表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ!超能力部です!  作者: YY-10-0-1-2
閑章
105/105

閑話 お兄ちゃんと妹


 そいつを見つけたのは、他の連中と喧嘩していた時だ。

 周りは既に暗く、見つけづらかったが、月明かりが照していて、裏路地にあるゴミ袋の近くに大きな影があるのに気がついたのが幸いだった。


「……あ?」

「どこ見てんだよ!よそ見かよ!」


 顔面目の前に来る拳を紙一重で避け、その放ってきた奴の腹に思いっきり拳をぶつける。

 どうやら、哲殻も花畑も連中共をぶちのめしたらしい。


 連中の片付けは花畑達にやってもらうとして……っと。


「若? どうしたんすか?」

「……ガキが1人裏路地で項垂れてる」

「! ほんとっすね!」


 俺はそいつがいる裏路地に入り込む。

 そして、そのガキの目の前に座り込み、顔を覗く。

 まるで、生気を宿していない目。死んだような目というか、イラストで言ったらハイライトが入ってない目って言うか。


「おい。お〜い、生きてる〜?」


 ダメだこりゃ。

 ちょいと失礼。と断りを入れてから胸の当たりを触ってみる。

 すると、哲殻が頭を殴ってきた。


「……っ痛〜何すんだ!」

「セクハラしてんじゃないっすよ!」

「違ぇよ! 心臓動いてるかどうかだわ! あと、女かどうかも分かんねぇんだぞ! 股触りゃ話は別だがな…」

「脈測ればいいでしょ! それとセクハラ発言っすよ!」


 哲殻が耳元で大声を出して言う。

 分かった分かったと宥めながらガキをおんぶする。その事に哲殻は何にも言わずに悪態つきながら車を呼ぶように指示している。


 すると、気づいたのか、俺の腕から抜け出そうともがき始めた。

 俺は驚いて、手放してしまった。


「お、おい! 起きたか!」

「…………誰?」

「こっちのセリフだっつうの……」


 俺はそう言うと、ガキの顔を見る。

 綺麗で色白い肌なのだが、所々に傷があるし、瞳は深く蒼い色だけど……目の上にたんこぶがあるし。

 ちゃんと育ったと言うには細すぎる腕。


「……虐待か…」


 今までそういう奴らを見てきたし、その子供を保護してきたが、ここまでのは初めてみるな……。

 すると、後ろから若と呼ぶ声が聞こえてきた。振り向くと、車が用意出来たようで、哲殻が乗り込んでいる。


「ついてこい」

「……なんで?」

「……話はそっからだよ」


 俺はその子の手を引いて、車に乗せる。

 怪我して血まみれなのに泥が大量に着いている足。それに、何時間歩いたんだってくらいに靴もボロボロ。


 それを見て哲殻は顔を顰める。


「早く車出してくれ」

「あいよ。若」


 俺がそう言うと、哲殻が車を運転し始める。

 俺はため息をついてからその子供の方を向き口を開いた。


「名前は?」

「……ない」

「そうか。じゃあ困りもんだな…」


 俺は唸りに唸る。

 とりあえず、ガキ……とは呼べないので、お嬢ちゃんと呼ぶことにしよう。


「お嬢ちゃん、なんであそこにいたんだ?」

「……分かんない。親に捨てられたんじゃない?」

「なんで自分で分かんないんだよ…」


 哲殻がそう言うので、足で椅子を蹴ってとりあえず黙らせる。


「何時間歩いたんだ?」

「……分かんない。いっぱい…」

「そっか。頑張ったな…」


 親に捨てられた……か。

 それだけじゃない気がするな。


「その足の血は?」

「……蹴られた。沢山…。それに、殴られた」

「……胸糞悪ぃっすね」

「……あぁ」


 目に光が入ってない瞳で俺を見てくるお嬢ちゃん。

 その瞳はまるで、何の感情もないと訴えかけていた。助けてという感情も……何も無い。


「痛かったな……大丈夫か?」

「……感覚がないから…」


 その言葉につい舌打ちしてしまった。

 心の中にドス黒いものが流れ込んでくる。頭を横に振ってそれを抑え込む。


「若、つきましたぜ」

「あぁ。さ、降りな」


 手を引っ張り、屋敷の中に入る。

 その後に、リビングの椅子に座らせる。髪が黄色い。まるでゲルマン民族だな。

 俺は、仲間の1人に何か作ってこいと指示して嬢ちゃんの方を見る。


「…どうして?」


 話題に困っていると、嬢ちゃんの方から話しかけてきてくれた。

 はて、どうして……とは?


「私の事、助けてくれるの……?」


 深い蒼色の瞳で俺を捉えながら言う。

 俺は頭をポリポリと掻いた後に、ごく、当たり前かのようなテンションで言った。


「困ってそうだったから」

「……!」

「いや、どちらかと言えば助けずにいられなかった……か?」


 大きく目が開かれたかと思えば、直ぐに顔を伏せる。

 すると、その子の目の前に皿をコトッと置く。


「……」

「さぁ、食べなよ」


 皿の中身は、ゴロゴロと一口ように小さく切られたじゃがいもに、肉。人参に、たまねぎに糸こんにゃく…。

 俗に言う肉じゃがと言うやつだ。

 いつの間に用意されてたかって? ……昼食食べるために用意してたなんて言えるか。


「…いいの……?」

「うん。いいぞ」


 嬢ちゃんは、フォークを手に取り、慣れない手つきで肉を口に放り込む。

 目を輝かせて、今度はじゃがいもを食べる。

 俺はそれを黙って見ていた。ただただ、そいつが食い終わるのを、じっと見て待っていた。


 テーブルが濡れる。

 ポロポロとお嬢ちゃんは涙を零していた。


「……おい…しい…」

「そりゃ良かった」


 ポロポロと、涙を零しながらパクッと食べ、そして完食させた。

 そして、次第に嗚咽を交え顔を抑え始めた。


「……ごめん…なさ…い……泣いちゃって…」


 俺は嬢ちゃんの頭にポンッと手を置いて、撫でる。


「泣いていいんだぞ。泣かなきゃ、辛いものを溜め込んでいっちまうからな」

「……うっ……うぅっ……」


 そして、嬢ちゃんは大声で泣き始めた。

 俺は頭に手を乗せ、撫でたまま、優しく、優しく見守っていた。






 ◇◆◇





 風呂にて。

 お嬢ちゃんの体を水で流す。


「大丈夫?」

「……ん」


 大丈夫そうだな。

 俺はなるべく意識しないように頑張りながらシャンプーをつけ、髪を洗う。

 確か、優しく丁寧に洗うんだったよな…それと、指の腹で洗うんだっけな。


 気持ちよさそうにしているから多分大丈夫だろ。

 しっかし髪が長いな……まるで御伽噺に出てくるラプンツェルみてぇだ。


「……いや、長すぎない?」


 風呂の椅子に座らせているのだが、髪が地面にベッタリとついている。

 こりゃ洗うの大変だな……。


「よし……ぬるま湯で綺麗にすすぐっと」


 シャワーでお湯を出し、髪をすすぐ。

 ふと、背中に傷があるのを見つける。痛々しい青タン……。それを複数の場所に。

 相当な威力で蹴られたんだろうな……。

 いや待て。青タン? ってことは……すぐさっき、いや、昨日とかに殴られてるってことか…?


 許せねぇ…。


「よし。次は…」


 体……なのだがなぁ……。

 背中は優しく……前は……どうしよう。

 こういうのって俺がやっていいものなのか? ダメに決まってるに決まってんだろいい加減にしろ。


「前は、やれるか?」

「……うん」


 俺がボディタオルを渡すと、前の方を洗い始めた。

 俺は後ろを振り向き、タオルを取る。それと、ドライヤーも用意しておいてっと……。


 体を洗い終え、シャワーで泡を流し…。

 タオルを使って体を拭く。そして、髪をドライヤーで乾かす。


 髪触ってて思ったが、とんでもなくサラサラしてんなぁ。もしかして外国の方の親なのか?

 いや、でも日本語ペラペラっていうか、喋れてるしなぁ……。


「よし。おしまい」

「……可愛い…」


 花畑が子供が出来た時にと張り切ってた時に買っていたパジャマワンピースを着せてみた。

 黄色い綺麗な髪に青い目。そこに噛み合せるように純白のワンピースは最強だな。


 リビングに向かうと、花畑と哲殻。その他の奴らもソファに座っていた。

 俺は頭を抑えため息をつく。


「てめぇら寝てろって言ったろうが…」

「あんな姿見せられて寝れるわけないでしょ?!」

「そうそう! 若だけ独り占めはダメっすよ!」

「何が独り占めだ! 殴られてぇのか?!」


 後ろの奴らが花畑と哲殻の言葉にそうだそうだと囃し立てる。

 俺が拳を見せた瞬間、シーンと静まり返った。


「……はぁ…こんな奴らだが、大丈夫か?」

「……賑やか…」


 ならいいんだが……。

 俺はリビングの椅子に座り、テーブルに肘を置いて頭を支える。

 俺の膝に嬢ちゃんが座ってきた。


「……ここ…がいい…」

「……そうか」


 なんだ。十分に可愛いじゃねぇか。

 ……おい。ブーイングするんじゃねぇ。コイツが勝手にやってきたことで……。


「あっ、名前決めるか」

「え、決めてなかったのか?」

「ずっとお嬢ちゃんって呼んでましたもんね。若」


 俺が頷くと、花畑が頭を抑える。


「いいか? 名前ってのは凄く重要なんだ。ちゃんと決めてあげなきゃダメだぞ」

「じゃあ募集するか」

「んな、掲示板の安価みたいなやり方しないでください!!」


 誰に伝わるかも分かんないネタをぶっ込んできやがったよコイツ。

 すると、後ろのヤツらがハイハイハイと手を挙げ始めた。


「石田千裕!」

「珀啼照繋!」

「長井まひる!」

「千葉香織!」

「てめぇらが妹にしてぇだけだろ!! 苗字じゃねぇんだよ! 名前つってんだよ!!」


 俺がキレると、えぇ? となんか残念そうな声と顔をしだした。

 お? 今すぐお前らまとめて喧嘩してやるが? やるか?


「じゃあ、花畑優華だな」

「いや、白城明音だろ」

「話聞いてなかったのか。このロリコン共め」


 すると、そんなことは置いておいてと花畑が言う。


「羅救は?」

「……ほぉ? どういう意味?」

「羅って言うのは、あみ…とか、とりあみとかの意味。救はそのまんま救うってこと」


 なるほど。捕り網は捕まえる。救は救うを意味してるわけか。


「もうちょい捻りは無かったのか?」

「捻ったろ十分!!」


 哲殻が煽ると、花畑が血管を浮かべてそう言った。

 まぁ、いいよ。それで。と言うと、みんなが拍手をする。


 コイツらのいい所だ。


「今度からお前の名前は、檻鉄羅救だ。よろしくな」

「…羅救……。うん。よろしく……えっと……若?」

「う〜ん、若って呼ばれるのはなぁ…それに、同じ名前だし……」


 嬢ちゃん……羅救はじゃあ、と口を開く。


「お兄ちゃん……なんてどうかな…」


 俺は、ニッコリと笑い、頷いてみせる。


「100点」

「100点」

「無量大数点」

「不可説不可説転点」


 後ろのヤツらがなんか言って…おい待て、なんだ「ふかせつふかせつてん」って?

 俺の反応に、花畑は馬鹿っすねと煽り、俺がそれに反応すると、笑いが起きる。


 羅救もそれを見て、ほんの少しだけ笑っていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ