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第百三十一話:論文の確認

「ハク殿は欲がなさすぎる! もっと、この素晴らしい魔法を誇るべきです!」


「いや、私はそこまで自慢したいわけではないですし……」


 ルシエルさんは、どうしても私に発表してもらいたい、いや、魔法の発明者として発表に同席してほしいらしく、興奮気味に話している。

 一応、他の学会の研究者達に見せるだけ見せたことはあるようだ。

 その時は、私の魔法の目新しさから、注目が集まったけど、結局発表するには至らず、そのまま鎮火してしまった。

 ルシエルさんとしても、発表はしたかったが、やはり私の存在を無視するわけにはいかないということで、結局発表せずに終わったことを悔いているようだった。

 だから、自分も他の研究者達も納得できる形で、つまりは、発明者である私が同席する形で発表ができれば、きっと後世まで轟くような素晴らしい発表になるはずだと考えているようである。

 その熱意は素晴らしいと思うし、私の魔法が歴史に載るかもしれないと思うとちょっと興味もあるけど、だとしてもそこまでして発明者を名乗るのはどうなのかと思わなくもない。

 ルシエルさんみたいな、いかにも魔法を極めてますって人ならともかく、私みたいな、見た目子供な人が発明しましたなんて言ったら、いらぬ誤解を招きそうだし。


「そこを何とか! 学会で発表し、発明者と正式に認められれば、ハク殿の魔法が広く知れ渡ることになります。私は、この魔法をこのまま眠らせておくのはもったいないと思います!」


「うーん……」


 この世界にも、特許のようなものはあるようで、その魔法を最初に発明した人には、特許料が入るらしい。

 その魔法を使って商売、例えば、塾のようなものを開いてその魔法を教えるとかした場合は、使用料を払わなければならないらしい。

 もちろん、物品と違って、魔法は形のないものだから、勝手に使用することもできる。ただ、一応詠唱によって判別ができるため、それで見極めているようだ。

 私の魔法が周知されれば、それなりのお金と名誉が入ってくることになる。人によっては、それは魅力的なことだろう。

 だが、私にとっては、そこまで魅力的でもない。

 そもそも、お金には困ってない。まあ、あればあるだけ安心と言う考えはあるかもしれないけど、宝石を始め、大量の魔石を採取できる当てを知っているし、なんなら魔道具の製作や刻印魔法の刻印など、私は今の時点でもかなりの額を貰っている。

 名誉に関しても、そこまでって感じ。

 そもそも、私は今の時点でも、色々な称号を持っている。名が知られすぎて、この国のみならず周辺国でも名が知られているくらいには知名度がある。

 元々、私の望みはお姉ちゃん達と静かに暮らすことだし、そこまでの名誉は必要ないのだ。


「どうしても、だめですか……?」


「いや、発表したいならしたらいいと思いますけど、私いります?」


「いります!」


「は、はぁ……」


 これに関しては、ルシエルさんが納得するかどうかって話だろう。

 ルシエルさんとしては、私に功績を認めてもらい、順当な報酬を受け取って欲しいと思っている。

 だから、こうして改めて話をしたわけだ。

 正直、私にとってのメリットは一つもない。

 お金も名誉もいらないし、魔法が周知されるのは喜ばしいことだけど、元から広めるつもりで作った魔法ではないし、広まらなくても全く問題はない。

 ただ、このままだとルシエルさんが可哀そうと言うのはある。

 ここで私が頷かなかったら、ルシエルさんは一生この魔法のことを発表することはないだろう。

 乞われれば、教えることはあるかもしれないが、あくまで私のためにと言ったところだと思う。

 すでにルシエルさんはかなりの高齢だし、ここで断ってしまうと、一生後悔する可能性もある。

 ルシエルさんも私の大切な友人の一人であることに違いはないし、下手に寿命を縮めるくらいだったら、受けてあげた方がいいのかもしれない。


「……わかりました。受けますよ」


「ほんとですか!? ありがとうございます!」


 飛び上がらんばかりに喜ぶルシエルさん。

 そんなに興奮したら血圧が上がって大変なことになりそうだから、そっと鎮静魔法をかける。


「よろしいのですか?」


「まあ、友人の頼みだしね。できれば願いは叶えてあげたいし」


 まあ、強いてメリットを上げるなら、学会と言う場所を見れるかもしれないというところだろうか。

 魔法学会、存在自体は知っていたけど、実際に見たことはないんだよね。

 最初は、私みたいに、個人で魔法の研究をしているのかと思っていたけど、きちんとそういう集まりがあるとわかったから、どんな場所なのかは少し気になる。

 と言うか、どこにあるんだろう? 全く情報がないんだけど。


「そうと決まれば、さっそく論文を読んでいただきたく! こちらに用意しておりますので!」


「あ、はい」


 そう言って、ルシエルさんは分厚い紙束をテーブルの上にでんっと置く。

 論文自体は、私もあちらの世界で何回か読んだことがある。基本的に英語なので、ちょっと読むのは面倒くさいけど、まあ慣れればそこまででもない。

 しかも、この世界では、基本的にその大陸の共通語で書くようなので、とても読みやすい。

 一応、私は色々な大陸の言葉も覚えているし、頑張れば一から覚えることもできるけど、面倒だからね。読みやすいのに越したことはない。


「どれどれ……」


 論文だけあって、形式に沿って色々と書かれていた。

 私の魔法は、詠唱ではなく、魔法陣を直接思い浮かべることによって発動するから、発動までのラグがめちゃくちゃ少ないのが特徴だ。

 基本的に、魔法は戦闘のための手段であり、そのためには、できるだけ早く発動することが求められる。

 中には、詠唱の一部を省いた詠唱短縮や、すべてを省いた詠唱破棄なんかを使える人もいるけど、そんなのはごく一部の極めている人であって、ほとんどは詠唱と言うタイムラグがネックになる。

 まあ、エルフとかになると、詠唱破棄できる人も多いみたいだけどね。

 それはともかく、この詠唱をいかに縮めるかと言うのが、今までの論点だったわけだ。

 しかし、私の魔法の方式を使うと、思い浮かべるだけで、即座に魔法が発動する。しかも、その魔法は正確であり、精度も高い。

 それだけ聞けば、詠唱破棄なんて目じゃないくらいの凄い性能の魔法だと思うだろう。

 もちろん、デメリットもあって、魔法陣を直接思い浮かべる以上は、その魔法陣を正しく理解していないといけない。

 それも、同じ魔法でも、威力や軌道、範囲なんかを細かく定めたら、その都度魔法陣は変わるので、それらすべてを覚えなければマスターしたとは言えない代物だ。

 まあ、実戦で使うなら、一部を覚えているだけで十分と言えば十分だけど、同じことしかできなくなるから、詠唱のようにその場でイメージしてって言うのはなかなか難しい。

 だから、一長一短ではあると思う。速さだけ求めたら最速だけど、難易度が高いってことだね。

 そう考えると、私の体の記憶力って凄いなと思う。昔の体だったら、絶対ここまで覚えられてないだろうに。

 そんなことを考えつつ、論文を読み進める。

 何か変なこと書いてないといいけど。

 感想ありがとうございます。

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拝読→へりくだった言い方 読んで貰う側が使う言葉ではなく 読む側が言う言葉
[一言] 査読作業( ˘ω˘ )
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