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父の秘密

 やっぱり……。

 俺があの集合団地で見た年配の男性は、父に似ていた。

 もう母と別れてから父とは会っていないが、遠目に見たその人は、年老いていても父の面影を感じさせた。

 でも、自分の中で三郷ちゃんと父とが結びつかない。

 母と別れたのは俺が高2の冬だったと思うんだけど……。



「やっぱり……」


 俺は実咲に腕時計の話や腕時計を渡しに行った時に見かけた年配の男性の話をした。



「司と一緒にプレゼントの腕時計、買いに行ったよね。 あの時、司に何で自分の名前は入れないのか?って聞かれたんだよね。 入れない理由はそこだったの……。 ある程度、私が大きくなってからの母との話だから……。 もういろんな判別がつく歳でしょ? そんな私とは軽く話す程度だったから……」



「でも、何で実咲は俺の父親だってわかったの?」


 実咲はこれまでの事を話し始めた。



「私、仕事を辞めてからヘルパーの資格を取ったの。 今は老人ホームに勤務してるけど、少し前までは違ってて訪問介護をしてたのね。 私は、担当スタッフのフォローで訪問する事が主な仕事で……実は派遣されたところに司のお母さんのところがあったの……」



「え!」


 俺は初めて聞く事にびっくりした。



「びっくりだよね……。 私の他にも同じ様なスタッフがいるから、月に1回行くか行かないかだったけど、何回か派遣された事があるの。 私もびっくりしてどうしようかと思ったけど……でも、お母さんにも会ってみたかったから行く事にしたの。 今まで黙っててごめん……」


「たぶん、10回くらい訪問させてもらったと思う……。 少しの時間だったけど、いろんな話をしたんだよ。 その時にね、家族写真を見せてもらったの。 その中に、お父さんの写真を見つけたの……。 え……、この人って……三郷のお父さんじゃないのかな……、そう思ったの。 けど、確信が持てなくて……」


「けど、お母さんが言ってたの。 問いただした事はないけれど、離婚前にたぶん【何か】あったって……。 お休みの日にも仕事だって出て行ったけど、帰ってきた時シャツにいつも赤ちゃんのミルクの匂いがしてたんだって言ってた。 もう夫婦の仲は破綻してたし、もし不倫だとしても何とも思わなかったって話してたかな……」



「その赤ちゃんが三郷ちゃんで、母は父か何か隠している事を気付いてたって事?」



「……たぶん。 私はね、たぶんの話ではあるけれど、きっと私の母のせいで司のご両親を離婚までになった原因の一つで、司の幸せを奪ってしまった様な気がして……司のお母さんのところには申し訳なくて行けないな……と思って……それ以降、配属エリアを変えてもらって司のお母さんには会ってないの。 私の母がごめんね……」



「実咲が悪い訳じゃないし、謝る事はないよ。 母も気付いてても何とも思わなかったんだろうし、俺も同じだから。 けど、やっぱり三郷ちゃんって俺の妹のなんだ……」



「母と司のお父さんは籍を入れてない。 お互いドライな関係だったんだと思うけど、三郷の事はかわいがってくれて定期的に会ってたし、今もそれは変わらないんだと思う。 司、お父さんに会ってみたら? ちゃんとした事知る権利、司にはあるよ」


 三郷ちゃんに話すにも、たぶんの話じゃダメだよな……。

 ちゃんとしとかなきゃ……。

 俺は父に会う覚悟をした。


 実咲は母との事も話してくれた。


「お母さんと一緒にアルバム見てね、司の小さい頃の写真、見せてもらった。 お母さんね、司の事は凄い嬉しそうに話してたよ。 写真のその時をちゃんと覚えてて楽しそうに話してくれたよ」


 実咲のおかげで俺がいない間もいい時間を過ごせてたんだ……。


「そうだったんだ……。 今更だけど、ありがとうね。 母さん、ヘルパーさんとの時間、楽しみにしてたんだ……。 母さんに付き合ってくれてありがとうね」


 母さんに実咲を紹介したかったと思っていたが、こんな形で実咲と母さんが会ってたなんてびっくりでしかないけど、嬉しかった。

 彼女として紹介できなかったけど、実咲という人を母さんが知ってくれて逝ってくれた事は嬉しかった。

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