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第二十六話 大魔法帝国 ニ

 パースの街から出て一週間。

 大魔法帝国に到着したと言われて馬車から降りると、目の前には巨大な都市があった。


 パースとは比較にならないほど巨大な都市だ。

 低い建物から高い建物まで、沢山の建造物が周りを埋め尽くしている。都市の端が見えないほどだ。

 大通りには白い水晶玉が浮かんている。

 恐らく夜になったら光るのだろう。なんともファンタジーな街灯だ。

 そしてかなり遠くの方に、ピラミッドを逆にしたようなでかい建物も見える。

 多分あれが王都の中心地だろう。


「これが大魔法帝国の王都かい……すごいね」


 その都市を前に、ウィルが驚きの声を漏らしている。


 他の面々も、皆同じようなリアクション。初めて見る人にとっては驚くに値する景色らしい。

 巨大というのは、ただそれだけで人の心を動かすみたいだ。


「では、行きましょう」


 ロンウィが先頭となり、俺たちは歩き始めた。


 既にデウス教の方で色々と根回しは住んでいるようで、検問されることもなく街の中に入っていく。さすが巨大宗教。


 大通りを歩くと、周りから好奇心の視線が向けられるのを感じる。

 それはそうだ。勇者であるライオネアスの顔は結構有名で、知っている人も多い。

 ライオネアスが勇者であると知らない人であっても、その佇まいと腰に差した聖剣の輝き、精悍(せいかん)な表情などから、只者ではないことぐらいは分かるはずだ。


 それから、ウィルも中身は変態だが外見だけを見れば素晴らしいイケメンだ。

 人と接する時はいつも明るく優しい。第一印象だけなら、どこか冷淡なライオネアスよりも遥かに良いだろう。

 第一印象だけなら。


 ロンウィも顔は良い。デウス教の司祭の服装と相まって、見た目だけなら人々の平和を祈るかわいいシスターさんだ。

 よくニコリと温かい微笑みを浮かべることも、彼女の印象を底上げしている。

 もし学校に通っていれば、何人もの男子生徒から告白されていただろう。

 誰も狂信者だとは思わない。こんなかわいいシスターさんが狂信者なわけないじゃないか、なんて言われそうだ。

 でも残念、狂信者なんだよなあ。


 そしてコフィも聖女。

 デウス教が用意したのだろう、清楚で綺麗な服を纏って歩く姿はまさに聖女。聖女だ。完璧に。

 孤児院にいた頃も、コフィはかなり綺麗な顔立ちをしているなあと思っていた。けど、綺麗な服を来てちゃんと整えられた今の美しさは、その比ではない。

 もはや儚い。

 こんな少女の口から毒舌が出てくると思うと頭が痛くなるほどだ。


「何ジロジロ見てるの? 気持ち悪いんだけど」


 コフィを見ていたら罵倒された。

 罵倒したコフィは、ちょっと顔が赤くなっている。照れ隠しなのか?

 照れ隠しで気持ち悪いとは、ちょっと、俺の心にダメージが。


 とまあ、もはや個性の塊と言えるメンバーで歩いていれば、沢山視線を受けるのも仕方ない。

 若干、ウィルに向けてアツい視線も飛んできたり。まあ、何もしなければ大丈夫だろう。

 と思っていた矢先、ウィルが視線の方に向けて笑顔で手を振る。

 あちらこちらからキャーと歓声が。


「ウィル、なんでお前が勇者みたいな感じになってるんだよ。自重しろ」


「これはスキンシップみたいなものさ、ジン。本能には僕も抗えない」


 くそ、言っている意味が分からない。


「ロンウィ、なんか言ってやれよ」


「魚に指示される覚えは無いですね」


「くっ……コフィ、助けて」


「キャっ、魚が喋った」


「あーくそ、懐かしいネタを出すな!」


「慌てないでジン。あなたはどの魚よりも人間に近い選ばれし魚なのよ」


「できれば選ばれし人間が良かった」


 そんなくだらない会話をしながら、俺たちは進んでいく。


 魔法学院までは結構な距離があるらしく、なんで馬車を使わないんだとロンウィに聞いたところ、勇者パーティーの顔を見せるから、と返ってきた。

 上級魔族を倒したことにより、勇者パーティーである俺たちには少なくない注目が集まっている。

 注目されている今のうちに世間に勇者パーティーの顔を覚えてもらい、より活動しやすい状況を作っていくのだそうだ。

 ちなみにこの方針はデウス教のお偉いさん達が決めたものだそうで、俺達に拒否権は無い。プライバシー侵害も甚だしいが、我慢だ、我慢。


 時々手を振られたり、カメラみたいな魔道具で写真を取られたりしながら歩いていく。

 王都の中心に近づくほど人も多くなり、武器屋や魔法道具屋なども増え、活気が増していくのが感じ取られた。


 一時間ほど歩いたところで大通りから外れ、高級な雰囲気の漂う道へと入る。貴族の住む領域に入ったのだろう。


「着きました」


 そう言ってロンウィが止まる。

 ウィルが困惑の声を上げた。


「本当に……着いたのかい?」


「はい」


 目の前にあるのは白い壁。二十メートル以上はあるだろうそれが、ただ広く続いているだけ。

 他には何も……ん?


「……門か?」


 俺の呟きが聞こえたのか、ロンウィがひどく驚いた様子でこちらを見てくる。


「よく分かりましたね」


 そう言って壁に手を当てるロンウィ。電気が走ったかのように、壁面に巨大な魔法陣が一瞬だけ現れた。

 白い壁だったところの一部が発光し、光の粒子となって消え去る。光魔法の類だろう。

 ウィル、コフィ、ライオネアスが驚いた表情で見つめる中、目の前の壁に大きな門が出現した。


 ロンウィは少し懐かしむような微笑みで。


「ようこそ、第一魔法学院へ」


 驚きの光景から我に返ったライオネアスが聞く。


「ロンウィ、なんだ、それは」


「それ、とは?」


「まるで、ここに来るのは初めてではないような様子ではないか」


「そういえば、言い忘れていました。私はここの卒業生です」


 ロンウィの言葉に、ここにいる全員が驚いた。

 俺もそれは知らなかった……というか。


「ロンウィ、お前、卒業生ってことは」


 俺が言うと、ロンウィはニコリと笑う。


「はい、教授免許を取得しています」


「……卒業成績は」


「特別クラス、十七位です」


「…………」


 ロンウィって、俺たちと同じくらいの歳だよな。

 魔法学院は三年で卒業だから、最低でも十一歳の頃には通ってたってことか……。

 天才かよ……。


「ちょっと、どういうこと?」


 話についていけないコフィ。

 対して、ロンウィは落ち着いた様子で。


「まずは中に入りましょう。歩きながら説明しますので」


 と門の中へと入っていった。


作者のやる気のために、どうかブックマーク・評価・感想・レビュー等々よろしくお願いします。

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