母の話
仕事から帰った後、家の事を済ませて、母さんの体調も考えて1時間だけ話をする時間を作った。
事前に考えた母さんへの質問。
母さんはどこまで話すのか…それは俺の楽しみとなった。
母さんと話をする様になっていろいろわかった事があった。
母さんと父さんは恋愛結婚だった事。
付き合って結婚までが半年だった事。
しかも、母さんには当時付き合っていた人がいたらしく、その人から奪ったらしい……。
意外過ぎ……。
そんな親の恋愛事情など知ると思わなかった。
母さんは俺も生まれて父さんと結婚してよかったと思ったらしい。
「そんなにさ、結婚してよかったと思ってたのに何で離婚になったの?」
「父さんの仕事が忙しくなってからかな……。 話をする事が極端に減ったかな……。 嫌いとかじゃなく、疲れてるからそっとしておこう、っていうのが始まりだったかな。 今思えばそれがダメだったよね」
「やっぱりね、コミュニケーションはどんな時でも取ろうと努力しないとダメだね……。 気を使い過ぎた結果、お互い離れていったんだろうね……」
母さんは離婚して仕事を始めてよかったと言っていた。
たくさん友達ができたし、いろんな場所にも行けた。
それまでは本が友達みたいで、それも楽しかったけれど、同僚の人と話したり笑ったり、一緒に仕事を頑張ったりする事の方が意味があると思ったと。
「ただ唯一どうにかしたいのは、司の事。 ほんとにいい人いないの……?」
「いないって……。 前にも言ったけど結婚願望ないから」
「司が結婚してくれたら嬉しいんだけどな……。 母さんがこんな事になってさ、司がいろいろ我慢してると思う。 司は言わないけど、その中に結婚もあったんだろうなって思うよ。 母さんの事はいいから自分の人生を生きなさい」
母さんはそう思っていたんだ……。
「ほんとに、結婚願望ないから……。 それにさ、結婚しようと思えばいつでもできるでしょ? もし、したくなったらするよ……」
思いもしてない事を言って母さんに少しでも安心して欲しかった。
自分のせいで、という事だけは思って欲しくなかった。
これまでの人生は全部自分で決めてきた事で、誰のせいでもない。
俺が納得しているならそれでいい。
「だから、ヘルパーさん、紹介されたの? そういうのもういいからね……」
「もう言わない言わない……。 ヘルパーさんもいろいろ変わるのよ。 半年くらい前かなーー? ムロカワさんが来なくなったの。 聞いたら、担当エリアが変わったんだって。 今は加藤さんが来る事が多くなったかなーー?」
「あーー、よく話してた人?」
「ムロカワさんは、母さん担当じゃないよ。 シフトの関係や、お休みの人の代わりでいろんなところに行ってたみたいで、たまに来てくれる人だったみたいよ。 エリアが変わる前にちゃんとお礼が言いたかったな……」
「今、来てくれてる加藤さんに伝えてもらったら? 辞めた訳じゃないんでしょ?」
「そうだね、加藤さんに言っておこうかな」
母さんには少しでも長くいて欲しい。
「来週、紅葉見に行くよ」
母さんの顔がパッと明るくなった。




