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ホモが嫌いな女子なんていません。

「ここが・・・天国か」


イキナリだけど、ボクはバーチャルユーチューバーの音音ネネクミが大好きだ。すべてのメーカー製スケールフィギュアをコレクションしている。


その愛する音音クミが目の前にいた。しかもカラーバリエーションこと色違いで三人も。


緑色を基調としたオリジナルカラーの音音クミ。薄い水色を基調とした雪クミ。薄い桃色を基調とした桜クミが揃っていた。


短いスカートとニーソックスから覗く白い太もも。男なら誰しも目を奪われる絶対領域がそこには広がっていた。


それが三人。クミのコスプレをしているのは都立商業高校の三美姫さんびきと呼ばれる美少女たち。映えないわけがない。


ジュルリ・・・。いかん、ヨダレがでそうになった。


ギュッ。左手に激痛が走る。となりのこよりが恋人繋ぎしているボクの手を握りしめていた。


「痛い痛い。やめろ、こより!!」

「浮気した罰だよ、お兄ちゃん」


浮気も何もおまえ家族じゃん。なによりも弟じゃん。


こよりはボクの中学生時代の黒い学ランを着用していた。ボクもいつもどおりの都立商業高校のブレザーをはおっている。


どちらもパイセンから指定された格好だ。ボクはともかく、こよりは男装女子にしか見えなかった。


夏に学ランは暑かろう。繋いでいるこよりの手にも汗がにじんでいた。ハンカチでこよりの額の汗を拭いてやる。


「ありがとう、お兄ちゃん大好き!」

また大げさな。


ぶふぉ

ガタッ

きゃっ


なぜかボクの360度全天候モニターが反応した。それは眼前にいるクミ三人も同様だった。


「我慢、我慢」

「ううう、てぇてぇ」

「これが天国か・・・」


それぞれ意味不明な言葉を口にしている。


しばし眼前に広がる天国を忘れ、ふとした疑問がボクの頭をかすめる。


「それにしても・・・これがボクたちの重要な仕事なのだろうか」


コミカ開催です!パチパチパチパチ・・・。開場のアナウンスだ。


さあ副業部の夏がはじまる。


「わが副業部は夏コミに参加する」


ここは都立商業高校の副業部。ホワイトボードの前に立つ部長ことパイセンが宣言した。


コミカって年に二度あるオタクの祭り。コミックカタログの略だっけ。


「もちろん副業の検証と実践だ。遊びではない。目指すは完売だ」

「勝ちに行くっす!」

「姫、スパッツちゃん、後輩くん。同人誌の製作はわたしにすべて任せてね」


(・・で、新入部員のボクは一体なにを手伝えばいいんだろう)


「安心しろ後輩。キミたちには当日、最も重要な仕事を与える」

「わかりました」


(ん?キミたち??)


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


そして今にいたる。ボクの前には天国が広かっていた。


緑のオリジナルカラーの音音クミは二年生で副部長の合法ロリさん。クールな水色の雪クミは三年生で部長のパイセン。元気ハツラツでファイト一発な桜クミを同級生のオナチューがコスプレしていた。


同人誌を売るためにここまでやるとは・・・。


「良いモノを作れば売れる時代は終わった!」

またパイセンがボクの心を読んで突っ込んでくる。

「良いモノを作るのは当たり前。売るために必要なのは宣伝。これに尽きる」


なるほど。確かに三美姫がコスプレするクミに目を奪われない男性は皆無だろう。


その割に行列を形成しているお客さんは女性ばかりだ。男性客が一割もいないのは少し気になった。まあクミは女性にも人気あるからね。


そういえば部長たちがコスプレするくらいだから、同人誌もクミが主役なのだろう。クミ好きなボクとしては同人誌の中身が気になる。


できれば買うから一冊ほしい。


なぜかパイセンたちは同人誌製作に関してボクを遠ざけていた気がする。まあ絵心のないボクはなんの役にも立たないけれど。


売り子のパイセンたちの間から同人誌の表紙が見える。あれ?クミじゃないぞ。よく目をこらしてみる。


そこにはブレザーを着た眼鏡の兄らしい少年と学ランのおそらく弟であろう美少年が寄り添っている姿があった。彼らは手を恋人繋ぎしていた。


ちょっつ


「ホモが嫌いな女子なんていません!!」

上級生の合法ロリ先輩がツインテールを翻しながら右手を握りしめてボクに宣言した。


あ、ダメだ。この人。早くなんとかしないと。


ようやくボクは周囲の熱い視線に気づく。前に列を作って並んでいるお客さん。左右のサークルさん。後のサークルさんからもボクとこよりの兄弟は注目されていた。


「再現度たかいよねー」

「あの弟のメス顔たまんない」

「やっぱりガチなのかな」

「夜は弟あいてに鬼畜眼鏡に変貌するのよ、きっと」

「パシャリ」


やられた。


そして副業部が用意した同人誌は昼前に完売した。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


「すまんすまん。だからお詫びにクミのコスプレをしたじゃないか」

「めんごっす!でもお似合いでしたよ、二人とも!」

「ごめんなさいね後輩くん。そしてこよりくん。あまりにも二人のイメージがベーコンレタスにぴったりだったから、つい」


完売したので近くのファミレスで打ち上げと反省会をするボクたち。三人は口々に謝った。


ちなみにベーコンレタスは今人気のTVアニメだ。兄弟が禁断の関係に悩むお話で、ファンのあいだでは「BLビーエル」と呼ばれていた。


そこ、まんまじゃんとか言わない。


弟を家族として大切に想う兄。兄を家族以上の想いで慕う弟。まるでどこかで聞いたような内容だった。


「お兄ちゃんと一緒にいられるなら気にしませんよ!」

「こより・・・」

(こいつ本気で言ってるんだろうなあ)


「そういってもらえると助かる。ここは何でも好きな物を頼んでくれ」

「わーい。ありがとうございます!」


「こよりちゃん、本当に学ラン似あっていたよ!まんま美少年の弟って感じで!」

「えへへ、先輩。恥ずかしいよぅ」


「それにしてもこんな逸材がオタクくんの家族にいるなんてね」

「あ、副部長。挨拶が遅れてすみません。ボクの家族のこよりです」

「妹のこよりです。兄がいつもお世話になっています」

「ええ。よろしくね、こよりくん」


なんだ、この違和感は。


どうして合法ロリ先輩は"くん"付けでこよりを呼ぶ。普通なら"さん"か"ちゃん"だろう。


ボクの前でスムージーを飲む副部長。ストローから口を離すときに赤い舌をチロっと見せた。視線があった。


ゾクッ。


やはりそうか。彼女は真正ホンモノだ。ほかの二人が見抜けないこよりの性別を雰囲気と勘だけで看破したのだ。


「わたしね、男性同士の恋愛。とくに兄弟モノにしか興味がなくて」

突然カミングアウトした副部長。

「だから同人誌もあんな内容ばかりになってしまうの」

「人のへきはそれぞれっす!」

「まあ、わからんでもない」


「副部長さん!こより、その気持ちよくわかります!!」


こよりが同調した。ガソダスのレーザーサーチャーみたいに。AパーツもBパーツもドッキング完了。


わっかんないよ!声優のサオリンがセリフを早口で120秒間まくしたてるカップうどんのCMくらいにわっかんないよ!!ボクは。


ため息をつく。この部活でノーマルな人間はボクしかいないらしい。


ここからは余談になる。


夏コミ当日。ヒヨッターでは謎の兄弟カップルの仲睦まじく手を繋ぐ画像がものすごい勢いで拡散されたそうだ。


はい異世界シニアです。


突然の夏コミ回です。前回オナチューが兄妹萌えときたので、副部長は兄弟萌えで攻めてみました。


こうなるとパイセンがもっともノーマルな気がしてきました。


書き始めたら一気に書いてしまったため、次回のネタは本当に考えておりません。


舞台を部室に戻すか。それとも海水浴になるのか。


なんだが学園モノのネタをやっている気がするけれど、きっと気のせい。


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