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第十六話 VSウィル

 ウィルが肉薄してくる。

 開始直後に振り下ろされた拳。

 大きく飛び退いて避ける。

 すると、その拳は床を叩き粉砕。

 クレーターが形成された。

 同時に砂煙が立ち上り、ウィルの姿が隠れる。


 ウィルはその中から猛烈な勢いで飛び蹴りしてきた。

 しゃがんで回避。

 続けざまに右拳が飛んできたので、左手でその腕を払う。

 ウィルは払われた腕で勢いをつけ、右足で回し蹴り。

 のけぞって回避。

 そこへ繰り出される左拳。

 バク転、回避。


 ウィルから離れるが、踊るようなステップですぐさま詰められる。


 右足をしならせるような蹴り。

 俺は両手をクロスさせてガード。

 バシ、と蹴りつけられてガードを解こうとした時には、既に右足が迫っている。

 連続蹴りが、ガードする俺の体を押す。

 耐えること五秒ほど。

 最後に強い一撃が来て、ようやく連続攻撃が終わる。


 俺はガードを解いて、ウィルに話しかけた。


「闘気の使い方、すげえぞ。今日のお前」


 ウィルは息を切らしながら答える。


「はぁっ、くっ、はぁ、そうっ、かい」


 闘気、というのは力の一つだ。

 魔力が体外に放出して使う力だとすれば、闘気は体内で循環させて使う力。

 体にまとわせることで、一時的に攻撃力。防御力を上昇させる。

 剣を生身の体で受け止めたりする超人がいるのはこのためだ。

 闘気で防御しているのだと考えられる。


 闘気は使ってなくなるものじゃない。

 けど、使いすぎると筋肉みたいに疲れて、使えなくなる。

 もちろん休めば回復する。

 そして強くなる。

 そう、使って鍛えるほどに強くなれるのだ。

 筋肉とは違って、その強さに限度はない。

 無限に、それこそ望む力が手に入るまで強くなれる。

 もちろん、鍛錬は厳しいが。


 そして俺は、転生以前から持っている闘気を受け継いでいる。

 筋肉と違って形が無いからな。

 魔力も同様。

 普段は出さないようにしているけど、本当はめっちゃあるんだぞ。


 闘気一番の大事なことは、使い方だ。

 体を強化するぞ! と言って全身くまなく闘気で覆ってしまうのは馬鹿だ。

 そうすると燃費が悪い。すぐに闘気が疲れて使えなくなってしまう。

 全身に張り巡らせるから、闘気の効果も薄くなる。


 だから、一点のみ集中的に強化する。これが重要だ。

 全身に張ると弱い闘気も、一点特攻で使えばその威力は言わずもがな、強くなる。

 十歳にも満たない子供だって、きちんと毎日訓練すれば、闘気を使って拳で岩を割れるようになるだろう。

 それくらい、闘気の使い方は大切なんだ。


 ウィルは攻撃する度に、目まぐるしい速度で闘気を移動させていた。

 右手に集めて拳を突き出し、連続蹴りの時は右足の先端に集中させ。

 中でも俺に接近する時、なめらかに闘気を足へと移動させたのは綺麗だった。

 さすが舞踏格闘家、といったところか。


「ウィル、お前道場だと下の方って言ってたろ。あれ、お前の勘違いだぞ、多分。お前みたいに闘気を使える奴が下だとは思えないんだが」


「……こんなに闘気を使えるようになったのは、君のおかげなんだよ、ジン」


「俺の?」


 息を整えたウィルは、鳴り響く歓声を無視し、俺にだけ声が届くように喋る。


「舞踏格闘家という天命に自信が持てなかった。道場では、自分の天命に疑問を持つ毎日だった。戦うことにも、攻撃することにも、拳をまっすぐ突き出すことでさえも、迷いが生じたんだ。だから闘気もうまく使えなかった。道場では下の方だった……でも」


 ウィルは真剣な表情で、けれど目を輝かせて。


「今は、自信が溢れて止まらないよ」


 瞬間、ウィルがさっきとは格の違う速度で動き出した。


 目の前に、拳。

 俺は首をひねって避ける。

 風を切る音が耳元で鳴る。

 右肘が飛んでくる。

 右手で掴んで止める、が、逆に右手を掴まれて投げられた。

 背中から地面へ叩きつけられる。

 すぐ立ち上がるが、横から来た膝蹴りを腹に食らう。

 足を地面につけて踏ん張るが、目の前にウィルの肩。

 タックルが胸に当たり、少し体が浮く。

 空中で方向転換はできない。

 そこへ、ウィルが猛烈な連続蹴りを放ってきた。

 両手でガードする。

 さっきと同じ、右足。

 けど、威力も速度も確実に上がっている。

 踏ん張れないから吹き飛ばされるが、吹き飛ばした俺をウィルは追従してくる。

 そして、息を吐く間もなく蹴りが続く。

 闘技場の壁に到達。

 壁を背に、蹴りを受け続ける。

 岩の壁がガタガタと音を鳴らし、ヒビを作る。

 最後の強烈な蹴りで、俺の周囲の壁が崩れた。


 砂煙に包まれる。


「はぁっ、はっ、はぁっ、やった、かな?」


 ウィルの崩れた呼吸音が聞こえる。


「良くやったよ、ウィル」


「!?」


 驚いて距離を取ろうとするウィル。

 ウィルが動く前に、俺はその首筋へと人差し指を当て。


「おつかれさん」


 魔法を使った。


「うっ……」


 バタリ、と倒れるウィル。


 土煙が晴れる。

 俺たちの姿があらわになる。


 見事に愕然とする観客達に向かって、拳を突き出して言った。


「俺の、勝ちだ」


 俺は勝った。


「女の子……だったらな……パンツが……ぐはっ……」


 変態青年の言葉と共に。

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