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もう一度

 三郷ちゃんから、実咲はこの週末に京都に行くと教えてもらった。


 もし、実咲の本当の気持ちが別にあるなら、京都へ一人で行く理由を教えて欲しいと思った。


 自分の気持ちには嘘はつかずに生きていこうと決めた俺と、嘘をついて生きていこうとしている実咲……。

 同じ方向を見れる日は来るのかな……。



 実咲が京都へ行く日は着々と近付いていたが、実咲に連絡できずにいた。


 このまま京都に実咲が行ってしまってもいいのか?

 このまま何も言わずにお互いの人生を歩む方がいいのか……?

 もう一度会って本当の理由を聞いて自分が納得するのか、しないのか……。


 いろんな選択肢を考える。


 俺の気持ちは変わらない。

 けど、実咲が考えて出した答えを台無しにしてしまう事になってもいいのか……という事が頭をよぎる。


 俺は実咲が京都で頑張ろうとしている事の足枷にならないだろうか……。

 気持ちだけ先走りして傷付ける結果になったりしないだろうか……。




 散々迷った挙句、俺は何も言えず、実咲は一人で京都へと行ってしまった……。





 夏が過ぎ、でもまだ暑さが残るある日の午後。

 高台にある広い公園。

 その公園からは京都のきれいな街並みが見える。

 時間はお昼時。

 今日は天気も良くて人もたくさんいる。

 シートを敷いてお弁当を食べるお母さんたちとその近くを走り回る子供たち、犬と散歩中の人、涼しそうな木陰を見つけて読書をしている人……。

 各々でいい時間を過ごしている。


 きれいな街並みが一望できる場所にベンチがあり、そこに座って今から膝の上の弁当を食べようとしている人がいる。

 俺は、その人に声を掛けた。



「隣、いいですか?」



 その人は、横に座った俺を見てびっくりしていた。

 何が何だかわからない、そんな感じの顔だった。



「あれ? 隣、まずかったですか?」



「あ……、いや……、司……どうしたの? 何でいるの……? びっくりした……」



「今から休憩ですかね? じゃあ、もう1時間もないですよね? 急いで用件言いますね。 あなたを迎えに来ました。 今から帰るという意味じゃなくて、あなたの心を迎えに来ました。 もう一度、実咲と話をしたくてここに来ました」



「……今日、平日だよ……?」



「有休取って来ました!」



「……有休まで取って?」



「はい。 たくさん溜まってるんで!」



「ここ、何でわかったの? 三郷?」



「はい。 たぶん、お昼はここにいると教えてくれました」


 実咲はようやく笑ってくれた。

 ポロポロと涙をこぼしながら笑ってくれた。



「実咲は嘘をついて今ここにいるよね? その話、詳しく聞いてもいいですか?」


 実咲は大粒の涙を流しながら、コクリと頷いた。



「でもね、休憩時間終わってしまうので、先にお昼ご飯食べよっか? 俺も買ってきた」


 コンビニで買ったおにぎりの入った袋を見せると笑ってくれた。



「……じゃあ、一緒に食べよっか……。 けど、私、あんまり時間ない……」


 涙を拭きながらそう言った。



「大丈夫! 俺、時間いっぱいあるから! 仕事終わるの待ってるから」



「大丈夫? いいの? けど、今日私が夜勤だったらどうしたの?」



「三郷ちゃんにそういうのはリサーチ済み!」



「三郷かーー。 仕事のできる妹だねーー」


 あーー、なるほど……そんな風に思ったんだろうな……。 クスッと笑った。



「さ、食べよう! あ、実咲のたまご焼き、ちょうだい。 俺、おかずない!」



「たまご焼き? いいよ。 でも今日は甘くしてあるよ」



「甘いのも好き」



 二人で短いランチタイムを過ごした。

 年甲斐にもなく、たくさんさん笑いながら食べたコンビニのおむすびは格別においしかった。

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