シキとローゼリリー
誰かがやってくる気配に、カインを抱きしめていた手をゆるゆると離す。
……この音は多分、シキ。
「カイン様、ローゼリリーお嬢様、シキです」
予想通り、ノックと共にシキの声が聞こえてきた。
涙を乱暴に拭い、私は、扉を開く。
「シキ、カインが眠っちゃって……」
扉から顔だけだし、そういうとあぁ、と納得したようにうなずき、シキは、カインをそっと持ち上げた。
「カイン様は、私が寝室まで運んでおきます。
お嬢様は……」
「リーがいるところに戻っておくわ。シキ、お疲れ様」
「いえ、お見送り出来ず、申し訳ありません……あ、そういえば」
ふりふりと手をふり、私は、リーが待つ客室へ向か……おうとしたら、シキが思い出したかのように振り返る。
「明日第一王女殿下がお忍びで城下にいらっしゃるそうです。私が独自で知った事なので、皆様は知りませんが。もしお時間があるのでしたらお会いしてみては?」
「スピィが……!? ありがとう、シキ。探して見るわ」
「……はい、お気をつけて。お嬢様、つぎに会えるのを楽しみにしております」
微笑んで、カインを持ち上げたシキは、扉からでていった。
「スピィ……ふふ、お母様といったカフェとかいけるかな?」
スピィがいるのか。私のお友達。
勇者パーティーの鑑定ツンデレ姫。
お忍びかぁ。やっぱ姫様だなぁ。
……ん? 姫がお忍びとか王城内でもかなりの機密事項だよね?
……シキ、なんで知ってるの?
「まぁ、気にしない方がいいか……リー!」
「ん、どーしたの? ローゼ様」
「明日町に行きたいんですがいいですか?!」
ドアをバッコオー! と勢い良く開き、リーにそういうと、リーはぱちぱちと目を瞬かせる。
「いいけど……どうかしたの?」
「スピィがお忍びで城下町行くらしいんです! 会えるでしょうか」
「……王女様が……あぁ、なるほど。ところでローゼ様、用事は終わったの?」
「はい!」
「じゃ、夜も遅いし帰ろっか。この家には、もう一回来るんでしょ? あの執事くん迎えに来なきゃだからね」
執事くん……? あっ、キースのことか。そういや、キース、執事だった。
「……ふぅ」
私は、リーの屋敷の一室で一息ついた。
「あと、二人で勇者パーティーcomplete……」
勇者パーティーは、あと聖女エルマと魔術師ヘレンだけ。
勇者カイン・ラシー。
聖女エルマ・エージェル。
魔術師ヘレン・アスタ。
魔導師アベル・スーリラ。
皇帝アルベール・ステラ。
従者キース。
死神リーデル・レクイム。
……ここまで来たら、全員に会っときたいな。
ヘレンの姉エメラにも。
リーの恋人、ね。
「……やることがいっぱいだ……」




