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会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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ダン博の長い一日が終わりました(後編)

※最後までみて、あれ?と思った方は78話へGO!

 八咫烏の3人が到着したのは、そのすぐあとだった。


 服部が最初に降り立ち、東雲が続く。

 久遠は最後に着地して、こちらを見た瞬間だけ口を結んだ。


 「真壁」


 服部が近づく。

 俺は答えられなかった。


 東雲が桐野の状態を見て何かを察し、腕を取った。

 脈拍の確認とその後に瞳の瞳孔の開き具合を見る

 それから服部と久遠へ視線を向けた。


 服部が久遠へ視線を投げ、そして小さくうなずく。


 終わった。

 そう言われた気がした。


 「…桐野さんが」


 声が出た。

 掠れた声で自分の声じゃないみたいだった。


 「……俺のせいで」


 「とりあえずいったん寝かせよう」


 服部は落ち着いていた。

 東雲も、久遠も。

 まるで、取り返しのつかないことが起きたわけではないみたいに。

 その温度差が、俺には理解できなかった。


 「なんで」


 俺は桐野を抱えたまま、顔を上げる。


 「なんでそんな、普通に」


 「真壁、まず桐野を離せ」


 「離せるわけないだろ!」


 服部はそれを見て一息ついた。

 そして静かに俺の肩に手を置いた。


 「大丈夫だ」


 その一言が、俺には余計に分からなかった。


 何が大丈夫なんだ。

 桐野は刺された。

 血が出た。

 呼吸が止まった。

 体温が失われていった。


 大丈夫なわけがない。

 どこが大丈夫なんだ。


 それでも服部と東雲は桐野の体を俺から引きはがして、フレームの床へ横たえた。

 久遠がしゃがみ込み、桐野の胸元に手を置く。


 「うん。バッチリ残ってる」


 「発動条件は満たしているな」


 「たぶんね」


 何の話をしているのか、分からない。


 俺はその場に膝をついた。

 手のひらに残った血の感触を見る。


 俺がもっと早く見つけていれば。

 俺がもっと早く切断できていれば。

 俺が、リブートの手を止めてでも回避行動に移っていれば。


 いや、違う。

 手を止めていたら、もっと多くの人が死んでいた。


 でも。

 それでも。

 そんな理屈で、納得できるわけがなかった。


 頬に、柔らかいものが触れた。


 シオだった。

 小さな触手みたいに伸びた足で、俺の頬を押している。


 「……ごめん、シオ」


 返事をする気力もなかった。


 シオがもう一度、俺の頬を押す。


 ぷに、と。


 「今は」


 また押された。


 ぷに。


 「シオ」


 ぷにぷに。


 「分かったから」


 ぷにぷにぷに。


 さすがに、少しだけ苛立ちが出た。


 「だから、今はそういう……」


 文句を言おうとして、俺は顔を上げた。


 目が合った。


 桐野と。


 桐野は上半身を起こしていた。

 東雲に脇腹の処置をされながら、服部に背中を支えられている。

 顔色は土色に近く唇も白い。

 それでも目は開いていて、俺を見ていた。


 「……痛っ」


 桐野が、脇腹の方に目を向けて小さく言った。


 俺はというと、見たままの光景が信じられず、口を開けたまま固まった。


 「え」


 声になったのは、それだけだった。

 桐野が少しだけ眉を寄せる。


 「真壁さん、顔……ひどい」


 「え、いや、だって」


 「泣くなら、もうちょっと格好よく泣いて」


 その瞬間、全身の力が抜けた。

 膝から崩れそうになって、シオが胸元に飛びついてきた。


 「なんで」


 俺は桐野を見た。


 「なんで、生きて…」


 服部がそこで口を挟んだ。


 「ことねのスキル」


 久遠が軽く手を上げた。


 「あの屋上で合流した時に出したことねのスキル『運命視』、アレの効果だ」


 「わたしのスキルに感謝しろよ? 小僧」


 久遠は、にしし、と笑った。

 服部はやれやれと、盛大にため息をつく。

 

 「1回だけの自動蘇生が選ばれてな。それで桐野は蘇った」


 「死んだ直後に、条件を満たしていた対象を現世に戻す効果だそうです。あなたがうつむいているときに発動しました」


 「自動蘇生…ですか…」


 「完全回復ではありません。傷は閉じましたが、出血と消耗は残っています。しばらく安静が必要です」


 「でも、ちゃんと生きてるゾ」


 その言葉で、ようやく意味が追いついた。


 生きている。


 桐野が。


 さっきまで冷たくなっていた体が。

 腕の中で重くなって、生を失ったと思った人が。


 生きている。


 「よかっ」


 最後まで言えなかった。

 喉が詰まって、視界が滲む。

 桐野が困ったように笑った。


 「真壁さん」


 「……はい」


 「私、死んだんだから、少しくらい泣いてもいいけど」


 「…………はい」


 「でも、あんまり泣かれると恥ずかしい」


 「……無…理です」


 桐野が小さく息を漏らした。

 笑ったのか、痛かったのか、たぶん両方だった。


 壊れかけの配信端末が、途切れつつも配信を続けており、コメント欄はもう読めないくらい流れていた。


 『生きてる!!!!!』

 『桐野さん生きてる!!』

 『久遠さんのスキルやばない?』

 『自動蘇生!?』

 『全世界の全俺が泣いた』

 『真壁さんよかったな』

 『シオぐう聖』

 『ぷにぷにしてたの尊すぎる』


 シオが俺の胸元で、誇らしげに体を揺らした。


 俺はもう一度、桐野を見る。

 桐野は疲れ切った顔で、それでも確かに目を開けていた。


 終わった。


 全部が終わったわけではない。

 神父も、無精髭男も逃げた。

 ダン博会場も、配信も、それ以外も。

 これから大変なことになる。


 それでも今だけは。


 桐野が生きている。

 それだけで、俺は生きていると実感ができていた。

大阪編はこれにて終了です。

皆さまここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。


当初のプロット案では15話編成だったのですが、気が付けば30話というボリュームになっていました汗

これでも文量減らしたり、エピソード没にしたりと圧縮をがんばったんですけど、それでも倍という運命は避けられなかったようです。。。


このあとは日常復帰回を挟んで新章突入となります。

今後とも、『会社をクビに…』をよろしくお願いいたします。

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