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コロッセオ・プルガトリオ-より良き来世のための死後ライフ  作者: 栗木下
2章:刃を握る人々

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101:PvP-光-4

「せいっ!」

「『土刃(ソイルエッジ)』!」

「くっ……分かってはいたけど、慣れたペアってのは厄介ね」

 俺は魔力を放出しながらセフィルーラさんに素手で攻撃を仕掛ける。

 それに対してセフィルーラさんは剣を振るいながら後退。

 俺はそれを紙一重で避け、同時に後方に居るノノさんが『土刃』を放ち、ガラス片を含んだ土の刃がセフィルーラさんに襲い掛かる。

 が、そちらも今回は石柱を利用する事で回避されてしまう。


「それを言ったら、二人がかりでも攻めきれないセフィルーラさんの方が厄介なんですけど……ね!」

 既に何度も繰り返しているやり取りなので、俺はセフィルーラさんを追いかける形で接近。

 対するセフィルーラさんは無言で剣を突き出してくるので、これもまた俺はギリギリのところで避け……同時に、剣の腹に手の甲を当て、剣との接触部分にガラスのスパイクを生じさせる。


「ぐっ……ハリのそれも厄介ね!」

「と」

 セフィルーラさんの顔に僅かだが苦悶の色が浮かぶが、直ぐに剣の軌道を変え始め、俺への追撃を仕掛けようとしてきたので、俺は更なる接近を諦め、防具に傷跡を付けつつ退く。

 で、セフィルーラさんが痛みを訴えた理由だが……全力で動き回っている最中に、自分が予想していない場所で予想していない抵抗があったりすれば、関節に多大な負荷がかかる事になる。

 恐らくだが、その痛みが出て来たのだろう。

 個人的にはこの技術を伸ばしていけば、相手次第では得物を奪い取ったりも出来そうな気がするが……今の俺にとっては無いものねだりなので、考えないでおく。


「『土矢(ソイルボルト)』!」

「『光よ穿て』!」

「させるか!」

 と、俺が退いたタイミングでノノさんの攻撃と、セフィルーラさんの魔法による攻撃が行われようとして、俺は慌ててセフィルーラさんの左手とノノさんの間に体を割り込ませる。

 身体に感じたのは矢のようなものが突き刺さるような感触。

 だが浅い。

 布地を貫いて肉には届いているし、刺さった腕からは血が出ているが、この程度なら問題ない範疇だ。

 そして、俺の腹の横を通り抜けていった土の矢は……かすり傷程度か。

 では痛み分け。


「うおらぁっ!」

「ちいっ! アタシをここまで……!」

 なので俺は再び前に出る。

 セフィルーラさんも剣を振って、俺に対処する。

 ノノさんもセフィルーラさんの魔法を警戒しつつ、次の攻撃の準備を始めている。

 俺とセフィルーラさんはどちらも致命傷や大きな傷は負っていないが、小さな傷は積み重ねていて、俺が積極的に攻めている事もあって治療の暇も与えていない。

 ノノさんは無傷だが、魔力回復のポーションは既に一つ使っているようなので、どこかで息継ぎが必要かもしれない。


「はっ!」

「ここぉ!」

 が、そんな暇がない。

 セフィルーラさんぐらいの闘士ならポーションの類は確実に持っていて、ここで時間を与えてしまえば、此処までのダメージの積み重ねが帳消しになってしまう。

 俺も実を言えば傷を回復するぐらいのポーションなら持っているが、質も量もセフィルーラさんより少ないのは闘士歴から考えて確実。

 俺の魔力を吸わせることによって多少の不調を与えているかもしれないが、それは期待できるほどじゃない。

 つまり、消耗戦はこちらが不利になる。

 だから俺は攻め続け、セフィルーラさんが振るう剣に横から触れて、ガラスのスパイクによる急停止でセフィルーラさんの手首に負荷をかけていく。


「ぐっ……これだから特化型は……」

 手首にかかる負荷に耐えかねてか、セフィルーラさんが真後ろ……には柱があったためか、斜め後ろに飛ぶ。

 俺はそれを素直に追いかけようとし、柱の横にまで踏み込む。


「『光あれ』!」

「!?」

「キャアッ!?」

 そのタイミングでセフィルーラさんの左手が激しく発光。

 闘技場を埋め尽くすように閃光が広がっていく。

 俺は反射的に強化魔法を使って、閃光を防いでいた。

 だから、セフィルーラさんの動きが……閃光を放つと同時に、横へ跳んで行く姿が見えた。

 なので、俺もそれを追いかけて跳ぶ。

 ノノさんは……閃光をもろに浴びてしまったらしく、顔を抑えて、その場に伏せた上で、手近な石柱の陰に向かって転がっていこうとしていた。


「っう!?」

「その光なら……」

 セフィルーラさんの顔が歪む。

 どうやら俺が目つぶしを喰らわなかったのが想定外だったらしい。

 だがそれで慌てても、迎撃そのものは極めて冷静なもので、翼の魔法を使って空中で体を回転させ、自分に向かって踏み込んでくる俺の頭目掛けて剣を振るってきている。

 退くか、進むか、一瞬にも満たない時間俺は悩み……進む。


「受け止め……」

 進んで、瞬間的に強化できる限界のレベルで額を守る鉢金に魔力を集めて、強化魔法を発動。


「ぐっ!?」

「うっ!?」

 甲高い金属音が響く。

 俺の鉢金とセフィルーラさんの剣がぶつかったのだ。

 そして、一つの想定外が起きてしまった。

 当たる角度が悪かったのか、予想よりもセフィルーラさんの剣が強かったのか、俺の視界が激しく揺さぶられたかのようにぼやけていく。


「まずっ……」

「ーーーーー!」

 ぼやけた視界、はっきりしない音、動かない体の中でセフィルーラさんが動く。

 右手首が完全におかしくなったのか、剣を捨て、左手を前に突き出し、そこに光が集まっている。


「ーーーーー!?」

「ごはっ……」

 セフィルーラさんの左手から伸びた光の刃が俺の首を貫く。

 致命傷だ。


「ーーーーー!」

「ーーー!?」

 だが同時にガラス片を含む土石流がセフィルーラさんに襲い掛かり、俺ごとセフィルーラさんの身体を飲み込む。

 ノノさんの『土波(ソイルウェイブ)』だ。


「ー! ーーー!?」

「ー……」

 しかし、何かしらの方法によって凌がれてしまったらしい。

 セフィルーラさんがノノさんに向けて左手を伸ばし、光を放った。


≪決闘に敗北しました。肉体の再構築後に所定の場所へと転送いたします≫

 そして、俺たちの敗北を告げるアナウンスが響いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ハリ君に首輪をつけよう(首回りの防御用)
[一言] 筋肉は裏切らないけど、関節は裏切りますからな。 鉢金で流血による目潰しは防げたけど、衝撃による目眩は防げなかったようで。首にも強化が必要でしたねえ。 善戦できたとはいえ、地力と経験の差は…
[一言] うーん惜しい!後一歩のところで負けちゃいましたか。もし次に戦う機会があったら今度こそ勝ちたいものですね。
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