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異世界特戦群  作者: 猿渡銀部
プロローグ 戦場の果てに
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第1話 戦場の終わり、異世界の始まり

1話の改稿版になります。

俺は引き金を引く。


乾いた発砲音。照準の先にいた“それ”の頭が弾ける。


――人間だ。


ほんの一瞬だけ、引き金にかけた指が遅れた気がした。

「……クソ」


吐き捨てる。今さらだ。撃たなければ死ぬ。分かっている。

それでも――嫌な感触だけが残る。


―――――――――――――――――――――


崩れたコンクリートに背を預け、榊原悠真さかきばらゆうまは息を殺した。


肺に入る空気は鉄と焦げた臭いで重い。舌に残る砂のざらつきが歯の間で軋む。


榊原悠真。彼は陸上自衛隊員、それも特殊作戦群と呼ばれる部隊に所属している。

任務は単純だった。民間人保護区域に侵攻した敵部隊の排除。


悠真たちの分隊に与えられた任務は、敵部隊の位置を確認する偵察だ。

侵攻した敵部隊に恐怖を与える為、圧倒的な戦力で殲滅せよと本部からの命令だった。


その為に悠真たちの他にも増援として、地上からは戦車部隊、上空からは味方を載せたヘリが悠真たちの後に続く。

支援も戦力も十分のはずだった。


――そう、“はずだった”



悠真は視線を動かす。左、崩れた建物の窓。右、瓦礫の影。上、屋上――異常なし。


「いや…」

そう小さく呟きき、訂正する。


「異常…しかない」

そう言うと、悠真はつい1時間ほど前の情景を思い出す。


――1時間前 


コンクリートの壁、白い看板、黒い舗装——そのどれにも馴染まない色の服に身を包んだ五人の兵士たちが傘型に展開し、舗装された道を音を殺しながら歩いている。


森なら姿が消えるはずの緑色を基調としたまだら模様の迷彩服が、ここでは輪郭を逆に際立たせている。遠目にも、人影だけが不自然に浮かび上がっていた。


「……妙…だな、静か過ぎる…」

悠真が呟く。遠くでは銃声が鳴っているのに、この区画だけが異様に音を失っていた。


「油断するな、既に交戦区域内だ。囲まれてる可能性がある」


小さい声で無線越しに警告する男。

松岡勝まつおかすぐる

悠真たちの隊長である。迷彩服が身体に馴染み、布の張り具合がそのまま筋肉の動きをなぞっている。


松岡の警告に全員の呼吸が一段浅くなる。


足運びは、もはや歩行ではなく選別だった。踏んでいい場所と、そうでない場所。

その均衡は、あまりにあっけなく崩れる。


後列の一人が、瓦礫の欠片に触れた。

パキリ、と乾いた音が静まり返った空間に転がる。


その音に反応するかのように悠真たちの右側の建物で黒い影が動く。


「――接触コンタクト!右上!」

仲間の一人が敵を見つけ報告する。


既に敵にも見つかっている、足音を殺す必要はなくなった。


次の瞬間、銃声。コンクリートが砕け、粉塵が弾ける。


松岡は声を張り上げて叫ぶ。


「散開!」

悠真の身体が反射で動く。左へ滑り込み、瓦礫の陰へ。肩を打ちつける衝撃を無視し、即座に照準。


敵、一人。狙いを定める。

1秒も掛からない。

発砲。頭部が弾け、力無く崩れ落ちる。

確認はしない。――しなくても分かる。


「後方にもいる!」


背後から味方の声と同時に弾丸が唸る。アスファルトが砕け、破片が背中に当たる。痛みは無視。振り向かない。

二連射。一人を倒し、もう一人の動きを止める。


応戦しながら状況を確認していた松岡はすぐさま判断し、行動に移す。


彼は腰に手をやり、拳銃型の照明弾を引き抜いた。

迷いなく空へ向ける。

引き金を引いた瞬間、鈍い発射音とともに弾が打ち上がった。

昼間でも分かるように赤色の発光が空へ上がり、一定の距離まで打ち上がった後は光りながら静かに落ちていく。


それは偵察部隊からの増援の合図だ。

その合図と共に民間人保護区域前で待機している戦車部隊は侵攻を開始し、ヘリが増援を運んでくる予定だった。


――だが

突如、悠真たちの無線に連絡が入る。

「こちら戦車部隊、侵攻前に敵と接触……戦闘中!足止めを食らっている」


悠真は憤りを隠せず、舌打ちをする。

「……チッ」


そのとき、低い回転音が、遠くから街を這ってきた。

反響を重ねるごとに膨れ上がり、やがて頭上を押さえつけるような圧に変わる。

軍用ヘリだ。


「来た……!」

安堵しかけた、その瞬間。


空を裂く光。

遅れて、衝撃、機体が大きく揺れる。


「――やめろ……!」

思わず声が出た。意味がないと分かっていても。


次の瞬間、機体の側面が弾け、鈍い破裂音が空に広がった。

ローターの回転が、目に見えて乱れる。


ヘリは傾き、そのまま持ち直せない。

急速に落ちていく。

100メートルほど先、建物の陰に消えた。


——遅れて、爆ぜる。

衝撃が空気を叩き、轟音が街を揺らした。


「……っ」

歯を食いしばる。視線を敵から逸らさない。逸らせば、戻れなくなる気がした。


不意に仲間の足元で突如、閃光。

爆発で身体が浮き、耳鳴りで世界が一瞬、無音になる。


視界が戻ったとき、一人が消えていた。

「……クソ…地雷か…」


戦車部隊からの連絡も途絶え、ヘリも落ちた。

もう予定していた支援は来ない。


「各自判断で動け!このままいれば全滅だ!」


松岡の声。それを最後に、仲間とはぐれた。


――――


悠真はライフルを構える。手の感覚だけで弾倉を確認。予備30連マガジンが三本。


呼吸は正常。心拍も許容範囲。


敵、視認――複数。――まだ戦える。


「……問題ない」

そう言い聞かせる。


瓦礫を蹴り、前へ出る。

照準し発砲する、敵一人が倒れる。さらにもう一人。

だが悠真の照準の先にはまだ数十人の気配。


倒しているのに、減っている気がしない。


悠真が背を預けている遮蔽物に黒い鉄の塊が投げ込まれる。


手榴弾だ。

とっさに違う遮蔽物に飛び込む。


爆発。至近距離。轟音が耳に響く。


悠真はコンクリートの粉塵まみれになりながら立ち上がる。

「……まだだ」


照準し、引き金を引く。視界が霞む。

それでも目の前の敵に対して引き金を引き続ける

弾は減る。敵は減らない。


(多分…俺はもうダメだな…)

そんな弱音を心の中で吐きながらも必死に応戦していた。


そのときだった――


視界の端、空間が揺らぐ。煙とは違う青白い光。現実の上に重なり滲むように広がっていく。

目の前の不思議な光景に悠真は息を呑む。

「な……なんだ…?」


反射で銃口を向ける。だがそこに敵影はない。

光だけが、ゆっくりと広がる。


本能が叫ぶ。

身体が、勝手に一歩下がった。

(これは触れたらダメだ!)


だがその瞬間、足元の感覚が消えた。

地面がない。重力が抜け、内臓が浮く感覚。


「――っ」

声が出ない。


光が膨れ上がり視界を呑み込む。

銃の感触すら遠のき、平行感覚がなくなる。


そのとき、頭の奥に声が響いた。

『――適応個体、確認』


「……は?」

その言葉の意味を考える暇なく、悠真の意識はそこで途切れる。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

この作品や題材が面白い、つづきが読みたいと思ってくださればブックマークや率直な評価をお願いします。

励みにさせて頂きます。

指摘に関しても自分の作品に反映させて頂きます。

後書きまでお付き合い頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
ハハハーー 僕はただ見たことや感じたことを忠実に言葉にしているだけなんです。 視点が必ずしも正しいとは限りませんし、人それぞれ考え方は違いますからね。 絶対的なものではないと思っています。 でも…
鳥肌立ったーー よくやったなあ! 猿渡さん! 今度は、 最初から物語の中に、 ゆっくり入ってた そして、 何もか考えず、 一気にこの話、その緊張感の流れに連れて 最まで読んだ 嬉しいです…
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