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空はやさしくて、冷たい  作者: 上條 詩晴
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ⅩⅩⅣ

僕は一度帰ってからある場所へ向かった。

少し高級住宅街に入ったところの一軒家の前で止まり、チャイムを鳴らそうと伸ばした腕が震えていた。

反対の手で腕を押さえ、震えを止めようとするが酷くなるばかりだ。

怖い、怖い、怖い。

僕が向かったのは父親のところだ。

父は警察官だが酷く暴力性のある人だった。

母に愛してると囁きながら拳を振るう。

寝室からはいつも母の泣き叫ぶ声が聞こえていた。

僕や兄に暴力を振るうことはなかったが、その存在を認識していたか分からない。

これでもまだ警察官を続けているのだからすごい。

離婚が成立してから父と会うのはこれが初めてだ。

足が震える、視界が狭まる。

踵を返して来た道を引き返そうとすると後ろから声をかけられた。

「お姉さん、僕のお家に何か用事?」

僕の口から乾いた笑いが出た。

この少年は今"僕のお家"と言った。

つまり、父と新しい奥さんとの間にできた子供だ。

僕や兄がいるのだからあの人が性欲ゼロな訳ではなかろう。

でも、この少年は当時の僕たちのような暗い印象はない。

8年の間で父にも何か心境の変化でもあったのだろうか。

「こんにちは。君のお父さんに用があってきたんだ。今日はお家にいるかな?」

そう尋ねると、少年は無邪気に笑って僕を家にあげた。

案内されたリビングには楽しそうに話をしている女の人を慈しむかのように見つめる父の姿があった。

人の気配を感じてこちらを向いた父が僕を見つけると、彼の目から涙が溢れた。

「お父さん、どうしたの?どこか痛い?」

僕の隣にいた少年が不安そうに尋ねると、父は涙を拭いながら優しく微笑んだ。

「悟、お母さんと遊んでいなさい。

お父さんはお姉さんにちょっとお話ししてくるから。」

僕は父の仕事部屋のような場所へ連れられた。

2人きりになり、戸惑いと不安、恐怖が足元からかけ上がってきたが、どうにか堪えて、父と向かい合った。




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