ⅩⅩⅠ
部屋を出た僕は扉の前に座り込んだ。
キスをした。
目元だったけど、唇にじゃないけど、キスをした。
我慢、できなかった。
僕のことで涙を流す君が可愛くて、愛おしくなって気持ちが溢れた。
僕は堪え性がないな。
あの日隣にいた男が義弟で、ゲイで、ゆきちゃんをそういう意味で好きになることはないと分かっただけで、こんなにも我慢できなくなるなんて。
それに、あれは反則だ。
僕にキスをされて、顔を真っ赤に染めていた。
単純な僕は期待、しちゃうよ。
それから僕は毎週日曜日、ゆきちゃんの部屋に通った。
あの部屋は廉士さんの部屋で、ゆきちゃんの部屋は隣の角部屋だった。
彼女の部屋は廉士さんの部屋より殺風景だった。
廉士さんの部屋は、綺麗だがちゃと生活感のある部屋をしていた。
しかし、彼女の部屋はそもそも物を殆んど置いていなかった。
あるのは小さなソファーと、クローゼット、備え付けの台所のみ。
冷蔵庫は辛うじてあったが、中には水しか入っていなかった。
殆んど廉士さんの部屋で生活をしているようだ。
この部屋には寝る為に帰るだけらしい。
僕は何で部屋に物を置かないのか聞いた。
ゆきちゃんから返ってきた答えは全く予想をしていなかったものだった。
「大切にしていても形あるものはいつか壊れてしまう。」
僕は唖然とした。
昔から身の回りに物が少ないとは思っていたが、こんな理由だったとは思いもよらなかった。
でも、僕からのペンダントと壊れてもまた別の物にして大切にしていてくれている。
そのことに僕は優越感を感じた。




