第六百三十話:ゲーム配信
コメントとかは割と適当です。
「月夜の晩にこんばんは。月夜アカリだよー」
てきぱきと機材を立ち上げた一夜はちゃっちゃと準備をすると配信を開始した。
しょっぱなからバリバリのロリ声である。昔はよく聞いていたけど、今の見た目でやられると違和感が凄いな。
いやまあ、割と可愛い方だからある意味似合ってはいるんだけど。
パソコンの画面を見てみると、そこには声にふさわしいような幼いキャラの立ち絵が写っており、コメント欄にはいくつものコメントが流れていた。
「今日はスマッシュでぶっ飛ばせ、なゲームをやっていくよー。部屋を作るから一緒にやりたい人は入ってきてね。あ、でも、一回やったら抜けてね、たくさんの人とやりたいから」
そうして、ゲームを立ち上げて部屋を作る一夜。
私はあらかじめパスワードを知らされているので、それを打ち込んで早々に入る。
部屋が作られたと同時に入ったわけだが、それでも入るのがぎりぎりだった。
一夜と、いや、アカリと一緒にやりたいと思う人はかなり多いらしい。
やっぱり人気なんだなと思った。
「あ、そうそう。今日はゲストを連れてきているよ。今部屋に入っている『あかりん』がそうだね」
(コメント)
・ゲストの紹介を後回しにすんなw
・誰? 同期の人?
・自己紹介して
「あ、そうだね。ハクに……はっちゃん、自己紹介して?」
コメントに促され、私に自己紹介の催促をする一夜。
いや、はっちゃんて……まあ、いつものようにハク兄と呼ぶわけにもいかないし仕方ないか。
何て自己紹介しよう。普通にハクでいいかな?
別に偽名を使う理由もないし、それでいいや。
「はい。ハクと言います。よろしくお願いしますね」
(コメント)
・ロリ声きちゃ!
・え、誰?
・同期にこんな声の人はいないはず。と言うか、立ち絵もないし
・これ一緒にいるよね? 身内?
・姉妹百合きた?
「え、えっと……い、妹みたいなものかな! しばらく疎遠だったけど、今日珍しく遊びに来たんだよ」
コメントの詮索にとっさにそう答える一夜。
妹……まあ、今の見た目なら私の方が幼いし間違っちゃいないんだろうけど、妹に妹扱いされるのはどうにも……。
まあ、配信を破綻させるわけにはいかないし、ここは話を合わせておくか。
「昔生き別れたお姉ちゃんにようやく会えたんですよ。お姉ちゃんが元気そうでよかったです」
「ぶふっ!」
(コメント)
・生き別れとか何があったんや
・え、マジの妹? 声可愛いな
・アカリちゃんは妖精だし、兄弟姉妹がふらっと現れても何ら不思議はない
・ああ、そういやそんな設定だったな
「ちょ、ちょっとはっちゃん! 変なこと言わないでよ!」
「でも、間違ってないでしょ?」
「それは、そうだけど……」
実際、私はこの世界で死んで離れ離れになったのだから生き別れと言っても過言ではないだろう。
いや、死んでるから死別になるのかな? いや、その後転生しているしどうなんだろうか。
まあ、どうでもいいか。
「と言うか、妖精って何?」
「あ、えっと、月夜アカリっていうのは月明かりから生まれた妖精っていう設定で……じゃない、妖精なんだよ!」
「あ、はい」
(コメント)
・設定っていっちゃぁなぁ
・設定なんてあってないようなもの
・妹ってことは、ハクちゃんも妖精ってこと?
・妖精はみんなロリなのか。最高だな
「妖精と言うより、精霊かな? 竜の血も混ざってるけど、元は精霊だし」
「そう言えばそんなこと言ってたね……」
「【竜化】しようと思えばできるよ? ほら」
「えっ、うわ、マジだ……えぇ、なんかごつごつしてる。髪と同じで銀色なんだね」
「それはお父さん譲りかな」
「へぇ」
(コメント)
・銀髪幼女と聞いて
・竜になれる精霊ってなんやねん
・お姉ちゃんより属性てんこ盛りじゃん
・今実際に竜になってるってこと? 部屋が壊れそう
・アカリちゃんは黒髪なのにハクちゃんは銀髪なのか、妖精って何でもありなんだな
どうせ私の情報を話したところでこの世界で信じられるはずもない。
だから、私はありのままを語った。
腕を【竜化】した時は一夜も驚いたようだけど、配信中と言うことで何とか踏みとどまったようだ。
まあ、あんまり大きな声出したら迷惑だろうしね。ここマンションだし。
「と、とにかく、久しぶりに妹と遊びたいから、はっちゃんだけは固定ね」
「いいの?」
「いいの! はっちゃんだっていっぱい遊びたいでしょ?」
「まあ」
テレビゲームなんてあちらの世界ではなかったからやってみたいのは事実。
別に後で一人でやらせてもらえればそれでもいいけど、みんなでやった方が楽しいゲームだし、悪くはない。
コメント欄も久しぶりの家族との交流に口を挟むような人はおらず、私は連続でプレイする権利を得た。
「それじゃ、キャラを選ぼうか。私はこの傭兵で行くよ」
「それじゃあ、私は緑の恐竜を選ぼうかな」
それぞれキャラを選び終え、ステージを決めて、試合が始まる。
今回は四人による乱闘で、全員が敵扱いだ。最後まで生き残れば勝ちである。
久しぶりのゲームはちょっと難しかった。
一応、やり込んでいただけあってこのボタンを押せばこのキャラはこういう技を出すというのは覚えていたけど、とっさの判断が出来ず、早々に撃墜されてしまった。
逆に一夜の方はと言うと、かなりうまい。
場外に飛ばしてからの復帰阻止もうまいし、コンボも決めている。
多分、レートも結構高いんじゃないかな?
相変わらず、何でもそつなくこなす優秀な妹だ。ゲームでもその力は健在らしい。
「私の勝ちだねー」
(コメント)
・相変わらずうまい
・復帰地点を読んでのメテオがよく決まる
・俺あの自爆復帰できないんだけど
・ハクちゃんは慣れてない感じ?
・初心者っぽいね。技は覚えてるみたいだけど
「はっちゃん、腕落ちたね」
「まあ、700年以上ぶりだし」
「む、向こうはそんな経ってるの?」
「まあ、封印されてたから自覚はないけどね」
「また謎が増えたんだけど……」
(コメント)
・ロリかと思ったらめっちゃ年上だった
・いや、妖精は体成長しないから実質ロリ
・封印って、何かしたんか?
・竜の血が混ざった精霊とか明らかにやばそうだしそれでじゃね?
・ライバーってわけじゃなさそうなのにめっちゃ設定濃いじゃん
・いや、仕込みでしょ
「まあ、その辺はまた今度ね」
「聞きたいことが山のように増えていく……」
まあ、異世界の暮らしを語り始めたら一時間や二時間では足りないだろう。
細かいところまで言い出したらそれこそいくらでも話せるだろうし。
それよりも、今は試合の方が大事だ。
いくら鈍っているとはいえ、ここまで大差で負けるとちょっと悔しい。
これでも前はレート上では私の方が上だったはずだ。この程度のハンデを乗り越えられずになんというか。
仕事ぶりではどうあがいても勝てないのだし、せめてゲームくらいでは勝たせてほしいものだ。
「次は本気出すから」
「お、望むところだよ」
一夜に宣戦布告をし、第二試合が始まった。
感想ありがとうございます。




