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最終話「最後の決闘」

0時にも1話投稿しています。




戴冠式当日。


リーゼラも王女として王族側に参列した。

既に会場には若き国王を一目見ようと、沢山の貴族達で溢れ返っていた。


ファンファーレの音と共にローデリヒが入場した。

いつもは下ろしている漆黒の髪を今日はすべて後ろへ撫で付けていて、より一層顔の美しさが際立つ。

豪華な装飾を施した赤いマントと金色の刺繍が入った黒い衣装を纏い、堂々たる威厳をもった姿を見せた。


凛々しいその姿に、早くも女性達を虜にしている。


戴冠の儀で前国王から冠を授かり、これで名実ともに新しい国王となった。


沢山の人に囲まれて祝われるローデリヒを、リーゼラは遠い場所から眺めていた。


数ヶ月ぶりに会えた今日ですら、まだ話もできていないどころか目も合わない…


なんだか、ローデリヒが遠い存在になってしまったように感じて寂しくなった…




ーーー




しばしの歓談の後、音楽が鳴り始め、ダンスが始まった。


最初にローデリヒと招かれた他国の王女が踊ることになっていたが、リーゼラは見ていられなくて一人中庭へ出た。


さすがに今日はみんな、ローデリヒのファーストダンスを一目見ようと会場へ押しかけているので、外には誰もいない。


はあ…とため息を吐きながら、中庭の奥へと歩き出す…



「見つけた。」

次の瞬間、気付いたらまたフォルカーの腕の中に包まれていた。


「!! フォルカー様!」


「もう、隙だらけだね。まあ、そんなところも可愛くて好きなんだけどさ!」

甘い顔で笑いかけてくる。


咄嗟に顔を赤らめるが、すぐに

「いけません、こんな所で…!」

とフォルカーを嗜めた。


「もう、そんな反応されたら、逆に興奮しちゃうじゃない…!」

そう言って髪に口付けをする。


「…!」


「あはは!真っ赤になって可愛いな〜リーゼラは!」

ケラケラと綺麗な顔でとても無邪気に笑う。


「〜〜っ!!早く離してください!人に見られたら大変です!」


「分かったってば〜!」

「じゃあキスさせてくれたら離すよ。」


「キッ…!?」


「もう、声が大きいってば…」

そう言って、今度は大人な顔でリーゼラの耳元で囁く。


リーゼラの顔を真っ直ぐ見つめて、大事そうに顔に触れる。


「今度は口にしちゃうからね。」


そう言って綺麗な顔を近付けてくる。


「えっ!ちょ、ちょっとまっ…!!」


もうダメだと思って顔を背けて目を瞑った。


ちゅっ…



「……!」


フォルカーは口の端に優しく口付けた。


「ここならセーフだよね?」


フォルカーは優しい笑みを浮かべた。


真っ赤になったリーゼラは、

「〜〜!!全然セーフじゃありません〜!!」

とフォルカーの胸を叩いて抗議した。


そんなリーゼラを包み込むように抱きしめると


急に真面目な口調になって、


「僕に本当の愛を教えてくれてありがとう」と言った。



「……!?」


驚いてフォルカーの顔を見上げると、その顔は少し寂しそうだった。



「…こんなじゃれ合いも今日でお終い。明日から君のことはすっぱり諦めて、僕は領政に専念するとするよ。」

と力なく笑った。


「フォルカー様…」


「だって君、一生義兄上のこと忘れられそうにないんだもん。」


そう寂しそうに笑うフォルカーの言葉に、リーゼラもおもわず涙を零した。


…そうなのだ…


きっと忘れられない…


この胸の痛みもきっとずっと抱えて生きていくのだ…



「僕飽きっぽくて、そんなに待てなそうだから、やっぱりこの前のことは聞かなかったことにして!」

努めて明るく振る舞っているが、それが嘘であることはリーゼラの目にも明らかだった。


「…はい…」

でもリーゼラは気付かないふりをして、今度はそんなフォルカーを思ってそっと涙した。



ーーー



「ねぇ、最後の思い出に、一緒にダンスを踊ってくれない?」


とフォルカーからの言葉。


それは、今後一切リーゼラへの未練を断ち切り、二度と一緒に踊るつもりがないことを意味していた。



リーゼラは、切ない気持ちを胸の奥に押し込めて、


「…ええ、もちろんですわ。最高のダンスを踊りましょう!」

と不敵に笑い、フォルカーへ手を差し出した。



フォルカーに手を引かれて会場へ戻ると、ちょうど一曲目が終わったところだった。


よかった…


リーゼラは内心胸を撫で下ろした。



次の音楽が鳴り始まったので、ありったけの笑顔をフォルカーに向けた。

「さあ、いきましょうか!」


フォルカーがぐっと自分に腰を引き寄せる。


「あの頃の君はこれだけでもうひーひー言ってたのに…」

と拗ねたように口を尖らせるフォルカーが可愛くてついふふふと笑ってしまった。


「化粧も髪のセットもすべてフォルカー様がしてくださいましたね!」


「そうそう!あの時の君ときたら、化粧のけの字も知らなくて、あの時の奇抜な化粧と言ったら…!」


「もう!それは言わない約束ですよ!!」


私達はお互いの心の痛みに気付かないように、最後のダンスを精一杯楽しんだ。



そんな二人の様子を遠くからローデリヒが見ていた。



ローデリヒは他の女性達に次々とダンスを申し込まれるが、その度に「踊るのは好きではないので」と笑顔で断っていた。



そして一人玉座に座る。


「…ふん。随分と楽しそうに踊るではないか…」


そう言って持っていたワインに口を付けた。



ーーー


楽しいダンスの時間もあっという間に終わりになってしまった。


フォルカーはリーゼラの手を取ると、手の甲にキスをして


「さようなら…僕の愛しのリーゼラ」

そう言って、振り返ることなくどこかへ消えていってしまった…



リーゼラは、痛む胸を押さえながら、その背中が見えなくなるまで、ずっとその場に立ち尽くしていた…



泣くのを堪えながら、ダンスフロアを後にしようとすると、目の前に立ちはだかる者がいた。



「ラッツ様…」


「……。」




ーーー



ラッツに誘われ、次はラッツと踊り始めた。


「裁判のことは聞いた。…体調はもう大丈夫なのか…?」


すっかり落ち着いた雰囲気の男性になったラッツに笑顔で答える。

「お陰様で腕の傷も順調に回復しております。」


腕の傷を隠すために、今日はオフショルダーの黒いドレスを着ていた。


「まさかお前が王女だったとはな…」


「私もまだ信じられませんの。」

そう言って笑うが


「なんだか、遠い存在になってしまったようだ…」


「……!」


その言葉に立ち止まった。

ふと、先程の自分の思いと重なった。


「リーゼラ…?」



「…立場が変わっても、私という人間は変わりません。どうか今までと変わらずに接して頂けると嬉しいです。」



「そうか……それならよかった。」

ラッツ自身も安堵したようだった。


「それなら、一つお願いしたい事があるのだが…」


「…?なんでしょうか…?」




「…俺と結婚してくれないか?」


「ぶっ!!」


予想外な言葉が飛んできたので、おもわずはしたない言葉を発してしまった。



フォルカーでさえ断ったのに、ラッツとの結婚なんてあり得るわけがない…!!


「お断りします。」

リーゼラはすぐさま断った。至極冷静に。


「やはり、ローデリヒに未練があるのか?」


「!!」

グサっときた。

何故かそういうところの勘だけは鋭い…


「やはりな…では、その未練を俺が断ち切ってやる。」


そう言ってズンズンと玉座の方へ向かって行った。

リーゼラはギョッとして、慌ててラッツを追いかけた。



リーゼラが追いついた時にはもう遅かった。


「ローデリヒ国王陛下にリーゼラとの結婚を賭けて、決闘を申し込みたい!」


なんと、あろうことか、ローデリヒに決闘を申し込んだのだ。


「ほぅ…」

玉座に足を組んで座っていたローデリヒは、至極楽しそうに口の端を吊り上げた。


そこに急いでリーゼラが割って入る。

「すすすすみません!ローデリヒ閣下…!じゃなくて国王陛下!このラッツ様は少々酔っておられるようなので、本気になさらないでください!!」

そう言って青い顔をしながら、必死にラッツの腕を引っ張る。


「なんだ?俺は酔ってなどいないぞ?」

ととぼけた顔をして言うラッツ。


もう!!余計なこと言わなくていいからっ!!

そういう勘は相変わらず鈍いんだから!!


「いいから!!早く退出するの!!」

小声で圧をかけて、なんとかラッツをこの場から引き離そうと必死に腕を掴むが…


「いいだろう…」


「…!!?」


地を這うような邪悪な笑みを携えたローデリヒが思いもよらない返事をした。


「おい、剣を持って来い。」


いやいやいやいや!!!!

あなたの実力でラッツに向かったら、ラッツはひとたまりもありませんから!!

象と鼠くらいの実力差ありますからきっと!!

(ラッツの実力知らないけど)


「よし!見ていろよ!リーゼラ!必ず勝ち取ってお前と結婚してやる!!」


この馬鹿者ーーー!!!

そういうアンポンタンなところは全然変わってないんだから!!

死にますからね!?あなた!!ローデリヒとの実力差分かってる!!?



剣を渡されて、自信満々に構えるラッツ。

それをすぐ脇で「おやめください!ラッツ様!!」と必死に腕を掴んで止めようとするリーゼラ。


その様子を見たローデリヒが

「おい、お前はラッツの味方か。元婚約者の俺の立場がないではないか。」

首を傾げて意地の悪い笑みを浮かべるローデリヒ。

この顔も懐かしい…


…でもね、しょうがないんですよ…

婚約者って言うなら、ラッツも一応元元婚約者ですけど。



周囲の人達は、いつものエセスマイルを携えているローデリヒに見慣れているためか、ローデリヒの高圧的な一面に驚いている。


…意外どころか、こっちが本性だと思いますけどね…

リーゼラは顔を引き攣らせて笑った。


リーゼラの抵抗も虚しく、決闘が始められてしまった。


「さあ!リーゼラをかけて勝負だ!」


ああもう!うるさい!馬鹿ラッツ!!大きな声で変なこと叫ばないで!!



「覚悟ぉぉっ!!」


キィンッ


ローデリヒは、真正面から挑んできたラッツの剣を片手で軽く跳ね上げ、退屈そうに首に剣を当てる。


「っ!!」


跳ね上げられた剣がカランとラッツの後ろに落ちる。


「………っ!」


呆気なさすぎる展開に、場内はしんと静まり返る。


ローデリヒはラッツに剣を向けたまま、リーゼラの顔を見た。


「…次はお前がやるか?こいつよりかは、いい勝負になると思うが…」


淡く笑うローデリヒにそう言われて、慌てて首を振る。


やらない!やりたくない!!やる意味もない!!

勝てる気もしない!!


ラッツは床に手をついて、ショックでへたり込んでいる。


いや、あなた見通し甘すぎ!!ローデリヒに勝てるわけないでしょ!!戦場だったらもう死んでるからね!!

もっと慎重さを学びなさい!!


心の中でたっぷりと罵りの言葉を投げかけていると、不意にローデリヒがこちらに近付いてきた。


まさか本当に決闘を申し込む気じゃないかと思って警戒していたら、不意にマントを翻してリーゼラの前に跪き、みんなの前で手の甲にキスをした。


!?


そしてリーゼラを真っ直ぐに見据えて言った。



「どうか私と結婚していただけませんか?」



!!?



ローデリヒの爆弾発言に周りは騒然となった。



「けけけ結婚…!!?」




「ああ、勝った方が婚約を申し込めるのだろう?」



「えっ!?いや!でも…」



「俺では不服か?」



「いやっ!!」

おもわず大きな声で首を振る。



「でもいきなり結婚だなんて…何かの冗談ですよね…!?」



「婚約だと、また逃げられるかもしれないだろ?」


そう言って、にやりと笑う。

その顔がまた心臓に悪い…



「どうやら、俺はどうしようもなくお前のことが好きになってしまったようだ。」


周りにいた者達もあんぐりと口を開けて驚いている。

そんなことをあっさりと人前で言ってしまうのだから、全くこの人には敵わない…



「それで、答えは?」


ローデリヒが静かにリーゼラを見据える。


「………」


リーゼラは動揺した心を落ち着けて、心を決めた。




「……私も…あなたのことが好きです!大好きですっ!!」



遂に、心の中に閉まっていた気持ちを吐き出してしまった。



リーゼラの勢いに、ローデリヒは一瞬目を見開いたが、その後すぐに、「ははっ!」とあの大好きな屈託のない笑みを見せて笑ったのだった。



周りにいた人達も拍手喝采で祝福をしてくれた。





ーーー




その日の夜。


私は侍女達に散々磨き上げられて、王家の夫婦の寝室に連れてこられた。


リーゼラの到着に合わせて、ローデリヒが自分の部屋から出てきた。


何を勘違いしたのか、侍女達にいつぞやのフォルカーにプレゼントされたような、丈の短いいやらしい寝間着を着せられてきたので、緊張と恥ずかしさで挙動不審になっていた。


ローデリヒはそんなリーゼラに近付き、「待っていた」と片手で抱きしめた。


ローデリヒにそんな風に優しく触れられるのが嬉しくて、それだけで涙が出そうになった…



「…では寝るとするか」


ローデリヒの言葉に、リーゼラは少し慌てた。



「あ、あの…!私達はまだ婚姻の儀も済ませてないですし、その…一緒に寝てもいいのでしょうか…?」


ローデリヒの腕の中で縮まこまる。


そんなリーゼラの頭を優しく撫でながら


「大丈夫だ、今日は何もしない…まだな。」

そう言って笑った。


……まだ!?


意味深な言葉が頭にこだますが、ひとまずは大丈夫ということで、安心する。


二人でベッドに入ると、ローデリヒの方からぎゅっと身体を抱きしめてきた。



「!!!」


心臓がどうにかなってしまいそうだ…



「…もう二度と手に入らないかと思っていた…」


ローデリヒが本音をこぼす。



「……!!」



その言葉を聞いて不意に切ない気持ちになり、リーゼラもぎゅっと身体を抱きしめ返して


「私もです…」

と言った。



「…でも、忘れることもできませんでした…」


目を潤ませてローデリヒを見た。



「ふっ…可愛いことを言うな。」


青い美しい瞳で見つめ返したローデリヒは、再び逞しい両腕でしっかりとリーゼラを抱きしめる。

もう溶けてしまいそうに幸せだった…


ローデリヒが耳元で話しかける。


「次は普通の寝間着を着て来い。これでは、一晩中約束を守り通せるか自信がなくなりそうだ。」

そう言って笑うローデリヒの言葉にまた心臓が激しく鳴る。


「また毎晩毎晩、悪夢騒動で侍女達を起こしていたらしいな?これで少しはマシになるといいが…」

気付くといつもの意地の悪い顔で笑っていた。


もう〜!!と、相変わらずローデリヒに情報が筒抜けなことに恥ずかしくてもだえるリーゼラであった。



ローデリヒはそのままリーゼラを抱きしめたまま朝まで眠り、リーゼラも幸せな気持ちで久々にぐっすりと眠ることができたのだった…




長い長い暗闇を経て、ようやく夜明けが訪れようとしていた…







ここまでお読みいただきありがとうございました!

ひとまずこれで完結となります。

最後まで書き終えることができてホッとしております!

それもこれも拙い私の文章を読んでくださったり、ブクマや評価等で応援してくださった皆さんのおかげです!

本当に感謝致します!

ありがとうございました!!


R04/04/24文章の一部を訂正しました。

新連載中の「悪役令嬢の私は普通に恋愛したい!!〜ドS王子達との危険な共同生活〜」もよかったらどうぞ。

R15で、下ネタとギャグ多めな軽い内容になっております。

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