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サンドウィッチ専門店

閲覧注意としては、本編&番外編も読了後でないと状況がわからないと言う中々な仕様となっておりますので、お気をつけ下さい。


「木曜の放課後空いてるか?」

 朝の公園での勉強会の終わり際、一条はそんなことを言ってきた

「約束しただろ? 今度は俺の番、サンドウィッチ専門店興味ないか?」

「何それ? 美味しそう! ケーキの種類が多いとこでも、サンドウィッチは3種類位だよ」

「だろ? だから、お前向きかなって、どうだ?」

 とっても魅力的なそんな提案、私が断るわけもなくて


 そのお店は高校から数個離れた駅を降りて、右に曲がり次は左? その後は何回かくねくね曲がった……その先にあった。

「え……こんなにあるの?」

 こじんまりした作りの可愛らしいお店なのに、そのショーケースを前に目が釘付けになった。

 本来ならカラフルなケーキが並ぶそこには、定番から少し変わったものまでずらりと並ぶサンドイッチ……その上、壁に貼られたメニューを見るとホットサンドなんてものまであるという。

 結果、私はさんざ目移りしつつもキャロットラペとキーマカレーが一緒に挟まっている変わり種、目の前の一条は卵サンドなんてど定番のものを頼んでいて。

 ……でも、ふっくら柔らかそうな白パンに挟まれた、自家製マヨネーズ使用とあったクリーミーな卵ペーストは……それもすごく美味しそうで


「なんか一条とどっか行くと、いつも迷ってる気がする……」

「良いじゃないか? 眼鏡と違って何度も選べるし、なんなら全制覇だって出来るだろ?」

 ふっ、と、鼻で笑うのに意地なのか食い意地なのかわからないものがもぞりと動くも、自力では難しそうなことに気がついて、ちょっと悔しい

「う……、したい…けど……無理だよ、私多分自力でこんなとこ辿り着けない」

  そう、なんだよなー、自他共に認める方向音痴は伊達では無い。

 降りるのも初めての駅で、かつ、何回もクネクネと曲がるような場所、自力で次にたどり着けるなんてとても思えなくて

「何度でも連れて来るから、心配するな」

がっくりと項垂れる後頭部に降って来た言葉に、えっ? ってなる

「次は割り勘なんだろ? ここでも良いんじゃないか?」

そうだった、一条との約束には次があったんだった

「あ! そうそう、次割り勘なの約束だからね? でも、ここで良いの?」

 お礼のつもりの先日の喫茶店、だけど一条にはこだわりがあるらしくて今回は一条で次でやっと割り勘を受け入れてくれるらしい。

 借りっぱなしは気持ち悪いから、次が決まれば嬉しいけど同じ場所の繰り返しでは一条にはどうなんだろう? って思ってたんだけど

「俺はどこでも、なんなら全制覇付き合うぞ? たまには定番外してみるのも面白そうだ、お前のも旨そうだし」

「めちゃめちゃ美味しいよ! 人参はシャキシャキだし、中に入っているレーズンがラペにもカレーにもどっちも合ってて!」

「……気に入ったようで良かった」

 人参の爽やかさとレーズンの甘みに、キーマカレーの風味が混ざると普通にカレーを食べるのと全然違うのが楽しい、食べ終わるのが惜しいなんて思いつつ、最後の一口を口に入れると、一条は口元を押さえていて、伏し目がちなので表情がわかりにくい ……でも、眉間の皺は無いし目元が緩んでいるのから…笑いをこらえてるって判る。

「良いよ、我慢しないで笑ってくれて、食い意地張ってるのは自覚あります」

 ちょっと恥ずかしいのをごまかすように、セットのアイスティーをこくりと飲んだけど、これまたすごく香りの良いアールグレーで……

「っ……くっ、ははっ……お前、分かり易すぎだ」

 そりゃ、笑っていいって言ったけど、そこまで? って勢いで吹き出すのに珍しいなと思う。

 もう、好きなだけ笑ってなよと、壁に貼られたメニューを眺めていると、店内に小さめの音量でBGMが流れているのに気づいた。

 会話を邪魔せず、ふとそれが途切れた間を埋めるような軽やかな音色。

 壁紙はレンガ調のダークブラウン、カーテンは柔らかく外からの光を受け止めていて、食事を終えてぐるりと店内を見回せばこのお店自体もとても趣味が良いことに気がつかされる。

 時々、センスが先走って居心地が悪くなるお店もあるけれど、ここはホッと息をつける感じ……思わずため息をついて、ソファーの背もたれに体を預けてみると、フカリと優しく包まれた。


「素敵なお店だね、ここ、好きだな」

 やっと笑い終えたらしい一条はそんな私の言葉にちょっとびっくりした顔をしたけど

「……俺も、好きだ」

 少し震えているようにも感じた小さな声。

 その声も笑顔も優しくて……なのに、何でかな? その視線を見つめ返すのに、少し躊躇ってしまったのは。

読んで頂きありがとうございます。

少し前にポコって出てきた話をupしてみました。



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― 新着の感想 ―
「……俺も、好きだ」には、絶対に別の意味がありますよね。紗綾ちゃんは気が付かないでしょうけど。いや、少しは何かを感じたかな…。 しっかり次回の約束を取り付けた一条君、頑張ってますね。
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