「ライバル、なのよっ!」
あたしのママは超聖女、パパは勇者。だからあたしは勇者聖女なのよ。あはっ!
なんだか最近、ねこみみ勇者に負け越してる気がするから、そろそろ勝とうと思うの。
こっそり庭から覗き込んだら、今日はあの凶悪なねこみみ魔王はいないみたい。ねこみみ勇者がひとりで棒切れを振り回してるのが見えた。
あんなので修行のつもりなのかしら。構えも振り方も、てんででたらめで、ぜんぜんだめじゃない。
……って、よくみたら棒切れじゃなくて丸めた新聞紙じゃない。あは、ばっかみたい。
……抜き足。差し足。忍び足。
こっそり近づいて。
「あはっ! ねこみみ勇者! 勝負よっ!」
声をかけてからなら、卑怯者じゃないんですー。例え背中から襲い掛かってもね!
でも、思いっ切り振り下ろしたあたしのひのきの棒SPマークIIIは。
「……にゃ?」
こちらを振り返りもせず、振るわれたねこみみ勇者の丸めた新聞紙にはじきとばされた。
弾き飛ばされたどころか、空中で三つに切り裂かれてばらばらになって散らばった。
新聞紙のくせにっ! ナマイキだわっ!?
「聖女ちゃん、こんにちわなのです。あいさつ代わりに棒でなぐりかかるのはやめて欲しいのです……」
「ううー! ひどいじゃない! またあたしのひのきの棒を台無しにしてっ!」
悔しいわ。何が悔しいって、あたしなんかまるで相手にしてないところが、ちょっとカッコイイっておもっちゃった自分が悔しすぎるわ!
「ごめんなのです。あたらしい武器にまだなれてないのです」
しゅん、とねこみみ勇者のねこみみが力なくへにゃった。かわいいじゃない。ふんっ!
腰に丸めた新聞紙を差したねこみみ勇者は、見た目はあれだけどなんだか様になっていた。
へっぴり腰なのに時々妙に鋭い一撃が出るのは、勇者の血なのかしら。それともただの会心の一撃かもね。
ふん。まあいいわ。
でも、ひのきの棒、どうしようかしら……。
んー。もしかして、元が木なんだし回復魔法使ったらくっつかないかしら?
「えい」
あら、意外にいけるわね。さすが聖女の回復魔法よね。
なんていって世界一ィィィなんですからっ!
「……回復魔法で武器が直るとか、聖女ちゃん、すごすぎなのです!」
ねこみみ勇者が、目を丸くしてびっくりしてる。
これ、今回はあたしの勝ちってことでいいんじゃないかしらね? あはっ!




