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ブラック給食室の監獄。〜2人きりでモラハラを繰り返す新人潰しチーフに負けず、異動先で幸せを掴むまで〜  作者: S@Y@


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第26話:お喋りしながらの手さばき


マネージャーが帰り、朝のミーティングが始まった。

その際、調理室に栄養士の先生がふらりと現れたのだが、私は思わず息を呑んだ。


――北川景子に激似である。


あまりの美しさに呆然としていた私に、先生はにっこりと微笑みかけた。


先生「あ、新人さん来たんですねー♪ 栄養士やってます! 今日からよろしくお願いしますねー♪」

野崎「あ……女優さんじゃなく先生……あ、すみません綺麗すぎて……よろしくお願いします!」

先生「えー! やだ、嬉しいー! ありがとうございます♪」


クールビューティな見た目とは裏腹に、お喋りすると凄く可愛らしい。

さっきまで号泣してボロボロだった私の心も、その明るさと眩しさに触れただけで、嘘のように救われた気分になった。美人ってすげぇ……。


チーフ「サブチーフ帰ってくるまで新人さん入れて7人でやってきますんでね、先生よろしく」

先生「サブチーフ骨折ですもんね……。分からない事あったら私にも聞いてくださいね! 人手足りなかったら時間見つけて調理手伝うので言ってください!」


栄養士の先生は、給食を盛り付ける前に必ず味見をしなければならない。

学校によっては調理室に入らず窓越しに確認する先生もいるが、この先生は自ら調理室に入ってくるタイプだった。


チーフ「んじゃあね、とりあえず今日は下処理からスタートしてね」

野崎「はい!」

チーフ「今日の下処理リーダーはまいちゃんだから、色々教えて貰うといいよ」

まいちゃん「お! まっかせてくださいよ! 野崎さん! 行くぞー!」


どこまでも明るく、優しく接してくれる調理員さんたち。

前の学校とは何もかもが違っていた。給食室の造りすら違うため、ピーラーがどこにあるか分からずキョロキョロと探していると、すぐに近くの調理員さんが声をかけてくれた。


調理員「あ、これ探してる? フフ、分かりずらいよね」

野崎「ありがとうございます!」

調理員「野崎さんって何歳なの?」

野崎「20歳です! 8月で誕生日なので、あと3ヶ月くらいで21ですが」

調理員「えー! わかーい! 私28だけど、もうおばさんな気分だわ!」

まいちゃん「そんなことないでしょー!」


手は一切止めず、しかし会話は途切れることなく続いていく。

すごい……。前の学校では一言も会話に入れてもらえなかったのに、私がお喋りに参加できている。あのお局おばさんたちは、喋るとすぐに手が止まって作業が遅延していたけれど、ここのみんなは作業のプロだ。


調理員「前の学校のチーフ、酷かったんだねぇ……」

野崎「そ……そうですね……。一人でやれって言われて一人でやってたら『驕るな』って言われたり……。分からないこと質問しても無視されるか、『マニュアル見てくれる?』としか言ってもらえなくて……」

調理員「はー? なんだそれ……あの分厚いマニュアル、完璧に覚えてる人いるん?? 笑」

調理員「いやいや、無理っしょ!」

調理員「新人さんを育てるための『ステップ』って研修なのにねぇ」


『ステップ』とは、1週間ごとに違う作業を順繰りに覚え、計8週かけて業務を習得する研修のことだ。私はちょうど3週目を終えたところだった。


まいちゃん「私も前、違う学校にいたことあるけど、そこまで酷い学校中々きかないねぇ。大体新人さんに完全に一人でやれっておかしいっしょ」

野崎「とにかくチーフが私のこと気に入らなかったみたいで……。名前も書かせてもらえないし、仕事も教えてもらえないし……。『皆が仲良くしてないと美味しい給食作れないのに、貴方のせいで美味しい給食作れない』って……」

まいちゃん「美味しい給食w バッカじゃねぇの? チーフって役職はさぁ、皆の作業が円滑に回るように采配したり、調理員同士が仲悪かったら仲裁する役割もあんだよ。その役割の人が場の空気を乱してるのに、美味しい給食もクソもねぇじゃんw」

野崎「ですよね……エヘヘ」


みんな、私を肯定してくれる。

私の話を聞いてくれる。


なんて嬉しいんだろう。なんて楽しいんだろう。

今、この場所で調理している時間が、私にとって何よりもかけがえのないものに思えていた。


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