第三話 ~記憶喪失~
* * *
「・・・い、おい、大丈夫か?」
「・・・ほぇ?」
冷たいものが私の頬を叩いています。
どれほど眠っていたのでしょうか?
重たい瞼を開くとそこにいたのは、血塗れの男性でした。
「だ、大丈夫ですか!?」
びっくりしすぎて睡魔も逃げてしまいました。
男性は手足からところどころ血が出ていて出血量が半端じゃありません。
「ん?ああ、これか?
別に問題ない。どうせすぐ治る」
男性は飄々と言い放って傷口から出ている血を鬱陶しそうに手で払います。
「そんなことしちゃいけません!バイキンがはいったらどうするんですか!」
「そんなやわな体じゃない」
やわとかやわじゃないとかの問題ではありません。
男性は手当さえもする気がないようです。
ご自分のおからだをどう思っているのやら。
「私、軽くですが手当てしますから、来てください」
確か、カバンの中にいろいろ入っていたはず、とカバンをあさる。
カバンから包帯、絆創膏、消毒液、コットン・・・。
それらを使って男性のけがを手当てしていきますがなんせ量が多いです。
「どうしたら、こんなにけがをするんです?」
あきれ半分できいてみたんです、本当にそれだけでした。
でも、男性は苦虫をかみつぶしたような顔で「あいつらが見境なく撃ってくるから」とボソリとつぶやきました。
あいつらとは誰なのでしょうか?
豆粒ほどの疑問を胸にしまいこみ手当てをする手を進めます。
きっと、聞いてほしくないことなのです。
だから、ききません。
「随分と手なれたもんだな」
「私、ドジだからすぐにけがしちゃうんですよ」
小さいころから毎日一回はコケてきた。
自慢じゃないが何もないところでこける自信がある。
男性にそれを伝えると、本当に自慢じゃないな。と笑った。
よく見ると男性は随分と端正な顔立ちをしていた。
瑠璃色の髪がきれいで瞳はシルバーだ。
吸い込まれそうな、銀。
「そういえば、お前名前は?」
男性に問われて我に返る。
私の名前・・・
「あれ?なんだっけ?」
名前・・・・・
「私・・・。なんて名前だったんだっけ?」
銀色の瞳があきれて私を見ていた。
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