ⅩⅧ
"どうしてあなたがそれを知っているの?"
背筋が凍りついたのと同時に、少し悲しくなった。
ゆきちゃんはやっぱり僕に気づかないんだ。
気づいて欲しい、気づかないで欲しい。
正反対の気持ちで僕の心の中はぐちゃぐちゃだ。
僕は涙がこぼれ落ちそうな目を見られたくなくて彼女に背を向けたまま答えた。
「似たものを持ってるんです」
首元をそっと押さえた。
そこには彼女が持っているピアスとよく似たペンダントがあった。
これは僕が彼女と交流を持ってしばらくしたとき、銀細工の工房で作ったもの。
だから世界に2つしかないものだ。
そのことを君はまだ覚えているかな。
「ピアス、見つかって良かったですね」
あぁ、駄目だ。声が震える。
泣くな、まだ泣くな。
元気で良かった、また会えて良かった。
その場を去ろうとした僕の腕を彼女は引っ張った。
「詩晴、、、なの?」
彼女は震える声で僕に尋ねた。
僕はなにも答えなかった。
いや、正確には答えられなかった。
彼女は無言を肯定と取ったのか、腕を掴んだまま歩き出した。
それからしばらく歩き、小さいが綺麗なアパートの一部屋の前で止まった。
ゆきちゃんは市谷と書かれた部屋の扉を開けた。
扉が開き目に飛び込んできたのは、ゆきちゃんのではない男物の靴。
胸の奥にどろりとした苦いものが広がる。
あの男と住んでる家?
僕は今すぐにでも逃げ出したかったが、震える手で僕の腕を掴んでいる彼女を振り払うことはできない。
僕は仕方なしに部屋にあがった。




