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過去拍手 4 (三章 一学期~「いくよっ!」以降推奨です

紗綾が黒田と塾の話をしている一方では……と言った話です。






「紗綾、少し遅れそうだから先にはじめてって言ってたよ」

一条と美術室に入ると、日比谷から伝言を受けた。

「何か有ったのか?」

 即座に心配気な顔をする一条。

 藤堂はよく怒りっぽいとか言っているが、こいつは本来そんなに感情を表に出す奴ではない。

 ただ、藤堂に関してだけは感情を抑えきれていないだけだ。

 とは言え、俺もなにかとトラブルメーカーなあいつのことは心配で、尋ねるような気ちで日比谷を見ると

「黒田を待つそうだよ」

 この前あいつの口からも出ていた名前を出す日比谷に

「黒田って藤堂のクラスの? 何か有ったのかあいつ」

 更に眉間の皺を深くする一条、この前藤堂が名前を出した時も困ったような顔だったのを思い出して、自分の顔も険しくなっているだろう事が判る。


 あいつのクラスの黒田と言ったら、鋭い目付きに中学生とは思えない体つき、荒れているというほどではないが雰囲気が怖いと、女子ばかりか男でも苦手にしている奴は居て。

 クラスが違うためよく分からないが、いつも彼女と言われる女生徒と一緒にいるのもあってか、あまり良い評判を聞かない。

「ん~、確かに妙に恐れられたりはしているみたいだけど、悪い奴じゃないみたい、素直じゃないというか、ちょっとひねているせいで紗綾とは良くじゃれてるけどね、昔なじみというか、恩人? らしいよ、最初黒田君とか言い出した時は私も驚いた」

「あいつが……君付け?」

「珍しいよね? そう言ったら敵じゃないから、だって」

「敵?」

「紗綾にとって一回でも攻撃してきたら敬称には値しないんだって、だけど彼は小学校で同じクラスだった時も一回もそういうことは無かったらしいよ、それにその時、助けても貰ったとか、だからあの子は黒田を恐れなくてね、黒田関係の用事をよく頼まれてるんだ……まぁ、待ってれば来ると思うよ」

 そう言ってキャンパスに向かう日比谷の邪魔をするわけにも行かず、後ろの方のいつも使っている席に向った。


 取り敢えず、藤堂が来るまで二人で勉強をするつもりで、お互いの苦手科目のテキストを交換して確認作業をしていくが、なかなか頭に入って行かない……埒があかず時計を見ようと顔を上げると、目の前の一条は手を止め俺の方を見て居て

「A組の黒田って、あのでかくて目が鋭いやつだよな?」

 目が合うなり確認するように言ってきた。

「ああ、多分そうだと思う、立原の話からもそんな外見みたいだし」

「あまりガラが良くないとか、いつも女と一緒にいるとか言う噂しか聞かないんだが、まぁ、噂を鵜呑みにするのもどうかとは思うが、……何であいつはいつもこう面倒事と関わるんだ」

「トラブル呼ぶ所あるよな、しかし、プリント受け取るだけにしては遅い……」

 すると、思わずというように一条が席を立って

「見てくる」

 というのを、慌てて止める。


 ――こいつ、完全に何でこんなところで勉強しているかを忘れている。

「お前が行ったら余計まずいだろ、面倒なことになりかねない、俺が見てくる」

 そう言うと、ちょっと悔しそうに、そうだった……、なんて椅子に皺って

「頼む」

 あいつが言って来るのに

「任せろ」

 頼まれなくても、気になって仕方なかった俺も、もどかしげに俺を見る一条の視線を背中に感じながら教室を飛び出た。


 人気の少ない廊下を教室目指して早足で歩く。

 走りたくなるけれど、教師にでも見つかれば却って足止めされるから、かろうじて歩いていると言える速度で……。

 漸くたどり着いた教室の前で教室を覗くと誰かと話し込んでいる藤堂が居るのを確認して声をかけた。

 すると、ぱっと顔を輝かせて俺の所へ寄ってきて、丁度良かったと嬉しげに黒田と出かけるから美術室にはいけないなど言い出して、皆にもそう伝えてと頭を下げ、挙げ句、そのまま俺達の勉強の心配など言い出す始末。

 俺としては、何故黒田と? というのが一番聞きたいところだったが、全身で急いでますという様子に、取り敢えずお前の数学はどうするんだと聞けば、案の定自分のことは後回しだった。

 その如何にもなこいつらしさに仕方ないかと、テキストを預かることを提案し、受け取ろうと伸ばした手は、捕まれたあげく拝まれて……。


「いいから渡せ」

動揺を隠し言うと、急いでカバンからテキストを取り出し、ごめんねと言葉を落としつつ、黒田の腕をつかんであっという間に教室を出て行った。

 そうやってあいつに腕を取られ、強引に引っ張られていく黒田は噂通りの迫力もなにもなく、美術室へを戻りながら、なんだか厄介なことになりそうな予感を止められなかった。


 美術室へ戻りドアを開けると

「紗綾居なかった?」

 と、日比谷は俺一人なことに驚いたようだ

「いや、それが……」

 どうせなら、二人同時に説明しようと一条を見ると、察したように前へやって来る。



「……ごめんって伝えてくれって言って、黒田の腕掴んで飛び出していった」

 そう、俺が迎えに行った状況を話し終えると、日比谷はため息を付き、一条は眉間に皺を寄せる

「どんな用事かは聞いてないんだね?」

「ああ、兎に角急いでて聞く余裕もなかった、それで、藤堂が居ないのにどうかとも思うんだが、このままここ借りてテキスト仕上げてもいいか? 借りたテキストで答えの確認と、あいつの数学の解説の書き込みをしたいんだが」

「別に構わないよ? 私が居る間なら、別に紗綾だけに開放しているつもりじゃないし」

 そうさらりと日比谷に言われ

「ありがとう、助かる」

 そう言って一条を奥の席へと促す。

 その顔を見れば言いたいことも聞きたいこともまだありそうだったけれど、いまは引き受けたことをこなすのが先だと思ったから

「とにかく塾には来るみたいだから、そこで聞こうぜ? これ仕上げなきゃまずいし」

 そう提案すれば、一条は諦めたように判ったと頷いた。



ちょっと時間に余裕があったので、久々の過去拍手です。

拍手は勢いで書いているところがあるので、改めてみると結構細かい改変が必要で当時そのままupしていた事を考えるとあわわとなったりします


少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

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