Ⅸ
ある日、ゆきちゃんが倒れた。
高校で授業を受けている最中だったらしい。
最近彼女の顔色が悪いことに気が付いていたが、軽い寝不足だと言って笑っていた。
僕は心配になって、彼女に連絡をいれ高校まで迎えに行くことにした。
返信はないが、気づいてくれているだろうか。
最後の授業が終わり、ベルが鳴る。
部活動へ行く生徒、帰宅する生徒と様々な人が校門を通ったがゆきちゃんの姿は見えない。
まだ救護室で休んでいるのかな、、、。
しばらく待っていると、ゆきちゃんが校門から出てきた。
隣には男の人がいた。
仲良さげに顔を寄せて話す彼女を見ていたくなくて、僕はその場から逃げ出した。
ゆきちゃん、彼氏がいたんだ。
最近はずっと僕といるから、そういう人はいないと思ってた。
そうか、大切な人がいるんだ。
嫌だ、嫌だ、嫌だ!!!
ゆきちゃんの傍いいるのは僕だけがいいのに!!!!
あの男さえいなければ、1番傍にいるのは僕だ。
あんな男、消えてしまえば、、、、
そこまで考えて、僕は我に返った。
僕は今、何を考えた?
自分のことが怖くなった。
まるで、僕が僕ではないかのようだ。
胸の奥に溜まったもやはすでに異臭を放ち始めてる。
もうすぐごはんを食べにゆきちゃんが来る。
今はゆきちゃんの顔を見たくない。
僕は覚束ない足取りで、家とは反対方向へ歩き出した。