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とある国家主席の受難 1

臨時首都 南京。

首都の北京が化け物どもに蹂躙され、退避を余儀なくされている。

その南京の地下司令部において軍による緊急報告が行われようとしていた。

軍関係者が息を呑みながら待っていると、会議室の重厚なドアが開け放たれた。

一同が起立して敬礼する中、王国家主席と側近たちがゾロゾロと入ってきた。

王は、ストレスのせいか、頭頂部の毛量が明らかに減っていたが、誰も指摘しなかった。

「皆、ご苦労」

王が着席して声をかけると、一同は敬礼を解き、スッと席に座った。

「さて、今回はいい報告なのかね?」

王が李大将に目を遣ると、李は厳しい顔をしながら頭を振った。

「申し訳ありませんが…」

それを聴き、王は盛大なため息を吐いた。

「核は上手くいかなかったか?」

「はっ」

それを聞くと、王は静かに目を閉じ、深呼吸した。

それを初めて聞く側近たちは、驚愕と絶望が入り混じった反応を見せていた。

踏んだり蹴ったりで思い切り叫びたい、物に当たりたいが、すると士気に拘るのでグッと押さえ込む。

「報告を」

「はっ。本日未明、南部方面軍指揮下で高高度爆撃機より戦術核を山西省に投入致しました。他国の衛星からの発見を遅らせるために、積乱雲などの高い雲が発生している日時を選定しました。核の雨など広範囲の被害の可能性はありましたが、戦況が悪化していたため投入の許可を仰ぎました」

李大将がプロジェクターに手を振った。

「知っての通り、現在確認されている怪獸甲種および乙種は黄河などを渡れないため、橋などを落として戦線構築に成功しておりましたが、反抗作戦では兵士たちが急に意識不明になるため全く成功しておりませんでした」

映像を見せながら、銃弾やミサイルなどが効いた様子がないことも説明した。

「今回の戦術核は苦渋の選択でありました。しかし、」

李大将は苦しい顔をしながら声を絞り出すように続けた。

「残念ながら、我々の戦術核は全く効果がなかったと結論せざるを得ません」

その報告に、今まで静かだった会議室が騒然となった。

「静粛に!!!」

王が声を張り上げると、再び会議室に静けさが戻った。

「投下後、ドローンによる偵察では怪獸乙種が大量に投下地点で活動していたことが確認されました。そして、信じられないですが、核によって焼き払われていたはずの当該地点は数時間後には鬱蒼とした密林が出来ていました」

プロジェクターの投影には投下後の荒廃した地点に蠢く化け物どもの映像と数時間後の密林が映し出されていた。

「また、放射線線量も自然量に同じ時間軸で急減したそうです」

李大将は大きく深呼吸すると、最後のまとめに入った。

「これらのことから、早急に対処法の発見、核の有用性の見直しを提言致します」

王は報告を聞きながら表情は全く変わらなかったが、机の下で拳を握りしめていた。

「ルース連邦と北高麗はどうだ?」

張外交部長に目を向けると、彼も厳しい顔を浮かべていた。

「ルース連邦は、シベリアの湿原や河川で上手く防衛をしているみたいです。ただ、北高麗は鴨緑江の橋を落とし損ねたみたいで、現在老若男女を徴兵して首都近郊で交戦中らしいですが…」

「落ちるか?」

王が尋ねると、張は静かに頷いた。

「時間の問題でしょう」

北高麗はアルメリヤなどの国際的な制裁によって経済、軍事が非常に脆弱な状態に陥っていた。

今回の事態で、北高麗は恐らく消滅するだろうが、そんなことはどうでも良い。

所詮、低俗な途上国だった。

「今回の戦術核の使用は完全に統制します。それらに関する外国のニュースはすべてフェイクニュース扱いに」

王の一声に全員が頭を縦に振った。

「ただ、ルース連邦には極秘チャネルで連絡を」

張が静かに頷いた。

「中国科学院、軍事科学院」

王の射抜くような目に、責任者たちは腰がひけたが、努めて顔に出ないように必死に顔を向けた。

「怪獸どもへの対処法、兵士たちが意識を失っている原因究明を早急に行え」

「「はっ」」

物理的な首が掛かっている責任者たちは、額に汗をかきながら、どう行動すればいいか考え始めた。

そんな様子を見ながら、王はこの国を救うことができるのか、本気で疑った。

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