「おばけ退治、なのです!」
わたしのママはねこみみ魔女でパパは人間勇者。だからわたしはねこみみ勇者。
昨日の夜、恐ろしいものを見てしまいました。
――おばけです。
夜中、おトイレに行こうとしたら白いのがすーって出てきたのです。
これは、もう、専門家を呼ぶしかありません。にぅ。
というわけで。
「あは、おばけがこわいだなんて、ねこみみ勇者は子供ねっ!」
聖女ちゃんが来てくれました。聖女ちゃんは、聖女なのでおばけとかには強いはずです。たぶん。あと本物のおばけは子供じゃなくてもこわいと思います。
……ほんとうは聖女先生の方に来て欲しかったのですが、「うちの娘の修行にちょうどいいわねっ!」っていわれて聖女ちゃんの方が来ることになったのです。
聖女ちゃんは聖女なので、いわゆるアンデッド系の魔物に対しても対策を勉強してるそうなのですが、平和な村ではなかなかそういった修行を積む機会がないので、今回の話は聖女ちゃんにとっても良い話だったようです。
まずは明るいうちに現場検証です。
「ここを曲がったら、白いのがすーって、こっちからこっちに横切ったのです!」
「ふーん」
せっかくわたしが説明したのに、聖女ちゃんは興味なさげです。すんすんと鼻をならして首を傾げるだけでした。
おばけなんだから、たぶん夜にしかでてこないでしょう。なので夜に備えで早めにお休みします。
聖女ちゃんが「あんたのベッド、なんかおしっこくさいわ」って言って弟魔女のベッドに潜り込みました。
しつれーです。
――そして真夜中です。
今日は最初からローソクを用意しておいたので、真っ暗ではありません。とはいえ、小さなローソクひとつではそれほど照らせぜず、むしろ影が炎のゆらめきでちらちらって揺らいで、ただの真っ暗闇より余計にこわい気がします。
びくびく。にぅ。
「さあ、おばけ退治よっ! あはっ!」
……聖女ちゃんがとても元気です。左手に聖印を握り締めて、わくわく顔です。
わたしは聖女ちゃんの右腕をしっかり抱いて、反対の手には伝説の聖剣をもって進みます。
弟魔女はママと一緒に寝ているので、二人だけです。
「……昨日はこの辺で……」
出たのです、と続けようとした瞬間に。
すーっと白い影が。
「出たわねっ! あくりょーたいさんっ!」
聖女ちゃんが聖印を握り締めて、気合を込めて叫びました。
しかし。
白い影はわたしたちをあざ笑うかのように、何事も無くふわふらと宙をまっていました。
「うそ、あたしのターンアンデッドが効かないなんてっ!?」
「だから言ったです! ほんもののおばけなのですっ!」
どどどどどうしましょう。
専門家に任せたら大丈夫かと思っていたら、たよりにならなかったですっ!?
「おば、おばけとかいるわけないしっ!?」
「目の前にいるですっ!?」
二人で抱き合って、あわあわしていたら。
「……きゅ?」
って。
あれ? なんだかこの白い影に見覚えがあるような。
「えーっと……妖精さん、なのです?」
「きゅ」
なんだかいつもより頭が軽いと思ったら。
妖精さんのはねが、ぼんやりと暗闇の中で光って、まるでおばけみたいに見えていたようです。
「……もう、人騒がせねっ!」
強がった聖女ちゃんでしたが。……床に水溜り、できてるですよ?
……ところで、今気がついたのですが。わたしも聖女ちゃんも両手がふさがっていたのに。
ローソクはいったい誰が持っていたのでしょう……? にぅ?




