ⅩⅩⅩⅢ
ゆきちゃんが死んだ。
昨日の夜にゆきちゃんから、電話が入っていたが僕がそれに気がついたのは翌朝だった。
ゆきちゃんは昨日の夕方から検査入院をすると言っていた。
何かあったのかと思い、すぐに電話をかけたが出たのは廉士さんだった。
「詩晴、落ち着いて聞けよ。
みゆが、昨日病院の階段から転落して、、、死んだ。」
僕は呆然としてその場に立ち尽くした。
「なに、言ってるの。冗談きついよ、、、ゆきちゃんに代わってよ。」
僕の声は掠れて、震えていた。
「しは、る。みゆがもう、うご、かないんだ。わらって、くれないんだ。
なんで、かな、やっと、しあわ、せになったのに。あんなに、嬉しそう、だったのに。」
電話の向こうで泣き崩れる廉士さんの声にやっと、ゆきちゃんにはもう会えないのだと理解させられた。
彼女の死を認めたくなかった。
明日退院すると言っていたのだ。
すぐに会えると言っていたのだ。
まだどこにも行ってない。
何も約束をしていない。
全て、これからだったのに。
ゆきちゃんは、幼児を庇って落ちたそうだ。
彼女の死は事故死として処理された。
ゆきちゃんは世間から見たら僕の身内ではないのだ。
例え葬式に呼ばれていても、僕は学校を休むわけにはいかなかった。
悲しみを押し込め、学校ではいつも通りに過ごした。
放課後、友人と別れ一人になったとき、押さえきれなかった悲しみ、絶望が溢れた。
何故、ゆきちゃんが死ななければならなかったのか。
何故、電話をとれなかったのか。
何故、ずっと傍にいなかったのか。
何故、何故、何故。
いくら自問自答を繰り返しても、ゆきちゃんはもう帰って来ないのだ。
僕は、一生僕を許せない。




