とある大学教授、熊本に着く
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佐々木は真っ直ぐ立つことに全力を注いでいた。
現在の場所は阿蘇くまもと空港。東京大学からヘリで百田基地に移動し、F2Bとかいう戦闘機に乗せられた。
「飛行中に目を通して下さいね。」
神田何某が乗る直前に言ってたが、それどころではなかった。
通常、旅客機が東京―熊本間を約二時間で行く所を、
「少し飛ばしますね。」
っと、なぜかウキウキした様子の松田さんのおかげで一時間ちょいで着いてしまった。
松田さんが非常に満足げな様子でラダーを降りたが、松田は手足に力が入らず降りるのに一苦労だった。
「佐々木教授!」
顔を上げるとそこには背の高い自衛官が傘を差しながら戦闘機の前で出迎えていた。
「熊本へようこそ。西部方面航空隊の加地です。早速ですが、あちらのハンガーで装備を脱いだ後、こちらの輸送へりで現場に送ります。」
加地さんが指す方を見るとそこには独特な形状をした双発のヘリコプターが鎮座していた。整備士の人たちが雨の中、入念にエンジン周りとかを確認していた。
松田さんに別れを告げ、加地さんに連れられ、ハンガーに着くとそこには自分以外に数人の民間人がパイプ椅子でくつろいでいた。
「みなさん、近場以外で招集された知識人と政府関係者です。」
ほう、自分以外にも声が掛かっていたんだ。
よく見ると、確かに年齢も身格好もかなりバラバラだ。
白衣の人なんて、なんで脱いで来なかったんだ?
彼らに会釈し、重い装備を脱ぐ。
脱いだ時の解放感たるや!至福。
「よし、みなさん。ヘリの方の準備も整ったみたいですし動きましょう!」
加地さんが手を叩きながら告げる。
ヘリに向かう最中、自己紹介がてら少し話したが、一番遠くから来たのは政府の人を除けば自分だけで、色んな分野を専門とする人が集まっていた。
「いやぁ、なんとのう小説みたいな世の中になってきとんなぁ。」
どこかの教授が隣に座りながら話しかける。
「そうですねぇ。あぁ、私、帝都大で言語・文化人類学を教えています佐々木と申します。」
「おぉ、そうやった、そうやった。ウチは阪神大学で経済学を教えとる、和泉や。よろしゅうおたのもうします。」
コテコテの関西弁で笑いながら名刺交換をする和泉さん。
ロードマスターが一人一人の座席ベルトと耳当てを確認しながらキャビン内をキビキビと確認を取る。
安全が確認されると後ろのハッチがゆっくりとせり上がり閉まる。
耳当て越しにローター音が大きくなり、次の瞬間フワッと機体は離陸していた。
窓には雨粒がパタパタと打ちつけながら風圧で斜めに流れていく。
神田さんから渡された資料は読む余裕がなかったので、サッと目を通した。
資料によれば、ダンジョン内に“都市”が存在し、そこでは人間と意思疎通が可能な知性体が確認されたという。さらに、科学的説明のつかない現象――所謂「魔法」も、だ。
何より、佐々木の目を引いたのは独自の言語体系の存在と知性体が人間と似た社会性を持っていそうだという記述だった。
(音楽の様に美しい言語か・・・。早く聞いてみたいものだ。)
佐々木ははやる想いを落ち着けようと外を眺めるが、雨風でよく見えない。
「着陸します。少し揺れますが、ご心配なく」
機長がスピーカー越しに固くも冷静な声が漂ってきた。
スピードが落ち、都市部ならではの、高いマンションの横を降下する機体。
数秒間左右に軽く揺れていた機体がゴトっていう音と振動をたて着陸した。
二重反転ローターによる激しいダウンウオッシュにより、雨風が機体の周りを巻き上げられたが、お構いなしに開けられる後部ハッチ。
佐々木は靴が汚れるのを一瞬渋ったが、諦めて外に出る。
そこは大きい交差点のすぐそばにある広い空き地で、雑草も結構生えていた様だが、ヘリの着陸した地点は綺麗に刈り込まれていた。
少し離れた所には何個ものテントが設置され、それのどれかがダンジョンへの入り口があるのだろう、そう佐々木は推測した。
関係者が全員降りたのを確認した加地さんが空き地のすぐ横に立っていた5階建のビルに引率した。
ブルドーザーが土を掘りながら、金網と布で出来た箱状の物の中に流し込み、何人かがその周りにフェンスや鉄条網らしきものを設置していた。
その物々しい空気に圧倒されながら、民間人一行はいそいそとビルに入った。
「こちらの会議室に仮の本部があります。」
加地さんがタオルを渡しながら、自分の濡れた顔を手で拭いていた。
佐々木は、エントランスのマットで靴の泥を落としていた時、前から大人数の足音がした。
顔を上げると自衛隊のお偉いさんらしき人たちが駆け足でこっちに向かってきている。
「師団長!」
加地さんが姿勢を正しながら敬礼するのを見るに、間違えでは無かったようだ。
先頭を急いでいた、一際縦にも横にも大きい自衛官が一瞬立ち止まった。
「おう、お客人ですか。菊池第八師団長です。みなさんをもっと落ち着いた状況で出迎えたかったのですが――」
傘立てにハンガーの如く干されていたレインカバーを手に取り、急いで羽織る様子はとてもここのトップには見えないが、まぁ急いでいるのだろう
「たった今、突入していた部隊が帰還したみたいなので、失礼。」
軽く会釈すると、お供を連れ、急いで外に出る。
たちまち小さくなる足音。残された一行は皆立ち尽くす。
(突入部隊が帰還?・・・今?)
佐々木は、疑問が何個か浮かんできたが、彼らが一体何を持って帰ってきたのか、怖いもの見たさのようなワクワク感が芽生えたのも確かだった。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
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次の展開もいろいろ考えてるので、よかったら引き続きお付き合いください。
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