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死、言葉の忘却

では死は? 偉大な生の兄弟、そして、生、そのもの。一体誰が、死を、歌ってきたか。理解できぬ体験を、言葉で、隠そうと、あがく者達、だが、耳を澄ませ。静かな音、この、生が漂うなかで、チロチロと、不可解な音を、発するもの、それこそが、我々の、描いてきた、神、では、ないか。もっと、あらゆる雑音を浄化し、純粋な、ひとつの音だけを、耳の奥、人間の、最も深く、最も大きく、最も聖なる領域へ、辿り、つかせたならば、再びそこで、詩人達、真の、生と死を知りつくす、可能な限りの超越の詩人達よ、あなた方は、あの、ふたつの獣と、出会うだろう。嬉々として、彼等は踊る。あらゆる世界の表象で、忘却こそが、詩人に、与え、られた、最上の力であること、その、真実を、獣達は伝えてくれる。

死は、与えるもの、なのだ。目の前の、ひとつのりんご、そこにへばりついた、りんご、という、言葉、詩人よ、今こそ、言葉に死を、与えるがよい。そして絶大な意味が、真に立ち現れる。その、多くの、果実、実り、滴る果汁、おお、歓び、人間存在の、脈々と、受け継がれる、畏敬、そのもの、それこそが、真の、りんご、なのだ。

退廃の、詩人達よ、お前達が紡ぐ、微弱な、生の力を、一体何が、望んでいよう。一本の木、それが、着ている、生という服を、お前は、誰の許可を得て、剥ぎ、取ろうと、いうのか。そうして借りた、生という生地、それが、お前の拙い手先で、一体、何へ、変貌させ、られる、と、言うのか。お前達が、見ようとして、ずっと、避け、続けているもの、それこそが、木の、真実、では、ないのか。お前達の言葉が、木を、あの、イデアの世界へ、連れていけるとしても、それは、もはや、お前の役目、ではない。一本の筆が、魂と化している、あれら画家を見よ。彫刻家、その、眼力を見よ。または、音を連ねる者達を、見よ。イデアへの案内は、彼等の生業なのだ。では、それら――ヴェルギリウス――、彼等を導く者――ベアトリーチェ――、その、優しい手、大いなる眼差し、生の獣達を連れ、彼等と歓びを分かち合い、そして、死を、体現する者、付与者、詩人達よ、精神、そのものであれ。


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