13話 怪我をした元冒険者
私は、元冒険者だ。
足の怪我が原因で、冒険者を辞めることにした。
腕のいい剣士だった為、冒険者ギルドでの訓練生を指導する講師の職を得た。
冒険者になったことは後悔してはいないが、足の怪我については後悔している。
腕のいい回復魔法士に診てもらったが駄目だった。
聖女なら治せるだろうが、現実的ではない。
コネもないし、聖女に診てもらう金もない。
聖女に診てもらうには最低でも金貨50枚はかかると言われている。
とてもではないが、貧乏講師にそんな金はない。
毎日を生きるだけで精一杯。
そんなその日暮らしの私にあるとき、若い女性が話しかけてきた。
どうやら新しい治療室の回復魔法士らしい。
らしいというのは初めて彼女を見たが、どうにも偉ぶっていないし、なにか、回復魔法士らしくなく、楽観的で強引なところがあるからだ。
彼女について行き、治療室に入る。
ここに入ることは初めてではないが、若い女性と二人きりというのは初めてだ。
一応、彼女が治療ができなくてもがっかりしないように治らないかもしれないことを告げておく。
ベッドに横になり、足を診てもらう。
どうやら怪我をしたところを診ているらしい。
腕はいいのかもしれない、古傷でもう傷跡もかなり薄くなっていると思ったが、よく一回でわかったなと思った。
ヒールと彼女が言うと、足が温かくなった。
怪我をしてから血流も悪くなったのか、足の冷えも酷く、こんな風に回復魔法で足が温かくなることは初めてだった。
ハイヒールと彼女が言うと、足が一気に熱を持ったように熱くなった。
その熱が収まると、足の痺れがなくなった。
彼女はその後、慎重に足から腰までを診て、治療を終えた。
私は、最初驚きで声も出すことができなかった。
その後、彼女が請求した金額もおかしく、腕のいい回復魔法士の請求する金額でもなかった。
安すぎる。
銀貨1枚なんてあり得なかった。
その点を指摘するとさらに値段を下げてきた。
強引に金貨10枚を押し付けて、他の怪我をした冒険者をここに寄越してもいいかと聞き、その場をあとにした。
それから、その日は早退し、古傷のある冒険者を片っ端から訪ねて、説明をした。
信じられないぐらい、腕のいい回復魔法士が冒険者ギルドの治療室にいることを。
いつ居なくなるのかわからないから、早く行けとも言っておいた。
俺は今、足が自由に動くので、冒険者に復帰するかどうかを迷っている。
訓練生を指導する講師の職も楽しいので、このままでもいいかと思いながらも、昔みたいにパーティーを組んで戦ってもみたい気がする。
贅沢な悩みだが、足が治らなければ、悩むことすらなかった。
あの若く、強引な彼女には感謝している。




