女三人よれば姦しい。
「やりやがった、こいつ、やりやがった」
姉が言う。アンタが言うな。そう突っ込みたくなるのは読者様だけではないだろう。わたしもだ。
目の前では信じられない光景が繰り広げられていた。
わたしは都立商業高校・副業部の部長パイセン。そしてここは伊豆・修善寺にあるホテルのスイートルーム。
わたしの彼氏を拉致した姉を彼氏の妹と追いかけてきた。
ところがその彼氏の妹がわたしと姉の前で寝ている彼氏にベロチューをしているのだ。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん」
凄い勢いだ。まるで猛獣が獲物を貪り食っているかのようだった。
「こよりちゃん、やめて!わたしでもベロチューはしていないのに!!」
「アタシは三度したぞ」
「姉さんは黙っていて!!」
ぷっちーん
何かが切れた音がした。
人は本当にキレると冷静になるという。わたしはテーブルにあるコップの中の水をこよりちゃんにぶっかけた。
「!!」
さすがに彼女も正気に戻ったようだ。
「あれ、ボク」
「こよりちゃん・・・」
「あ、パイセンさん」
わたしの顔を見たこよりちゃんの顔がひきつる。まるで連邦の白い悪魔を見たときのジオン兵の顔だ。
「少し、あたま、冷やそうか」
「ひぃっ」
「それ管理局の白い悪魔な」
後ろで姉が突っ込みを入れてくれた。さんくす。
なんでこんなことに。
ボクはこより。兄のことが世界中の誰よりも好きな弟だ。見た目は自分で言うのもなんだけど芸能人レベルの美少女。
その中身は男の前に年若い女性ふたりが入浴していた。ボクだって健康な男子中学生。腰のマグナム44が絶対に暴発しないわけじゃないんだからね、お二人さん。
さすがに堂々とボクのマグナムを晒すわけにはいかない。だってこの二人はまだボクを同性と信じて疑わないから。
幸いボクのマグナムは平常時、ニューナンブ程度の豆鉄砲だ。こうなったら一時的にトランスフォームするしかない。
トランスフォーム!!
ボクはニューナンブを股の間に挟んだ。
あとはバスタオル巻いて胸を隠すだけ。さあ決戦だ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「部屋に露天風呂なんて贅沢ね」
「たかだか一人あたり一泊二十万よ」
「それ、たかだかじゃないですよ」
いくら部屋付きの露天風呂でもバスタオルを巻いて入るのはマナー違反だ。ボクはバスタオルをとり、胸を隠して桐の湯船に足を入れる。
もろちん、いやもちろん腰のニューナンブは股の間に挟んだまま。自然に内股になる。
ボクの裸にパイセンと店長さんの視線が突き刺さる。
「これが芸能人レベルの裸なのね」
「無毛少女か。そっち系にはたまらんだろうな」
「やめてください」
なぜか中学三年生にもなってヘアがこんにちわしてこないんだもん。
「さて、なぜキミがそこまでお兄ちゃんラブなのかを聞かせてもらおうか」
ボクは小学生の時、海で溺れて死にかけたところを兄に助けてもらったことを話した。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「なるほどね」
「そりゃあ好きにならんほうがおかしいわ」
「でも実の兄よ」
「わたしが姉さんに生命を助けられたとして、ベロチューしたいほど好きになるとは思えないの」
「いや、そりゃあたしだって好かれても困るわよ」
この人たちもやはりそうか。家族、世間体、一般常識にとらわれている。
「でも彼もこよりちゃんを想っている」
「「え」」
「だってあの子。のぼせて倒れる時、こよりって言ったもん」
「そんな」
「失礼よねー、マッパの女を目の前にして他の女の名前を呼ぶなんてさー」
お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。
嬉しさが頂点に達した。まるで瞬間湯沸かし器のように。
「ボク、お兄ちゃんにまたベロチューしてくりゅ!!」
勢いよく立ち上がる。
「待ちなさい!!」
「待ちません!!!」
パイセンがボクを止めようと手を伸ばす。
でもボクは嬉しさで忘れていた。
ドキドキが最高潮に達した時、ボクのニューナンブはマグナム44にサイズチェンジするのだ!(特撮系変身ヒーロー風に読んでね)
ぼるん
重量感のある音を立ててボクのマグナムは彼女たちの前に顕現した。
ニギッ
腕を掴もうとしたパイセンの手はボクのマグナムを掴んでいた。
「「「きゃー」」」
露天風呂に三人の声が響き渡った。
まったく、女三人よれば姦しい。
はい異世界シニアです。
ほんとひどい話ですんまそん。今回は認めます。
でもこよりの秘密を暴露するのはコレしかない!そう思ったのです。
そもそもこよりの中学では知らない人がいません。
高校に入学すれば一瞬で広がります。ならば個別エピソードでバラすしかない。
あ、ティーン向けファッション雑誌のポップティーン編集さんは知ってます。原宿でこよりをスカウトしたとき「ボク男ですよ」と伝えてますから。
可愛ければ正義。
そんな優しい世界を夢見ています。
次回サイドジョブ。ダブルベッド上の戦い。
絶対みてくれよな!




