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第十一話 Aブロック

 出場する選手は、別に観客席で試合を見てもいいらしい。

 控え室から出て、観客席へと向かう。

 俺はBブロックなので本来なら控え室にいたほうがいいのだろうけど、まあ急いで行けばどうにかなるっしょ。


 ということで人混みをかきわけて観客席に着いた。

 もちろん、座れる席など無いので適当な場所に立って観戦だ。


 そういえば、観客席をよく見ると、ガラス張りのでかいボックスみたいなのが一部にあるんだよな。

 多分VIP席とかだろうけど、一体誰が座るんだろうか。

 デウス教のお偉いさんとか、もしかしてコフィもあの中に……そんなわけないか。


 すると、闘技場内の喧騒を上回る音量でアナウンスが始まる。

 同時に闘技場の中心、勇者パーティへの加入者を決める戦場に、ぞろぞろと四十人ほどが入ってくる。


「お、ウィルもいるな」


 ここから見ると、結構緊張しているように見え……ない、なんだ、あいつ全然緊張してないぞ。

 むしろ何かを探しているような……まさかあいつ、ここにきてパンチラを狙って……!


「よし、ウィル、俺はお前を応援しないぞ」


 ただし、パンチラをする勇気と行動力は認めよう。


 はじめええっ! という実況席の大声と共に選手は一斉に動き出す。


 キンキンと金属同士がぶつかり合う音がどこからともなく鳴り出す。

 会場全体の雰囲気も熱狂的に。


 さてと、それでウィルは……。


 ウィルは戦火の中心から少し離れた場所で、一人静かに構えを取っていた。

 その周囲五メートルほどには誰もいない。

 いや、いない訳ではないが、誰もウィルに近寄ろうとしないのだ。


 すると一人、斧を持ったやつがウィルに突っ込んでいく。

 そいつは大きく振りかぶってウィルに攻撃しようとしたが、ウィルの間合いに入った瞬間――

 体をくの字に曲げて吹っ飛んだ。

 一撃でノックダウンだ。


「おお、やるなあ」


 ウィルは拳を撃ち抜いた姿勢から、再度構えを取り直す。

 その様子を見ていた周りの選手は、ウィルに近づかないように他の場所で戦い出した。


「カウンター完璧じゃねえか」


 周りの気配を察知して、三百六十度、全方位に反撃。

 今のを見る限り、ウィルの間合いはだいたい三メートル強。

 相当技術が必要な芸当のはずだ。


 道場では下の方と言っていたウィルだが、どうやらそれは勘違いみたいだ。

 こんなことをできる奴が下なら、あの道場は手練の集団だぞ。

 それこそ鬼のように訓練しないと無理な話だ。


 その時、ウィルの方に向かって杖を構える女の子の姿が。

 多分、さっきウィルが言っていた水の魔術師(アクア・マジシャン)とやらのことだろう。

 彼女は魔法で水を生み出すと、圧力を高めて勢いよく放った。水弾だ。


 ウィルの顔面へ向かって飛んでいく水の塊。質力エネルギーは相当ある。

 食らったらひとたまりもないはずだ。


 ウィルは目の前まで迫った水弾を――弾き飛ばした。


 先程と同じ、拳を撃ち抜いた姿勢。


「おー、魔法もカウンターで対応、ね」


 水を放った少女はむっとした表情。

 ウィルに対し不利を悟ったのか、少女はまた別の方へと走っていく。


 そして、ウィルは誰にも勝負を挑まれずに十分ほど経過。

 試合は中盤。

 見ている限りだと、やはりウィルと魔法使いの女の子の二人が強い。

 他にもタフな奴がまだ残っていたりするけど、表情に余裕が無い。


 そして一人、また一人と、飛んできた水魔法に直撃してやられる人が。


 一人倒されるごとに会場は大盛り上がり。

 選手を倒しているのが魔法を使う少女というのも、その熱気の一因となっている。


 ワーワーと歓声が飛び交う中。

 試合終盤、ほとんどの選手が魔法使いの女の子に倒された時。


「おっ、やっと動くか」


 ウィルがゆっくりと目を開ける。


 魔法使いの女の子もウィルの方に向き直り、勝負よ! と大きな声で言った――と同時に、驚愕の表情。


 少女は見ていたのだ。


 ウィルの後ろで、運良く残っていた一人の男が斧を振り上げる光景を。


 会場が息を呑む。

 完全な不意打ち。

 完璧な死角からの攻撃。


 少女の方を向いているウィルはその攻撃に気づくはずもなく。


 男は両手で持った斧の刃を、ウィルの頭めがけて振り下ろし――


 ――瞬間、猛烈な勢いで吹き飛ばされた。


 二度三度と地面をバウンドし、闘技場の壁に激突。気絶。

 遅れて、闘技場の硬い床に斧が突き刺さった。


 完全な不意打ちすら対応してみせる集中力。

 そして一撃で仕留める武術。


 あまりのことに会場は一瞬、静寂に包まれた。

 水魔法の少女も唖然。


 しかし、ウィルは既に動いていた。


 踊るような滑らかな脚さばき。

 瞬きしていれば見逃してしまうような速度で、少女の目の前に移動。


 驚いた少女は、けれど一瞬で水魔法を行使。

 正面に大きな水の壁を作り出し、相手の拳から逃れようとする。


 ウィルはそれに構わない。

 思わず見入ってしまいそうになる美しい動作で構えに入ると、右拳を一撃。


 水の壁が、粉砕された。


 直後に、少女は水弾を放つがウィルは回避。

 少女の背後に移動し、手刀をストン。少女は気絶。


 ウィルは気絶した少女をゆっくりと床に下ろすと、笑顔を浮かべてこう言った。


「意外と、余裕でしたね」


 瞬間、会場は一気に、強烈な歓声に包まれた。


 そして俺は、見ていた。

 鮮やかな勝利を勝ち取ったウィルが、少女のパンツをしっかりと確認し、笑顔を浮かべている光景を。


「ウィル、お前、すげえよ」


 多くの人の視線を浴びながらも、しっかりとパンツを見るウィルのハートの強さに、俺はただただ圧倒された。


「……さて、次は俺の番か」


 歓声が鳴り止まない中、俺は控室へと歩みを進めた。

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