Ch3.1 イッツァファンタジーワールド(1)
『――夢想幻想世界まで移転します。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。時間軸、移転先の安定を確認。――転送開始』
――意識が飛ぶ。
そして徐々に視界が晴れていく。今回は白一色の殺風景な景色が見えてこない。その代わりに見えてきたのは……。
これは……。
うーむ? 情報量が多いぞぉ。
……ずいぶんとカオスな雰囲気な空間にやってきたではないか。
赤、緑、黒、そして青色のゲートが僕たちの四方を囲みつつ大きく並んであって、……えーっと。その奥にそれぞれ、豪華絢爛なアーチ状の建物が目立つ砂漠、自然公園で見るような森や平原、どこまでも暗く大きく広がっている洞窟などと、お互い併存するのがおかしいエリアにつながっている。
……あと、アレはなんだ? 青いゲートは一見どこにもつながっていないと思ったら、その方向上の空中を見上げると大きい水球に囲まれたよくわからないモノが空中に広がっている。
……空中水中都市とでも言えばいいのだろうか。なんとその水球の中には建物や城など建造物が所々に見えるのだ。
1つ1つのエリアがとんでもなく広大でユニークだ。それぞれの舞台のギミックなどもそれぞれ違って、多分はかり知れないものなのだろう。
それら4つのエリアを総括すると……幻想的、と言えば聞こえはいいがなんとも乱雑でテーマも全く統一されていないので、……正直カオスだという印象が強い。
まさに夢に見ているかのようなランダムさ。相反しているエリアが共在しているのが、面白いとも、はては不気味とも取れる。
さてさて。なんとも変わった風景だが、これが1か月後の期間限定イベントの開催エリアなのだろうか?
つい先日4人で行った遊園地のように4つのエリアに分かれているようだけど。こちらの方が段違いに世界観が色々な意味で広い。
……いやあアレは楽しかった。4人で来てたのに突発イベントのアナウンスが来てからは、皆それぞれ別のエリアに走っていって思い思いに楽しんでしまったが、それはそれで良い思い出だ。
……っとと。脱線脱線。
「――で。淑女紳士諸君。……ご感想は?」
自慢げな笑顔をのぞかせるアデルバード所長。
……忖度しない意見を言うべきであろうか。
なーんか、足りないんだよなあ。
というのも、世界を構成すべき何かが、まるで1ピースだけ欠けているような感覚があったり、……なかったり。
「――めっっっちゃ楽しそうじゃないですか! さすが所長! デザインのどこらへんに力を入れたんですか? あとあの空中都市がすげえ気になります!」
コメントに迷っていたらカケルが興奮気味に答えてくれた。……おお。本心からの言葉のようだ。両手を広げてこの世界観を楽しんでいる。
あれれ? エミリも結構心なしか心躍る表情をしているな。先ほどの緊張も飛んでいて、色々なエリアに目をやってはじっくり観察している。
……意外と僕の感性こそが少数派なのかコレ。
うーん、なんだろうか。雰囲気的にも感覚的にもやはり何かが欠落しているように感じる。