12話 患者さん第一号
「あのー、すみません、足を怪我されているんですよね。良かったら、治療室に来ませんか? 私、ここで初めての仕事をするので患者さん第一号になりませんか?」
「いや、私の足は……」
「まぁ、まぁ、とりあえず来てくださいよ。私、声をかけるのも初めてなんですよ」
強引に誘います。
「はぁ」
患者さんを捕まえました。
ベッドに寝てもらいます。
足ですね。
触ったほうが良さそうですね。
「私の足は治らなくても仕方ないんです。駄目かもしれません」
「大丈夫ですよ、ちょっと待ってください」
足の筋肉は普通だ。
神経の方かな。
「……ヒール」
ちょっと難しいかも。
「ハイヒール」
よし、治るようにイメージして。
治ったかな。
最後に、足から腰まで全体をスキャンするように確認して。
はい、オーケー。
「出来ましたよ? どうですか」
「…………」
あれ、治らなかったのかな?
「あー、治らなかったんですね。申し訳ございません。せっかく来ていただいたのに」
「いや、治った」
足を動かして確認してる。
いやったぁ!
成功。
これで仕事が出来るね、お代はどうしよう。
料金表を見ます。
うーん、足の怪我。
銀貨1枚かなぁ。
簡単だったし。
「銀貨1枚になります」
「えっ?」
高かったかな? 神経だしね。
「ええと、銅貨5枚?」
「いや、金貨10枚でも安いだろう」
「いや、そんなに難しくはなかったですし」
「ほら、金貨10枚だ」
「いやー、受け取れませんよ」
「もらっておけ、その代わり、古傷に悩んでる連中にここを紹介してもいいか?」
「患者さんなら、いつでも歓迎です」
「良かった。じゃあな」
あー、お金もらいすぎ。
どうしよう。
夕方になりました。
患者さんが来ません。
扉を開けて冒険者ギルド内を見ます。
いるんですよね。
人がいっぱい。
なのに来てくれません。
ポーションで治しちゃったのかな。
大人しく待ってみます。
うーん、待ちくたびれた。
夕食の時間です。
初日ですからね、まだまだ宣伝もしてませんし、宿屋に戻って夕食でも食べましょう。
今日の夕食は魚です。
といっても、川魚ですけどね。
海の近くではないようですし、仕方ありません。
鮎の塩焼きに似ています。
これはこれでなかなか。
塩味の野菜と肉のスープもなかなか。
満足して、部屋に戻ります。
「クリーン」
服、欲しいですね。
さすがに毎日同じはないでしょう。
仕事もしてますしね。
明日買いに行きますか。




