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シン・日本昔ばなし〜無自覚日本蹂躙物語〜  作者: 音無響一
第二章 シン・金太郎〜相撲じゃなくてプロレス技を覚えたら〜

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第一話 熊にクロスカウンターをぶち込む男

むかしむかし。


足柄山に、金太郎と呼ばれる男がいました。


男は、いつからか足柄山に来て、山の動物たちに囲まれていました。


なぜ男が足柄山にいるのか。


なぜ金太郎と呼ばれているのか。


それは、誰にも分かりません。


その日、男は足柄山を歩いていました。


男の周りには、鹿や兎、狐など、山の動物たちが集まっていました。


「おい」


男が立ち止まりました。


動物たちも止まりました。


「なんでさっきから俺についてくんだ?」


動物たちは答えません。


「なんか用か?」


やはり答えません。


男は少し待ちました。


「まあ、獣だからな」


すると、鹿が山の奥へ顔を向けました。


兎と狐も同じです。


「なんだ?」


動物たちは、それ以上先へ進もうとしません。


「向こうに何かいんのか?」


鹿が一歩下がりました。


兎は鹿の後ろへ隠れました。


「怖いのか?」


返事はありません。


男は山の奥へ向かいました。


「見てくりゃいいんだろ」


そのまま一人で歩き始めました。


しばらく山道を進むと、大きな足跡がありました。


さらに進むと、木の幹には大きな爪痕が残っています。


男はその前で足を止めました。


「熊か」


そのまま歩きます。


やがて、茂みが大きく揺れました。


ガサガサッ。


次の瞬間。


「グオオオオオオ!」


大きな熊が飛び出してきました。


立ち上がれば、男よりもずっと大きな熊です。


熊は男へ襲いかかりました。


大きな身体を起こし、左の前足を振り上げます。


そして、そのまま男へ振り下ろしました。


男は避けませんでした。


熊の左の前足が男へ届こうとした、その瞬間。


男の右腕が、熊の左の前足と交差しました。


二本の腕が、十字を描きます。


そしてそのまま、男の右拳が熊の眉間へ深々と突き刺さりました。


「グオッ!?」


熊の身体がぐらりと揺れました。


男は右拳を下ろしました。


「なんだこの熊。躾がなってねーな」


熊は頭を振りました。


「グルルルル……」


「まだやるのか?」


熊は男を睨みました。


男は少し笑いました。


「お前、ここで一番強そうだな」


「グオ!」


男の眉が動きました。


「あ?」


熊が止まりました。


「何鳴いてんだ。誰の許可で鳴いた?」


「グオ……?」


「また鳴いたな?」


熊は口を閉じました。


男はしばらく待ちました。


「返事は?」


熊は口を開きました。


そして、閉じました。


「学習したじゃねえか」


男は手招きしました。


「ほら、立てよ」


熊がゆっくりと立ち上がります。


「お前がここで一番強いんだろ?」


もう一度、手招きしました。


「来いよ」


熊は動きません。


「どうした?」


男は笑いました。


「さっきの威勢はどこいった?」


熊が低く構えました。


「そうだ」


熊が男へ突っ込みます。


男は真正面から受け止めました。


熊が押します。


男の足が地面を滑りました。


「へえ」


熊はさらに力を込めます。


「やるじゃねえか」


男は楽しそうに笑いました。


そして、熊の身体を掴みます。


「相撲だよ」


そのまま熊を持ち上げました。


「グオ!?」


熊の大きな身体が宙を舞います。


ドシン!


背中から地面へ落ちました。


男は倒れた熊のそばへ行きました。


「これが相撲だ。分かったら立て」


熊は動きません。


「おい」


熊がゆっくりと起き上がりました。


男は満足そうに頷きました。


「そうだ」


熊は男から少し離れました。


「おい」


熊が止まります。


「どこ行くんだ?」


熊が振り返りました。


男はその場を離れません。


「まだ終わってねえぞ」


熊も動きません。


「お前、力はあるな」


男の視線が、熊の太い首で止まりました。


「せっかくだ。相撲を教えてやるよ」


熊が一歩下がりました。


「今、お前の太い首を見て思いついた技があるから、やってやるよ」


熊がもう一歩下がりました。


男は眉をひそめました。


「なんで下がるんだよ」


熊は止まりました。


男は手招きしました。


「来い」


熊は戻ってきません。


「来いって言ってんだろ」


しばらくして、熊がゆっくり戻ってきました。


男は熊の前に立ちました。


「そうだ。まずは俺に向かってこい」


熊は動きません。


「どうした?」


男は少し離れました。


「さっきみたいに来いよ」


熊は仕方なく距離を取りました。


そして、男へ向かって走りました。


「そうだ」


熊が目の前まで来た、その瞬間。


男は熊へ飛びつきました。


その太い首に右腕を回します。


「グオ!?」


男は熊の首を抱えたまま、後ろへ倒れ込みました。


ドン。


熊の頭が地面へ突き刺さりました。


男はすぐに立ち上がりました。


「どうだ?」


熊は倒れています。


男は少し待ちました。


「いい技だろ」


熊は動きません。


「おい」


熊がゆっくりと頭を上げました。


「返事は?」


熊が口を開きかけます。


しかし、何かを思い出したように閉じました。


男も思い出しました。


「そうだったな」


熊はそのまま地面に伏せています。


「今のが相撲だ」


男は熊を指さしました。


「次はお前がやれ」


熊は動きません。


「できるだろ」


それでも熊は動きません。


男は念のため付け加えました。


「俺にやったら殴るからな」


熊は困りました。


男は辺りを見回しました。


近くには木しかありません。


「……相手がいねえな」


熊は少し安心したようでした。


その様子に男が気づきました。


「仕方ねえ」


熊の顔から安心が消えました。


男は腕を回しました。


「もう一回やるぞ」


熊が後ろへ下がりました。


「逃げんな」


男は熊へ近づきました。


熊も下がります。


「相撲だって言ってんだろ」


熊は首を振りました。


男が止まりました。


「お前、今断ったな?」


熊も止まりました。


「誰の許可で断った?」


熊は動きません。


男は手招きしました。


「来い」


熊は来ません。


男は少し考えました。


「じゃあ俺から行く」


熊が逃げました。


「おい!」


男が追いかけます。


熊も必死に逃げます。


足柄山を、大きな熊が走っていました。


その後ろを、男が追いかけています。


やがて熊は追いつかれました。


「捕まえた」


熊の首へ腕が回ります。


ドン。


熊の頭が、また地面へ突き刺さりました。


男は立ち上がりました。


「分かったか?」


熊は動きません。


男は腕を回しました。


「もう一回いくぞ」


その日。


足柄山では、何度も大きな音が響きました。


ドン。


しばらくして、


ドン。


またしばらくして、


ドン。


山の動物たちは、遠くからその様子を眺めていました。


誰も近づこうとはしませんでした。


夕方。


熊は地面に倒れていました。


男はその横に座っています。


「なかなか筋がいいじゃねえか」


熊は動きません。


男は少し待ちました。


「おい」


返事はありません。


熊の腹が、ゆっくりと上下しています。


「よく死なねーな」


男は柔らかい土を手で触りました。


そして、熊へ言いました。


「おい熊」


熊が、ほんの少しだけ顔を上げました。


「柔らかい地面で良かったな」


金太郎と呼ばれる男は、飽きるまで熊との相撲を楽しんでいるようです。


それがいつまで続くのか、誰にも分かりません。


数日後。


「飽きたな。そろそろ帰るか」


ついに金太郎と呼ばれる男は、下山するようです。


この男の目的はいったいなんなのか。


それは、誰にも分かりません。


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