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第一回ダンジョン対策閣僚会議

どうぞ今回も気軽にページをめくってもらえたら嬉しいです!


「ただいまより、第1回ダンジョン対策閣僚会議を開催します。」

長井内閣官房長官が宣言した。

官邸地下の危機管理センターのすぐ隣の空き部屋に急ピッチで机やパイプ椅子、プロジェクターなどが持ち込まれ、簡易的な会議場が完成していた。

その間、松殿総理は官房長官と防衛大臣などと話を詰めていた。

一時間もしないうちに、大臣たちがゾロゾロと暗くされた会議室に入室し、それぞれ席に着いた。

一日に2回も緊急閣僚会議が行われるなんて、前代未聞であり、事情を知らない大臣たちの多くが不安そうに総理を見つめる。

そんな視線を浴びていた松殿はそれどころではなかったから全く気が付かなかった。

「本日は、諸事情により、自衛隊の統合幕僚長および何名かの外部有識者をおよびしております。」

官房長官が、壁に映り出された人たちにお辞儀しながら挨拶をする。

「今回、ここで語られる内容は極秘指定でありますので、閣僚を含め、ここにいるみなさんは許可が出されるまで他言無用でお願いします。」

長井がギロリと会議室を見回す。

「情報の漏洩が確認されましたら、即時逮捕および多額の賠償金と量刑を課します。それほど、極秘ですのでよろしくお願いします。」

彼の脅しはマイク越しだったからか、その静かな低い声が体の芯まで冷えるように突き刺す。

今まで席に踏ん反り返っていた閣僚たちが急に出て来た額の汗を拭きながら、姿勢を正した。

参加者全員がことの重大性が理解できたようなので、長井は横に立っていた秘書官に合図した。

プロジェクターが壁に地球を映し出した。

「みなさんもご存知だとは思いますが、世界各地で異常事態が起きています。隣中国では、未確認の敵性生物による大規模な襲撃が起きていて、中国軍がミサイルによる空爆を実施したものの、撃退に失敗。首都北京がいつ襲われてもおかしくない危機的状況に陥っています。邦人の犠牲は現在確認されておらず、政府としては既に退避通達を出しています。事態の注視を続けるつもりであります。」

長井がコップの水を一口含めて喉を潤す。

「そして、世界各国で未確認地下構造物が発見されており、我が国でも現在40個発見されております。この地下構造物を、政府としましてダンジョンと仮称しています。先程説明しました中国の未確認敵性生物は、出現時間との関係から、中国のダンジョンから出て来たものと推測されます。そのため、日本でも似たことが起きかねないと言うことで、自衛隊に周辺及び内部の調査を頼んでいまして、現在発見されているダンジョンに部隊が派遣されています。」

長井がクリッカーを押すと数枚の写真が表示された。

「これは先程、新宿御苑に出来たダンジョンで撮影された写真で、内部は洞窟のように薄暗く、これらの小型敵性生物が確認されました。他のダンジョンにおきましても似たような生物が確認され、どれも外には出て来ないことが確認されました。」

ここまで聴くと今の所いい話しか出ていない。

何をそこまで秘匿したいのか何人かが顔に疑問を浮かべていた。

「多くのダンジョンが似た様な造り、植生、生き物を持っていました。一個を除きましては。」

長井がクリックすると画面が切り替わる。

画面には数人の自衛隊員がエレベーターらしきものに乗っている映像。

最初はゴウンゴウンという重低音と隊員たちの装備が擦れる音、そして呼吸音しか聞こえなかった。

すると、突然、今まで灰色で隊員たちの反射が映っていた窓側が急に明るくなりそこに現れたのが――

「都市・・・なのか?」

議場の隅で誰かが微かに呟いた。

その声が引き金となり、静かだった議場が俄かにざわつきはじめた。

画面いっぱいに広がっていたのは雄大な平原の中に、遠くからでも分かる巨大な樹と、その周りに広がる城塞都市。

映像がカットされ、次の場面は雪の中を飛んでくる大きい犬と猫が目の前で人型に変わり、何やら喋り掛ける様子だった。

「これは、熊本で発見されたダンジョンの中で撮影されたものです。」

長井が未だ騒然とする大臣たちを遮りながら説明する。

「彼らはダンジョン都市 “カルタリア”のリセリアとヴァルスリッドという種族らしく、都市には2万人以上住んでいるという報告を受けています。現在、引き続き、突入した自衛隊の部隊が情報を収集しております。そこで――」

長井が頷くと秘書官たちが会場の人たちにタブレットを配り出した。

「これらが今、現在ある情報です。それを基にどう対応すべきか考える、これが今回の議題です。」

長井がそう言い切ると着席し、関係者はタブレットを起動すると資料に目を通し始めた。

会場が、たちまち静かになった。聞こえるのは空調の音と、プロジェクターの音だけ。

多くの人が読み切ったのか、天井を睨んでいたり、隣の人とコソコソ喋り出したのを見て今まで黙っていた松殿が口を開いた。

「独断ですが、日本全国の有識者、言語学者、科学者、法学者などを熊本のダンジョンに招集しています。全員、内調により背後関係は取れていますので安心を。熊本のダンジョンに残っている自衛隊の部隊に帰還命令を出していたのですが、それが伝わるのに20分以上かかりまして――」

会場が騒つく。現場の体制が不十分だの、やっぱり自衛隊は、って言う声がちらほら出て来た。

そこに波多野防衛大臣がマイクを手に取った。

「これは、全国のダンジョンで一切の通信が出来ないことから起きたことなので、現場の問題ではありません。」

「――そういうわけで、帰還命令が彼らに届いた時には、向こう側の代表者たちと面会している最中だったらしいのです。」

より一層騒つく会場。

「帰還命令を受け取った部隊は、向こう側に失礼にならない様にして、現在帰還している最中です。彼らにはメディカルチェックの後、聞き取り調査を実施する予定です。」

一同、ほっとした様子で静かに続きを待つ閣僚たち。

「彼らがどんな情報を持って帰ってくるか分かりませんが、現状持ち合わせている情報でこれからの政府としての対応および社会への影響を考えましょう。」

そう締めて松殿は席に腰掛けた。

彼らがどのような情報を持ち帰るのか、閣僚たちが活発に意見を出し合うのを見守りながら、松殿は一人嘆息した。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

少しでも楽しんでもらえたなら、それが一番のご褒美です。

次の展開もいろいろ考えてるので、よかったら引き続きお付き合いください。

感想や応援の言葉、とても励みになります!

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