表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/50

第4話「フォルカーという人物」

ビリリッ ビッ ビイィッ!!


薄暗い地下牢に、謎の音が響き渡る。


「さあ、これで良しっと!」


手元には、きれいに折り畳まれたスカートの切れ端がいくつか置かれていた。


スカートの一部を無理矢理引きちぎったので、地味で古臭いと言われていたドレスがより一層酷いものになった。

だが、古かったおかげで、引きちぎるのは楽だった。


昔は確か若草色だったか、今となっては元の色も分からないくらい、泥水で汚れて色褪せてしまったドレスのスカート部分が、今はスリットのように足も一部分見えてしまっている。…が、特に問題はない。


時々やってくる見張りをおいて、どうせここには誰も来ないのだから…



リーゼラは、先程初めて会ったローデリヒの顔を思い浮かべて、頭を振った。


ーーあの方は、私が彼の弟君を殺したと信じて疑っていない様子だった。

きっとこの判決が下るまで、ここに来ることはないだろう。

あの冷え切った瞳を思い出して、身震いした。



婚約破棄の次は、人殺しを疑われてしまうなんて、不遇って続くものなのかしら。

それとも、私は結婚できない運命なのかしら…



そう自虐的に笑っていると、ふと奥の方からコツコツと、見張りとは違う足音が近付いてきた。




「やあ、リーゼラ嬢!」


「…閣下!!」


「相変わらずお堅いな〜!もう他人ではないんだから、フォルカーって呼んでよ!なんなら、ひと足先にお義兄様って呼んでくれてもいいよ!?」



「フォ、フォルカー様…。どうしてこちらに…!?」



「どうしてって、ここは僕の屋敷でもあるからね、たまに顔を出しているのさ。」


「今日はたまたま帰ったところに、うちの次男様の訃報と君の輿入れの話が一気に耳に入って、どういうことなのか、君に直接事情を聞きにきたわけさ。ローデリヒ義兄上(あにうえ)は、今口を聞けるような状態じゃないしね」



…ええ…、分かります。とても……




目の前にいるフォルカーという青年は、ここアルトラント公爵家の三男にあたる。

ただし、フォルカーは上の2人とは違い、愛人との間に生まれた子どものため、家政に携わることも許されず、一族の中では冷遇されてきた。

そのため、その寂しさを埋めるために、様々な街を放浪したり、様々な女性と関係をもったりして、あらゆる意味でフラフラしている少々困った方なのだと……夜会で令嬢達が噂しているのを聞いたことがある。



フォルカーの容姿は、赤栗毛で少し癖のある髪が可愛らしく、反面、やや垂れ目がちでくっきりとした二重に黄色い瞳は、男性ながら色気が感じられる顔立ちであり、何人もの令嬢を虜にしてきたそうだ。



そんなフォルカーは、物好きなのか何なのか、見た目が酷いと言われていたリーゼラにも、ちょくちょく声をかけてきた。


リーゼラにとっては、ラッツとマヌエラ以外に唯一夜会で言葉を交わす相手だったので、感謝こそすれ、他の令嬢のように、侮蔑の眼差しを向けることはできなかった。



ーーー



「ーーそれで、突然スカートを切り裂いちゃってどうしたの?見張りに色仕掛けでもするのかな?確かに今の格好は僕としてもかなりそそられるけど…」


そう意味ありげな笑みを浮かべながら、スカートの隙間から見えている足を舐めるように見る。



…失敗したわ…

まさかフォルカー様がいらっしゃるなんて…

同じ公爵家であったことをすっかり忘れていたわ…



ちょっと失礼なことを考えつつ、一瞬、恥ずかしさに俯くが、すぐに気を取り直して笑顔で取り繕う。



「…実は私、いま残りの時間を快適に過ごすために、ひとまずこの牢屋の中を掃除をしようと思っているんです。もし宜しかったら、フォルカー様にもお願いしたいことがあるのですが…」



「うん!レディのお願いを聞くのが僕の喜びだからね、なんでも聞いてあげるよ!あ、でも逃すってのは、できないんだけどね。」


フォルカーが鉄格子に近付き、甘い視線を投げかけながら明るく笑いかけた。

さすが、女性慣れしているフォルカー様だわ…



「それでは…」


リーゼラは遠慮なくお願いをすることにした。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ