29話 巨大樹ダンジョン解禁!
友達が大勢の人に囲まれ、石を投げられている。
その光景が信じられなくて、動けなくて、ただ見てる事しか出来なかった。
「ソーマがイジメられてる!」
ハッとして今にも駆け寄りそうなユカリを抑えた。
よく見たら人々の体から黒い煙の様な物が吹き出しているのが見える。
「ユカリ、あの人達の心を浄化できる?」
「?やってみる」
ユカリはリュックから聖女人形を取り出すと指示を出す。
「セイちゃんあのひとたちのココロをじょうかして」
聖女人形は両手を天に掲げ祈る。
緑色の光が人々を包むと、皆表情が和らいでいく。
石を投げていたのは皆長命種と言われる種族の人達で、昨日の事の様に攻めているけと、人間達は "二百年前の事なのに" と過去の事なのにと思っている。
あの戦争は、もう終わってる人もいれば、まだ終わってない人達もいるんだ。
家に帰るまでの道中で同じ様な光景を何度か目にした。
その度に浄化してみたものの、いつまで持つか分からない。
ハルにこの話はしなかった。
ソーマが話したがらなかったし、僕もシオンもその話をしたくなかった。
でも静かな空間で布団に入って寝ていると、知らない内に昼間の光景が目の前に広がって、気づいたら涙が流れていた。
僕が生きている内は解決しないだろう。
それほど大きな問題なんだと思うと凄く悲しかった。
「へー!!コレがタイタン!」
「タイタンは引きこもりでね〜。なかなか人前には出て来ないんだ!それが瓶に入っているなんて不思議な感覚だな〜」
ハルはワタルに渡されたタイタンをかれこれ二時間、隅々まで眺めている。
「もういい?それバッグに封印するから返して」
「も、もう少しだけ!」
このやり取りも五回目だ。
ピロンピロンピロンピロン!
スマホの通知音がけたたましく鳴り出す。
『エリンピット大森林に巨大樹現る!』
今度はエルフの森にダンジョンが現れたらしい。
「族長!"緑の座" に巨大樹が現れました。ダンジョンだと思われます。いかがしますか」
緑の座は広大な森林の中心に開いた草原地である。
エルフの族長、キース・グリスが答える。
「緑の座、のみ解放する。事前調査は要らない。それ以外の地への侵入者は誰であろうと排除せよ」
「は」
キースは失った右腕の痛みに顔を歪める。
「あの通知から数週間が経ったけど、みんな苦労しているみたいだね」
ワタルがスマホのニュースを読みながら呟く。
「そりゃぁな。ダンジョン解禁つったって、そこまでどうやって行くんだって話だろ」
金貨を数えながらシオンが言う。
「ダンジョンの周りをエルフ達が厳重警備してますからね」
「つぎのダンジョンいけないの?!」
人形達と遊んでいたユカリが振り向く。
「まぁ、爆速で飛行機飛ばせば問題なく着けると思うよ〜。君達なら」
コーヒーを飲みながら素知らぬ顔で言うハル。
「「「だよ」ね」な」
結果から言うと、アッサリ森を渡り、緑の座と呼ばれる草原地帯に降り立つ事が出来た。
ただ、いくら辺りを見回しても "ダンジョン" が見当たらないのだ。
その変わりに草原には何か巨大なものが這って歩いた跡があった。
「巨大樹ダンジョンが逃げた跡。だってよ」
シオンが眼鏡で情報を読む。
「確かに、木のマークが森を歩いていますね」
ソーマがマップでダンジョンマークを追う。
「周りはエルフに囲まれているけど僕、戦闘魔法は苦手なんだよね〜。一瞬で捕まるよ?」
エルフ達が隙間なく草原を囲んでワタル達を睨んでいる。
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