表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/39

33話 今この時こそ

「あ、もうニュースになってる」


 ワタルがスマホの配信アプリでニュース動画を見ている。


『速報です。先程エリンピット大森林にて出現したダンジョンが、黒の人形使いパーティーによって攻略されました。そして今度は魔術大国バロック王都中心部にてダンジョンの "気配"が感じられたとの事です。ダンジョンの管理担当者によると、ダンジョンは微弱ではありますが魔力を放っていると言う事で・・・・』


 管理担当のオジサンが青白い顔で汗だくになりながら走り回っている映像が流れる。


『王家は調査団の派遣を決定し、明日か明後日には公開出来るだろうと相談しています』


「ヨル兄さん、自信満々だね〜」


 ハルがニュースを聞き、飛行機の運転席で笑う。


「次は魔術大国、ハルの国だね」


 ワタルがスマホをバッグにしまいながら言う。


「いまからダンジョンいっちゃおう!」


 ユカリがダンジョンダンジョンと騒ぐ。


「今からはキツイな〜、少し休もうよ。僕疲れちゃった〜」


 ハルが苦笑いしながら言う。


「ハルはオジサンだからな。すぐ疲れちゃうんだよ」


 シオンがふざけて茶化し、


「僕はまだ "お兄さん!" だから!」


 とハルが不貞腐り、はははっ、と笑いが起こる。





 島が見えて来た。


 離れて見ると、まるで海に割り箸が突き刺さっているかの様にそびえ立っている。


 割り箸の天辺にワタル達の家がある。


 その隣に元アレス公国跡の島、現アレス島があり、海上ダンジョンの拠点となっている。


 島の着地エリアに着くと、ユカリがシオンを跨いで家に向かって駆け出した。


「いたい!」


 コンッ!とユカリの頭に何かが落ちた。


 地面に転がっている紫の小袋からは、ダイアモンドカットが施された赤い鉱石が見えている。


「おにいちゃん、ふくろがおちてきたぁ」


 頭を擦りながら袋を持ってワタルに駆け寄る。


「ああ、それソル兄さんの袋だね〜」


 そう言って小袋を受け取るハル。


 中から鉱石を出して魔力を注ぎ込むと、バァ!と目の前にソルの姿が映し出された。


『ハル、今すぐ帰って来い。でなきゃ殺す!以上!』


 映像はブツッと途絶えた。


「たぶんダンジョンの事かな」


 面倒臭そうにハルが呟く。


「ちょっと言って来るね」


 そう言ってハルは腰のバッグからドアノブを取り出し、空間に刺した。


 ノブを捻りドアを開けて、


「兄さん久しぶり〜」と消えた。


「ソーマ、きのダンジョンのことエミリアにおはなししたい!でんわしていい?」


 ユカリがスマホを持ってソーマに尋ねる。 


「勿論、話してやって下さい。きっと喜びます」


 ソーマが笑顔で答える。


「その前に中に入って手洗いうがいね。シオンはもう寝てるよ」


 ワタルが苦笑いして言う。





「相変わらず静かだね〜、この城。まるで誰もいないみたい」


 目の前の三つの玉座が並んだおり、真ん中に国王グレイ・ドーン。


 ハルから見て右にドワーフの王妃エカテリーナ。


 左にエルフの母、シルビアが座っている。


 黒を基調とした城内に淡い光が降り注ぐ。


 国王の頭上の壁に書かれている魔法陣が白く光っている。


 映像術式。


 国中の各地に設置した映写鉱石からは、現在の謁見の間の様子が映し出されている。


 その光景を国民達は固唾を飲んで見守っている。


「フッフ。お前達、相変わらずやりたい放題やってるな〜」


 長く白い髭を撫でつけながら父、グレイが声をかける。


「鍵はもう五つ目か」


「お前達は本当に魔王の封印を解く気か?」


「お前の母達は二百年前に家族を魔王軍に殺されている。生涯許す事などないだろう」


「その気持ちを知って尚、封印を解くか?」


 二人の王妃は重い面持ちでハルの返答を待っている。


「家族や仲間を殺された恨み。それが二百年前に魔王が戦を決意した理由です。彼等も我々を許す事など生涯ないでしょう」


「彼等はこの二百年、十分罰を受けてきました。それは現在も続いており、それをこの目で見ました」


「今こそ彼等は許される時、許すべき時。そして二百年前と同じ歴史を繰り返そうとしている我等の反省の時であると私は思います」


 ハルはハッキリと告げた後に少し身構えた。


 こんな事を言えば「殺す!」とソルがブチ切れると思ったからだ。


 見ると母親の横に立っているソルとルナが不機嫌そうな顔をしているが、特に何かリアクションを起こす事はない。


「はっは、そう身構えるな」


 ハルがソルの顔色を伺う様に肩を竦める様子を見て二人の王妃もクスリと笑う。


「魔大国との和解はあの時の会議で決まってはいたし、国民にも和解と受けいれを発表した。しかし一度王として明確な意思を国民に示す必要があると思ったのでな」


 国王が椅子から立ち上がり、両腕を広げて宣言する。


「私は彼等を受け入れる。共に手を取り、国を発展させたい。二百年前の戦争を体験したシルビアとエカテリーナも同じ意見だ」


「国民にもそうあって欲しいと思う。だが強制はしない。それぞれが考えた方法で彼等を迎えて欲しい」


 理解を示す者、恐怖心を露わにする者、国民達は再び大騒ぎとなった。




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ