父様の腕の中
アルヴィスさんVSリフレシア……
「リ……フレシア、リフレシア。ごめん、ごめんよ」
ソファーから立ち上がり私の隣に座った様は私を強く抱き締めます。
「父様?」
「リフレシアを……君を失うの事に怯えるあまりに方法を間違えてしまった。不甲斐ない私を許しておくれ」
「……」
「リフレシア、よく聞いておくれ。私は、皆は今此処にいる君を愛しているよ。それは何があっても変わらない。……君がずっと恐れていた事に私達は気付いてやれなかったんだね。ごめん、親として失格だ」
「……っく、ふっ、う、うぅ〜」
涙をこらえきれませんでした。
「泣いていいんだ、リフレシア。私達はどんなリフレシアでも愛しているよ」
「……っっ、う、うえ〜ん!」
堪らずに抱き着いた父様の胸は広く逞しく一番安心出来る場所で、私を包むこの腕はいつだって護ろうとしてくれる。
何故信じなかったんだろう。
こんなにも優しく温かい人達を。
「リフレシア、思う存分泣いたらいい。令嬢らしくなくたって、他の誰かが眉をひそめって、私達は変わらず君が愛しいよ」
限界でした。
この世界に、リフレシア・サマーセットとして転生してから今まで、全てを明かせないジレンマを胸に抱えつつ、惜しみ無く与えられる愛情に罪悪感を持ちながらも手放せなかった。
隠し事なんて、嘘なんてつきたくなかったけれど、知られて失う事が怖くて……皆が愛しくて。
「う、うわ〜ん!!!」
私の中の何かが壊れて、溢れた気持ちは声になり外へと流れてゆく。
幼子の様に涙とともに憚らず叫ぶ私を、父様は抱き締めながら宥める様に優しく背を撫でてくれます。
どれだけそうしていたのでしょうか。
胸の中の激情が凪ぎ、泣きすぎてほわほわとした気持ちで父様を見上げたら、目尻に涙を浮かべた優しい笑みがありました。
安心してへにゃりと笑って、大好きな父様の胸にすり寄ります。
「……っ、リフレシア、疲れただろう?少し休みなさい」
「……、父様何処かに行っちゃうの?やっ!」
離すまいとぎゅうと父様に抱き着きます。
「ふっ、私は何処にも行かないよ。ほら、ベッドで横になりなさい」
「父様も一緒に寝てくれる?」
「リフレシアがそうして欲しいなら」
こくりと頷くとともに身体に感じる浮遊感。
ゆらゆらと優しい振動は泣き疲れた私を眠りへと誘います。
柔らかな布団の感触と温かい安心出来る父様の腕の中で私は眠りに落ちたのです。
……数刻後、目覚めた私は当然父様の腕の中で。
最初は何が起こったのか全く解らず、ぽかんと口を開け慈愛に満ちた微笑みを浮かべる父様を見つめました。
「おはよう、リフレシア。気分はどうだい?」
「……おはようございます、父様。頭が痛いです(二重の意味で!)」
「ははっ、あれだけ泣いたら頭も痛くなるよ。今、アリアが冷やしたタオルを取りに行ってる。目も随分腫れてしまったからね」
クリアになる記憶に羞恥でいたたまれなくなる私。
やらかしました……
いくら我慢していたとはいえ、あれは無いです。
貴族の子女は産まれおちた時から親とは別の部屋で過ごします。
お世話する使用人に任され、共に寝る事などありません。
しかも9歳にもなるのに大声で泣いて駄々をこね、一緒に寝ろと離さないなんて……
「あの……ごめんなさい、父様」
「何がだい?」
「いえ、あの、その……」
何をどう言えば良いのかわからずに言い淀んでいると父様の身体が揺れました。
「くすくすっ、リフレシアは案外甘えただったんだね?」
「っっ、ご、ごめんなさい!」
「どうして謝るんだい?私はリフレシアが甘えてくれて嬉しいのに」
「ほえっ?う、嬉しい?」
父様の笑みが深まります。
「うん、とても嬉しい。私はリフレシアが心を預けてくれた事がこの上なく嬉しい」
「父様……」
「ごめんよ、私は間違えていた。リフレシア、君は想う様に生きなさい。私達はそれを助け、見守るから」
「…………」
「だけど忘れないで。私や家族は君を愛している事を。……どんな君でも愛しているよ、リフレシア」
「……ありがとう、父様」
再び抱き締めてくれた父様の腕の中は、何故か今までよりも安心出来たのでした。
次回の投稿は7/24です。
アルヴィスさん、正気に戻って良かった、良かった。




