第六百五十話:コラボを終えて
「お疲れ様ー」
「お疲れ様です」
「おつかれー」
無事に配信が終わり、お互いに労いの言葉をかける
四人コラボというだけあって、時間は結構かかった。
一つの質問に答えるだけでもそこそこの時間がかかったからね。一人の時と比べたら単純計算で四倍なわけだし、時間がかかるのもやむなしである。
まあ、その分四人の時間が増えて、リスナーさんも満足してくれたようなので文句は何もないが。
私としても、一夜以外とここまで話すのは初めてなので初めは少し緊張していたが、すぐにそれもなくなって、楽しくおしゃべりができたと思う。
コラボって楽しいものなんだね。
「まだまだ話足りない感じはあるけど、それはまた今度かな?」
「そうですね。またコラボしようっていうコメントもありましたし、また揃って配信したいですね」
「この四人だと楽しいしね」
「私でよければまたお願いします」
私はまだヴァーチャライバーとしては未熟もいいところだが、それは同期のみんなも同じこと。
いや、いわゆる前世ではもしかしたら動画とかを上げていたかもしれないが、『Vファンタジー』三期生としては同じスタートラインで始まったはずである。
だから、必然的に話題は配信についてになり、それをどう盛り上げていくかを相談し合える立場になるわけである。
これはかなりいいことだと思う。同期同士が絡む姿はリスナーにも受けがいいしね。
「次の予定も決めちゃう? いつなら空いてる?」
「私は少なくとも一週間は無理ですね。来週お客さんが来るようなのでそれに向けて仕込みをするそうです」
「ああ、そう言えば言ってたね。じゃあ、その後?」
「再来週の日曜でいいんじゃない? それならいけるでしょ、多分」
「まあ、休日なら確かに行けそう」
三人は同じ学校に通っているだけあって、ある程度お互いの情報を知っているらしい。
恐らく、リアルでも仲がいいんだろう。私とは大違いだ。
唯一、スズカさんだけは学年が違うから少し話に置いて行かれている感があるけど、多分部活は一緒な気がする。
いや、もしかしたら帰宅部かも知れないけど。
「ハクちゃんは? 再来週の日曜行ける?」
「はい、多分大丈夫かと」
「なら決まりだね。再来週の日曜、コラボ第二弾と行こう!」
しばらく話すと、次のコラボの日程が決まった。
まあ、私はヴァーチャライバー以外に仕事はないし、空けようと思えばいくらでも時間は空けられる。
一夜の配信と被らないようにさえ注意すれば何の問題もないだろう。
そういう意味では一度、一夜に確認すべきかもしれないが、まあ、多分大丈夫なんじゃないかな。
ちらりと隣にいる一夜に目を向けてみれば、頷いていたので大丈夫なんだろう。よかったよかった。
「それじゃ、またねー」
「お休みなさい」
「おやすみー」
「お休みなさいませ」
通話が終わり、辺りに静寂が訪れる。
いや、一夜がいるからすぐに静寂は破られると思うけどね。
私は一度伸びをして疲れを取る。
割と長時間同じ体勢だったから体が固まってしまっていた。
「お疲れ、ハク兄」
「うん、ありがとう。一夜もアシストありがとね」
「これくらいならお安い御用だよ」
一夜は今のところいつも私の配信の時はサポートしてくれている。
正直相当ありがたいが、いつかは私一人でもできるようになっておかないとまずいと思う。
というか、機材も自前のを用意した方がよさそうだよね。
まだ収益化の条件を満たしていないので投げ銭は期待できないし、用意できるのはかなり先になりそうだが。
まあ、やろうと思えば今すぐにでもお金用意できるけどね? 宝石を売るなりすれば。
そういうのをどこに持って行けばいいのかを調べれば多分行けるだろう。買い叩かれたとしても量はかなりあるし、それなりの金額にはなると思う。
それをしないのは、あまり目立ちたくないのと、ちょっとずるいなと思ったから。
私の事を詳しく調べられると戸籍がないのがばれてしまうからね。
でも、いつかはこの世界からいなくなってしまうわけだし、お金は残しておいた方がいいかな? いや、怪しいお金を残すくらいだったら宝石をそのまま残す方が無難か? どっちがいいのかはちょっとわからない。
まあ、宝石の方がまだましな気はするけど。
「もうこんな時間だし、早めに寝た方がいいよ」
「え? うわ、もうこんな時間だったのか」
思いの外話が弾んでいたのか、すでに日をまたいでいた。
一夜も観ていたなら止めてくれたらいいのに。まあ、楽しかったからいいけどさ。
私は急いで片づけをしてベッドに入ることにした。
翌日。朝食を取りながらテレビのニュースを眺めていると、予想外のものが写り込んできた。
それは黒い修道服を着た青髪のワーキャットが大勢の人に囲まれながら困惑顔でマイクを向けられているという光景。
どうやら生放送らしいから現在進行形でこういう状況に陥っているんだろうけど、その姿は紛れもなくウィーネさんの姿だった。
『かなり精巧な着ぐるみですね。これは手作りですか?』
『いや、これは……それより通してくれないか、人を探してるんだ』
ウィーネさんの身長はそこそこ低い。だから、大人達に囲まれているとまるで怒られている子供のように見える。
というか、あの姿を見て気づかれないのか。
まあ、二足歩行の猫なんて言うファンタジーなものを疑うよりは着ぐるみだと思うほうが自然かもしれないけど、着ぐるみであの質感は出せないと思うけどな。
まあ、今はそんなことはどうでもいいんだ。
問題なのは、なぜウィーネさんがこの世界にいるのかということである。
「ハク兄、あれってもしかして……」
「うん、知り合いだね」
考えられる可能性としては、例の魔法陣が再び誤作動してそれに巻き込まれた可能性。
私が消えた後、調査をしていたとすればそうなる可能性はかなり高いだろう。
私は人間に近い見た目をしているからともかく、ウィーネさんは完全に猫の獣人である。この世界では相当生きづらいだろう。
保護して上げないとまずいかもしれない。
「とりあえず、行ってくるよ」
「ここに連れてくるの?」
「まあ、あのままにしておくわけにはいかないし……」
一応、ウィーネさんだって転生者だ。だから、無礼者と周りの人間に手を出すことはないだろう。
その気になれば転移魔法で逃げられそうなものだが、慌てていてそれどころではないのかもしれない。
インタビュアーが来てるってことは結構時間が経っているってことだろうしね。
「わかった。でも、気づかれないようにしてね? ここにマスコミが来るのはまずいし」
「それはわかってる。ちゃんと姿は消すよ」
隠蔽魔法を使えばウィーネさんの姿を隠すことは容易だ。
探知魔法を使えるあちらの世界とは違い、こちらの世界なら絶対にばれない自信がある。
ウィーネさんの姿を隠し、撒いた後に家に連れて帰る。それで解決するといいな。
あまりぐずぐずもしていられない。私は念のため【擬人化】で大人モードになると、足に身体強化魔法をかけて猛スピードで現場へと向かった。
感想ありがとうございます。




