど、小さなタコにとっては落ち着く場所だった。


岩と岩の隙間へ柔らかな身体を押し込み、周囲の岩肌に合わせて体色を変える。

目の前を何匹かの小魚が泳いでいったが、追いかけようとはしなかった。


あれは速い。

捕まえられない。


腹は減っているが、岩陰からむやみに出るつもりはなかった。

外には自分より大きな生き物がいくらでもいる。

少し前にも、岩場の向こうを大きな魚が通っていった。


見つかれば、食べられるのは自分だ。


タコは岩に紛れ、食べられそうなものが近づいてくるのをじっと待った。

腹が減っても、焦って外へ出ない。

それが、この岩場で生き延びるために覚えたことだった。


しばらくすると、一匹の細長い魚が岩陰へ入り込んできた。


小さい。


タコは身体を動かさず、体色も岩と同じまま保った。

魚はこちらに気付かず、岩についた小さな生き物を啄みながら少しずつ近づいてくる。


タコはじっと待った。

魚が足の届くところまで近づいた瞬間、一本の足を伸ばす。


魚が驚いて身を翻した。

だが、逃げ切る前に二本目の足が身体へ絡み付き、続いて三本目、四本目が伸びた。

吸盤が鱗へ張り付き、何本もの足で獲物を包み込む。


魚が激しく暴れた。


引っ張られた身体が岩へぶつかる。

鋭い痛みに身体が縮んだが、足は離さなかった。


タコは身体を押し付けるようにして、さらに締め付けた。

魚の暴れる力が少しずつ弱くなり、やがて動かなくなる。


それでもタコはすぐには食べなかった。

足で押さえたまましばらく待ち、魚が動かないことを確かめてから身体を寄せた。


柔らかな部分へ口を押し付け、齧る。


その瞬間だった。


何かが魚の身体から抜け出し、そのまま口を通ってタコの中へ流れ込んできた。

タコの身体がびくりと震える。


ッ!


驚いて魚から口を離した。

身体の中を探るように、じっと動きを止める。


何かがいる。


さっきまではなかったものが、自分の中に入っている。


痛くはない。

熱くも、冷たくもない。


けれど、知らないものだ。


タコはしばらく固まっていた。

その時、ふと頭の奥が少しだけ澄んだ。


何かが大きく変わったわけではない。

ただ、さっきまでより水の流れや岩の形が、少しだけはっきり感じられる。


何が起きたのかは分からない。


身体の中には、まだ違和感が残っている。

けれど、嫌な感じはしなかった。


それよりも、腹が減っていた。


タコは目の前の魚へ身体を寄せ、もう一度齧り付いた。


今度は何も起こらない。

柔らかな肉が口へ入る。


美味い。


それだけで、さっきまでの驚きは少しずつ薄れていった。


タコはそのまま夢中で食べ続けた。

肉を齧るたびに腹が満たされ、先ほどの奇妙な出来事も次第に気にならなくなっていく。


やがて、硬い部分だけを残して食べ終えた。

タコは魚から身体を離した。


そこで、一本の足が変わっていることに気付いた。


他の七本よりも僅かに細く、しなやかになっている。

さっきまでは、こんな足ではなかった。


タコは試しに動かしてみた。


足が鋭く水を切った。


速い。


もう一度、少し離れた岩へ向けて伸ばす。

今までよりも遠くまで、一気に届いた。


タコは何度か足を動かした。

伸ばすたびに、他の足よりも素早く遠くへ届く。


気に入った。


何が起きたのかは分からない。

けれど、この足なら前より獲物を捕まえやすい。


それで十分だった。


しばらく動かした後、タコはその足の奥へ意識を向けた。


いる。


さっき身体の中へ入ってきたものが、今はこの足の中に収まっている。


気になる。


タコはそっと触れてみた。

舐めるように意識を向ける。


その瞬間、身体の奥へ奇妙な感覚が広がった。


魚の肉とは違う。

腹も膨れない。


それでも、美味い。


タコはもう一度触れた。

細く伸びるような不思議な味が、身体の奥へ広がっていく。


やっぱり美味い。


タコはさらに何度か触れ、その味を楽しんだ。

触れるたびに同じ味が広がり、少しも減る様子がない。


もっと欲しい。


タコは岩陰から少しだけ身体を出した。


すぐ近くを、一匹のカニが横向きに歩いている。

硬そうな甲羅に、二本の鋏。

動きはそれほど速くない。


タコは新しく変わった足を動かした。

それから、カニへ目を向ける。


食べたい。

あれは、どんな味だろう。


タコは身体を岩肌と同じ色へ変え、じっと待った。

カニはこちらに気付かず、岩についた何かを食べながらゆっくりと近づいてくる。


タコは速くなった足を、僅かに持ち上げた。


●細身小魚

特徴:

 細身で素早い。岩の隙間を泳ぐ

獲得能力:

 足が細長く、しなやかになる。伸びる距離と伸縮速度が上昇


【現在の八腕】

 一ノ足:細身小魚

 二ノ足:

 三ノ足:

 四ノ足:

 五ノ足:

 六ノ足:

 七ノ足:

 八ノ足:

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。